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6月12日(月)雨 『自己決定』
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今日、紺野から謝罪を受けた。先週に襲いかかってきた件についてだ。
だが、僕としてはそれどころではない。週末の栗谷との出来事で頭の中はぐちゃぐちゃで、あれから一日経った今もまだ冷静になれないでいる。
まず、ひとつだけ書き記しておかなければならないのは、栗谷は無理矢理に僕を犯したのではないということだ。
僕は、自ら栗谷にセックスを求めた。あのワンルームに栗谷と差し向って座り、話を続けるうちに、涙を流しながらその言葉を口にしていたのだ。
つまり、自己決定の結果として、僕は栗谷に身体を許したのだ。
どういう流れでそうなったのか、それをここに書き記しておくことには意味があると思う。
ワンルームマンションに着いたらすぐ栗谷に犯されるものと思い込んでいた僕は、ほとんど悲壮な決意をもってそこに乗り込んだ。
けれども栗谷はいつものように穏やかな態度で僕を出迎えた。
そして入室してすぐ、僕は栗谷と一緒に、問題の動画を観ることになった。
こうして思い返してみれば明らかに常軌を逸した流れだが、僕が部屋の中に入るや栗谷があまりにも自然にビデオの再生を開始したので、僕は促されるまま栗谷の隣に身体を預けるようにして座り、夢中になって股間をいじりまわす自分の映像を鑑賞することになったのだ。
その映像を観ている間、僕は疼く股間をもてあましてもじもじと太腿を擦り合わせずにはいられなかった。あのとき栗谷は僕の背中に腕をまわしてやさしく腰を抱くようにしていたから、僕の身体に生じていた変化は当然把握していたはずだ。
ビデオの再生が終わると栗谷は僕の前にまわり、息がかかるほど間近に差し向かいでその話を始めた。それはTS病の進行に伴い必然的に膨れ上がる性欲と、それに抗って精神的に壊れてしまった過去の罹患者たちの話だった。
そうなる前に俺とセックスしろ、とは栗谷は言わなかった。自分ならばその性欲を解消してやれるとも、ましてや僕を抱かせろとも言わなかった。
栗谷はただ淡々とひとつのこと、TS病罹患者がセックスしたくて堪らなくなるのは病気だから仕方ないのだということを、落ち着いた低い声で何度も繰り返し僕に語って聞かせた。
もっともそうして語る間、栗谷の股間が厚手のチノパンを突き破らんばかりに勃起しているのがはっきりとわかったし、血走った目が僕の胸と股間をいったりきたりしながら獲物を品定めするように凝視し続けていたのだけれど。
そして栗谷はその話の最後に、君が困ってどうしようもなくなっているのなら自分は何だってすると、あのときと同じ顔で僕にそう告げたのだ。
……そんな栗谷の態度が何を意味していたのか、あのときの僕にわからなかったはずはない。その言葉を受け容れたが最後、自分がどうなってしまうかということも。
けれども僕は、その言葉通り膨れ上がった性欲で爆発しそうな自分をどうすることもできないまま、真っ白になった頭でその言葉を口にしたのだ。
僕とセックスしてください、と。
そうして気がつけば、僕は目を開けたまま差し向いに座る栗谷とぴちゃぴちゃと音を立てて舌を絡め合っていた。……今思えば、これが僕のファーストキスだ。
それから栗谷に腕引かれるままベッドへと連れていかれ、裸になった僕の身体にむしゃぶりついてくる栗谷の頭をかたちばかり押し返そうとしながら甘い声であえぎ始めるまで、たぶん十分もかからなかった。
……なぜあそこであんな言葉を口にしてしまったのかという思いはある。だがもう一度やり直せるとしても、僕はやはりその言葉を口にするだろう。
すぐには処女を奪わず、破瓜の痛みに怯える僕の身体をすみずみまで愛撫し、ゆっくりとまる一日かけて僕を女にしてくれた栗谷を、今さら悪く思えないという気持ちもあるのかも知れない。
ただ忘れてはいけないのは、僕は自分の意志で栗谷にセックスを求めたということ。その結果、僕は栗谷を自分の身体の中に迎え入れ、処女を喪ったということ――それだけだ。
日曜の別れ際に僕は、これから毎週末、あのワンルームで栗谷と過ごすことを約束した。
