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家出少女⑧
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「……」
今にも先輩を迎え入れようとするこのタイミングで現れた選択肢に、僕はさすがに唖然とした。
例によって動きを止めた世界の中においても、先輩のペニスは今にも僕の処女膜を突き破ろうと頭だけもぐりこんできていて、僕としてはうかつに腰の位置をずらすこともできない。
もっとも動かせないのは腰の位置ばかりでなく、手もいつの間にか先輩の手としっかりと恋人つなぎをして頭の両側に押さえつけられているから、実際には身動きひとつとれないのだけれど……。
「もう……今、すごくいいとこなのに……」
けれど、この状況で僕の中に生まれたのは僕を組み敷いて処女を奪おうとしている先輩にでなく、空気を読まずに無粋な選択肢を出してきた運営への反発だった。
色々思うところはあったけど何だかんだで僕の方もその気になり、欲情に燃える瞳で見つめ合ってお互い「いただきま~す♡」となっているところへこの仕打ちはあんまりだと思う。
正直、僕としてはここまできたら先輩には何が何でもロリコンとしての本懐を遂げさせてあげたい。先っぽだけ入りかけているこの大きなおちんちんを根本まで受け入れ、僕のおまんこでやわらかく包み込んであげたいのだ。
もちろんそのあとに約束されている処女膣への容赦ない中出しに興味津々ということもあるのだけど……。
「でも、この選択肢って……」
二番目の選択肢はいい。そっちを選べばここまで盛り上がった処女貫通の儀式を中断しなければならないことは目に見えているけれど、問題はそれだけだ。
……けれど、一番目の選択肢は危ない。何となくだけど、危険なにおいがする。
『やめないで……最後までして』
ここで僕がそう言えば、先輩はその希望を叶えてくれるだろう。
ドアホンを無視して先輩のおちんちんが僕の処女膜を突き破り、そのままロリコンとロリ美少女による『朝まで生セックス!』の火蓋が切って落とされる。
気持ちいいか痛いかは未知数だけれど、すごい初体験になること請け合いだ。ぶっちゃけ僕としてはそれを体験してみたい気持ちでいっぱいなのだ。
……だがそうなると、玄関の外でドアホンを鳴らしているのが誰かというのが気になってくる。
宅配業者の線も捨てきれないが、運営がこのタイミングで選択肢を出してきたことを考えるとそれはないだろう。児童福祉関係の職員……あるいはお巡りさんと呼ばれる職種の人である可能性が高いように思われる。
「そしたら先輩……警察に捕まっちゃうのかな……」
何となく、この選択肢は運営の警告のようにも思える。僕をロリっ子にしてこんな場所に送り込んでおいて今さら何だという気がするが、一番目を選んだら破滅のフラグ……それも先輩だけが破滅する悲しいフラグが立つような気がする。
ローティーンの少女を家に泊まらせ、性的な関係を持とうとしている……というか既に持っているのであるから、公安に知られれば社会的な破滅は避けられないだろう。
先輩にロリコンの本懐を遂げさせてあげたいという思いと、頑張って勉強してきた先輩に破滅して欲しくないという思い。そのふたつを僕の中で比べたとき、わずかだが後者の重さの方がまさった。
「……すごくいいとこだったのになぁ」
今まさに自分のおまんこに入ってこようとしているペニスをもう一度見つめて、僕は小さなため息をついた。
……ここまできたからには僕だってセックスしたかったのである。けれどもそんなうらみを脇に置いて、心配げな表情に戻り先輩の顔を見上げて、僕はその言葉を口にした。
「……誰か、来たのかな」
その瞬間、世界は動き出した。
玄関からこちらに目を戻した先輩は、このまま続けたい衝動と玄関先への不安とがないまぜになったわかりやすい表情で僕を見つめた。
その間、先輩のペニスの先っぽは僕の膣口にキスを続けていた。けれども、そのペニスが膣内へもぐりこんで来ようとする圧は、もう失われていた。それで、僕は先輩の結論を悟った。
「……ごめん、マコト。服着て、どこかに隠れててくれるか?」
「うん、わかった」
言われた通り、先輩に脱がされて床に放り出されていた着衣を拾い上げ、僕はトイレに駆け込んだ。物音を立てないように服を身につけてしまったあと、扉に耳をあてて外の様子を窺った。
ぜんぶは聞き取れなかった……だが、やはり訪ねてきたのは児童福祉関係の職員のようだった。
警察のように高圧的な調子ではないけれども、最近、この部屋に女の子が出入りしているという情報が寄せられたという話をだいぶストレートな言葉で語っている。その調子からは明らかに先輩を疑っていることが伝わってくる。
そんな訪問者に先輩は言葉を荒げることもなく、ただ淡々とそんなのは知らないという態度を貫いていた。
トイレの中まで踏み込んでくるんじゃないかと僕は内心にヒヤヒヤしていたけれど、訪問者にそこまでの権限はなかったのか部屋の中には入ってくることなく、しばらくして帰って行った様子だった。
「……あ」
やがてトイレの扉が開けられたとき、それを開けた先輩の顔を見て僕は言葉を失った。
それは三日前、僕がはじめてこの部屋を訪れたとき、玄関の扉を開けて僕を迎えた先輩の顔とそっくりだったからだ。
「その……どうだったの?」
「……」
僕の質問にも返答はない。先輩は食べかけで終わりになっていたすき焼きの鍋を無言でキッチンに運び、ちゃぶ台を畳んで食器を片付けていった。
居たたまれない思いを抱えながら僕はその場に立ち尽くしていた。
すき焼きをあらかた片付けてしまい、キッチンで食器を洗い始めた先輩は、あの最初の日と同じぶっきらぼうな声で「もう寝ろ」と言った。
「うん……おやすみ」
有無を言わせない先輩の口調に、僕はそれだけ言ってベッドに入った。
しばらくすると先輩は部屋の照明を消し、自分一人机に向かった。これも最初の日に経験した通りだ。
(……元に、戻っちゃった)
ほんの数分前、同じベッドで先輩と一線を越えようとしていたことを思って、急転直下した今の雰囲気とのギャップに寂しさを覚えた。
さすがにこの雰囲気ではさっきの続きを、という話にはならないだろう。それどころか明日にもこの家を出ていけということになってしまうかも知れない。
……いや、どのみちそうなるだろう。さっきの訪問者の口ぶりからすればこの家は未成年者を泊まらせている疑いありとして関係当局にマークされたということになる。
そんな中、僕がいつまでもこの家に居続けることはさすがにできない。先輩は言い出しにくいかも知れない。なら、ここは僕からその話を切り出すしかない。
「……ねえ、お兄さん」
「……」
「迷惑かけちゃってゴメン……ボク、出てくね」
「……明日の朝にしてくれるか」
「え?」
「……さっき来た連中が見張ってるかも知れない。だから、出てくなら明日の朝にしてほしい」
「明日の朝も見張ってるかも知れないよ?」
「……」
「ボクがちょろちょろ外に出たりしてたから怪しく思われちゃったんだよね?」
「……たぶんな」
「だったらボクもう外に出ないようにして、この家の中だけで生活する子になってもいいよ?」
「……」
「……そしたら誰にも何も言われないし、お兄さんは毎日、ボクに好きなだけエッチなこと……」
「……そんなのは駄目だ」
「……わかった。明日の朝、出てく」
「……ああ」
最後のは言ってみただけだった。すっかり冷えてしまった今の雰囲気を考えれば、断られることはわかっていた。
(……でも、残念だな)
正直、先輩に処女をあげられなかったことが残念だった。
僕の方でもその気になっていただけに、あそこまで盛り上がった初セックスが未遂に終わったのも残念だけれど、あと一歩で絶世のロリ美少女の処女膣を堪能できたものが直前でその機会を奪われた先輩の無念を思うとやるせない気持ちでいっぱいだった。
完全にこの家に囲われて先輩専用の性奴隷になるような提案をみずからしたのも、迷惑かけるだけかけて何の見返りも返せなかった先輩への申し訳なさからだ。
だが、先輩にきっぱり断られて出ていけと言われたからにはそうするしかない。それが先輩の意志ということだからだ。やっぱり先輩は最後の最後には人の道を踏み外せない人だった。
(……まあ、ちょっとはエッチなことさせてあげられたし)
そう思って僕は目を閉じた。
色んなことがあって眠れるとは思えない。けど、明日からの宿無し生活を思って少しは休んでおこうと思い、古典的だが頭の中に羊を数えはじめた。
*
「――マコト、起きてるか?」
(……?)