栗谷に促されてした約束には違いない。だがこれを書いている今の僕は、その約束を必ずしも悪いもののようには感じていない。
だが、僕としてはそれどころではない。週末の栗谷との出来事で頭の中はぐちゃぐちゃで、あれから一日経った今もまだ冷静になれないでいる。
まず、ひとつだけ書き記しておかなければならないのは、栗谷は無理矢理に僕を犯したのではないということだ。
僕は、自ら栗谷にセックスを求めた。あのワンルームに栗谷と差し向って座り、話を続けるうちに、涙を流しながらその言葉を口にしていたのだ。
つまり、自己決定の結果として、僕は栗谷に身体を許したのだ。
どういう流れでそうなったのか、それをここに書き記しておくことには意味があると思う。
ワンルームマンションに着いたらすぐ栗谷に犯されるものと思い込んでいた僕は、ほとんど悲壮な決意をもってそこに乗り込んだ。
けれども栗谷はいつものように穏やかな態度で僕を出迎えた。
そして入室してすぐ、僕は栗谷と一緒に、問題の動画を観ることになった。
こうして思い返してみれば明らかに常軌を逸した流れだが、僕が部屋の中に入るや栗谷があまりにも自然にビデオの再生を開始したので、僕は促されるまま栗谷の隣に身体を預けるようにして座り、夢中になって股間をいじりまわす自分の映像を鑑賞することになったのだ。
その映像を観ている間、僕は疼く股間をもてあましてもじもじと太腿を擦り合わせずにはいられなかった。あのとき栗谷は僕の背中に腕をまわしてやさしく腰を抱くようにしていたから、僕の身体に生じていた変化は当然把握していたはずだ。
ビデオの再生が終わると栗谷は僕の前にまわり、息がかかるほど間近に差し向かいでその話を始めた。それはTS病の進行に伴い必然的に膨れ上がる性欲と、それに抗って精神的に壊れてしまった過去の罹患者たちの話だった。
そうなる前に俺とセックスしろ、とは栗谷は言わなかった。自分ならばその性欲を解消してやれるとも、ましてや僕を抱かせろとも言わなかった。
栗谷はただ淡々とひとつのこと、TS病罹患者がセックスしたくて堪らなくなるのは病気だから仕方ないのだということを、落ち着いた低い声で何度も繰り返し僕に語って聞かせた。
もっともそうして語る間、栗谷の股間が厚手のチノパンを突き破らんばかりに勃起しているのがはっきりとわかったし、血走った目が僕の胸と股間をいったりきたりしながら獲物を品定めするように凝視し続けていたのだけれど。
そして栗谷はその話の最後に、君が困ってどうしようもなくなっているのなら自分は何だってすると、あのときと同じ顔で僕にそう告げたのだ。
……そんな栗谷の態度が何を意味していたのか、あのときの僕にわからなかったはずはない。その言葉を受け容れたが最後、自分がどうなってしまうかということも。
けれども僕は、その言葉通り膨れ上がった性欲で爆発しそうな自分をどうすることもできないまま、真っ白になった頭でその言葉を口にしたのだ。
僕とセックスしてください、と。
そうして気がつけば、僕は目を開けたまま差し向いに座る栗谷とぴちゃぴちゃと音を立てて舌を絡め合っていた。……今思えば、これが僕のファーストキスだ。
それから栗谷に腕引かれるままベッドへと連れていかれ、裸になった僕の身体にむしゃぶりついてくる栗谷の頭をかたちばかり押し返そうとしながら甘い声であえぎ始めるまで、たぶん十分もかからなかった。
……なぜあそこであんな言葉を口にしてしまったのかという思いはある。だがもう一度やり直せるとしても、僕はやはりその言葉を口にするだろう。
すぐには処女を奪わず、破瓜の痛みに怯える僕の身体をすみずみまで愛撫し、ゆっくりとまる一日かけて僕を女にしてくれた栗谷を、今さら悪く思えないという気持ちもあるのかも知れない。
ただ忘れてはいけないのは、僕は自分の意志で栗谷にセックスを求めたということ。その結果、僕は栗谷を自分の身体の中に迎え入れ、処女を喪ったということ――それだけだ。
日曜の別れ際に僕は、これから毎週末、あのワンルームで栗谷と過ごすことを約束した。
栗谷に促されてした約束には違いない。だがこれを書いている今の僕は、その約束を必ずしも悪いもののようには感じていない。
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