先輩の声がかかったとき、僕は半分眠っていた。だから先輩の質問に返事を返すのが遅れた。
またいつかのように僕に夜這いをかけてきたのかとも思った。けれど、それにしては先輩の声が遠い。
暗闇の中に目をこらすと、先輩は僕が寝ているベッドから離れた場所で寝袋にくるまっているようだった。
「……マコトももうわかってると思うけど、俺、ロリコンなんだよ」
「……」
「でも、マコトは俺のこと、気持ち悪がらないでくれた。……だから、ありがとう」
「……」
「最初、マコトがいきなりメッセージ送ってきたとき、生きてるのが辛い、努力でどうにかなる話じゃないって言ってただろ?」
「……」
「……俺と同じだと思った。俺も気持ち悪いだの何だの言われてて、生きてるのが辛くて仕方なかったから。だから、男か女かもわからなかったけど、マコトのこと匿ってやろうと思ったんだ」
「……」
「……けど、マコトの姿見たらもう駄目だった。マコトは、俺が想像の中で毎日犯してた理想の少女そのものだったから」
「……」
「我慢できなくて襲っちまって、でもマコトは許してくれて……俺、もう何がなんだかよくわからなくなって……」
「……」
「……さっきの連中が来てくれて、良かったと思ってる。マコトの初めてだけは奪わずに済んだから」
「……いいよ」
ずっと黙って聞いていた僕は、そこでついに返事を返した。
僕が起きていたことがわかっていたかのように、先輩は何も言わなかった。そんな先輩に、僕はなおも続けた。
「お兄さんが欲しいなら、ボク、今からでもお兄さんに処女あげるよ?」
「……」
「ねえお兄さん、こっち来て。さっきの続きしよ?」
「……しない」
「どうして?」
「マコトの初めての相手が、俺みたいのでどうするんだよ」
ありったけの想いを腹の底から絞り出すような、先輩の声だった。
「……」
「さっきも、本当は迷ってた。マコトの初めてが俺なんかでいいわけないって」
「……」
「……マコトみたいに可愛い子にそう言ってもらえただけで、俺は十分だ。これからの人生、その言葉を胸に生きていける気がする。ありがとう――」
話はそれで終わりだった。暗闇の中、こちらに背を向ける先輩の姿を認め、僕は目を閉じた。
(……先輩が僕に対していだいてたのは、純愛だったんだ)
新鮮な驚きがあった。まさか、ロリコンの先輩が、家出少女である僕に純愛をいだいていたなんて……。
(まあ、あれだけエッチなことして純愛もないけど……)
そう思い直して、心の中で苦笑した。グダグダな終わり方には違いなかったけれど、心は何となくさわやかだった。
悪くない数日間だった。そう思って僕は眠りが訪れるのを待った――
*
「それじゃあな」
「うん、長い間ありがと」
翌朝、夜が明けきらないうちに起きると先輩はまだいた。
菓子パンと牛乳で簡単な朝食をとり、お別れをすることにした。
玄関で僕を見送る先輩の顔には複雑な表情が浮かんでいた。寂しさと不安をない混ぜにしたようなその表情が、なんのために浮かんだものなのかわからなかった。
けれど、そんな先輩の顔を眺めるうち、僕は最後にひとつ先輩をからかうネタを思いついた。
「ねえお兄さん、ひとつだけ言っとかなきゃいけないことがあるんだ」
「なんだよ」
「ナイショのお話だから、耳かして」
「なんで二人しかいない所で耳なんか……」
そう言いながらも先輩は身をかがめて耳を近づけてくる。僕は背伸びをして、先輩の唇にキスした。
「……!」
「泊めてくれてありがと」
そう言って僕は玄関のドアを開けた。
「今の、ボクのファーストキスだから!」
自分の唇に手を当て、まだ呆然としている先輩にそう言い残して、僕はドアから飛び出した。
* * *
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……」
先輩の家を出た僕は夜明けの町を全力で駆け抜けた。マークされている先輩のためにできるだけ早く家から離れる――それが狙いだった。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……」
先輩の家から十分離れたところで立ち止まった。そこでふと、僕はここ数日間スマホを見ていなかったことに気づいた。
カバンからスマホを取り出してみる――先生からのLINEは毎日入っていた。
「……」
そうして僕は、先輩の家にいる間、自分が先生からのLINEをぜんぜん気にしないでいられたことにはじめて気づいた。同時にあの駅前で先輩の家に向かった当初の目的が達成されたということも……。
「……先輩のおかげかな」
結局、そういうことになるのだろう。先生との初恋の思い出は、先輩との奇妙な同居生活によって上書きされたのだ。
それは最初のうち恐怖とともに思い描いていたような過酷なものではなかった。けれどもブサイクなお笑い芸人に似たデブなロリコンの家で過ごした数日間で、先生に対する僕の復讐は見事に果たされたようだ。
「……うん、悪くなかったな」
そう呟いて、僕はまた歩きはじめた。
それにしても問題はこれからのことだ。これで僕はまた宿無しに戻ってしまった。夜までに今夜泊まる場所をどうにかしなければならない。
ただそうなると、僕がとれる手段は限られている。……というか、以前に何度も検討したよう神待ち掲示板に書きこむくらいしかない。
その結果、先輩が破ることなく残してくれた僕の処女膜も、今夜にはどこぞの男のペニスに突き破られることになる。それが、僕には何となく悔しかった。
はじめて会う男に処女を捧げるのは仕方がない。けれど、どうせ処女をあげるなら先輩にあげたかった……そんな思いが、自分の処女にこれまでまったく価値を感じていなかった僕に、それを喪失する可能性が濃厚な未来へ一歩を踏み出すことを躊躇させた。
「――マコトさんですね?」
「はい?」
そんな考えに浸っているとき、僕はいつの間にか向かいに立っていた二人組の男性に声をかけられた。
* * *
――そうして僕は始発もまだ走り始めないような時刻から仕事に励んでいた熱心な補導員に補導された。
事務所のような場所に連れていかれ、家出していた間、どこでどうやって過ごしていたのか執拗に尋問された。僕はその尋問に対して黙秘を貫き、一切の事情を話さなかった。
先輩に義理立てしたというのもあるが、実のところそればかりではない。僕が知っている自分の情報は、ステータスで確認できるものに限られる。つまり僕は、その尋問にまともに回答できるほどに自分のパーソナルデータを把握できていなかったのだ。
もっとも、尋問はそれほど長く続かなかった。昼頃になると警察の取り調べ室でもないのにカツ丼を出されたので、僕はありがたくそれを食べさせてもらった。
昼食が終わると待合室のような部屋に通され、そこで僕は四十がらみの夫婦とおぼしき男女に引き合わされた。聞けば男性の方は僕の叔父――母親の弟で、女性の方はその妻だということだった。
僕としては正直「そうなのか」としか言いようがなかった。リアルの世界では僕にも叔父の一人や二人いるが、目の前で心配そうな表情を浮かべているナイスミドルはその誰にも似ていなかった。
第一、その男性の身につけているものは腕時計にしろスーツにしろ素人目に見ても明らかに金がかかっているもので、立ち居振る舞いの上品さをみても自分のような庶民とは縁遠い世界の住人だということがはっきりと見て取れた。
女性の方も、まあ似たようなものだ。少々トウがたっているけれどなかなかの美人で、ダイヤモンドが数珠つなぎにされたネックレスが嫌味にならずよく似合う、有閑マダムを絵にかいたような美魔女だ。
どうしてそうなったのかよく覚えていないが、結論から言えば僕はその叔父夫婦の家に引き取られることになった。
なんでも僕の母親は若いころにどこぞのアーティストの卵と駆け落ちして音信不通になっており、行旅死亡人としての連絡が実家にいって、そこではじめて一人娘である僕の存在が明らかになったのだという。
自分でもぜんぜん知らなかったけど、マコトの設定はそんなシビアなものだった……ということらしい。
この年まで子供が欲しくていろいろやってきたがついに授かることなく諦めかけていたところへ降ってわいたこの話、神様の導きとしか思えない。姉のためにもぜひ君を立派なレディにしたい、だからどうか私たちの子供になって欲しい――と涙ながらに訴える叔父夫婦に、僕は断ることができなかった。
運営がどういうつもりか知らないが、どうやらこの人たちはまともそうだ。とりあえずこの人たちの子供というポジションに落ち着いて、先のことはそこから考えればいい――
そんな青写真は、叔父夫婦に連れられて彼らの家に辿り着いたとき、霧散した。
「ふえぇ……」
デカいのである。ものすごい豪邸なのである。
そもそも電動で開閉する鉄の門をくぐって車に乗ったまま邸内にのりこむということ自体はじめてだったのだけれど、門をくぐってから屋敷につくまで車で一分近くも走ったことからしてまず驚きだった。
屋敷の玄関には執事とおぼしき妙齢の女性が待ち構えていたのに二度びっくりで、屋敷の中に入るとお色気たっぷりの若いメイドさんまでいたことに三度びっくりだった。
叔父様――その屋敷のあまりの立派さに、着いて中に通されたあたりから僕は彼のことを自然にそう呼ぶようになっていたのだけれど、叔父様の指示でメイドさんは僕をこれまたバカでかいお風呂に入れ、自室となる部屋に案内してくれた。
この部屋がまたすごかった。ベッドはファンタジーなんかで見る天蓋つきのいわゆるお姫様ベッドで、物書き机やらテーブルやらもシックな装飾がほどこされた見るからに高級なものばかりだった。
きわめつけに、お風呂からあがった僕に用意されていた着衣はシルクのドレスだった。そのドレスに身を包み、鏡に映った自分の姿を見るにつけ、ひとつの事実を認めざるをえなかった。――僕は、大富豪の養女として引き取られたのだ、と。
……ただまあ、そういう設定なら素直に受け入れてやっていくしかない。
執事とメイドさんが傍らにかしずく夕食はフランス料理のフルコースらしくとびきり美味しいものだったに違いないが、僕はかつてない場違い感に混乱しまくりで何を食べたかさえ思い出せない。
それでも食事が終わり、自室に控えていたメイドさんの手で薄いシルクの夜着に着替えさせられ、やがてメイドさんが部屋を出ていってしまうとようやくどうにか落ち着いてくるのを感じた。
「……ふう」
お姫様ベッドに横たわって、僕は大きく溜息をついた。
……嵐のような一日だった。今日一日でこの世界における僕の立ち位置は大きく変わってしまった。あの家で先輩に組み敷かれ、処女を奪われようとしていたのが昨日の出来事とはとても思えない。
それにしても、これからいったいどうなるのだろう。まさかとは思うが、このお屋敷でお嬢様として暮らしてゆくゲームの第二章がはじまるのだろうか……。
「ふぁ……」
……あくびが出た。いずれにしても今夜はもう寝ようと思った。難しいことを考えるには僕は疲れすぎている。そんなことを思いながら、眠りに落ちようとした。
――その夜、僕は叔父様に犯された。
――――――――――――――――
NAME:マコト
舌:5
唇:7
首筋:12
乳首:15
脇の下:10
背中:4
へそ:2
クリトリス:13
陰唇:8
Gスポット:0
ポルチオ:0
太腿:8
足首:1
足裏:9
足指:2
クリトリス・オーガズム C-
Gスポット・オーガズム ×
ポルチオ・オーガズム ×
――――――――――――――――
今にも先輩を迎え入れようとするこのタイミングで現れた選択肢に、僕はさすがに唖然とした。
例によって動きを止めた世界の中においても、先輩のペニスは今にも僕の処女膜を突き破ろうと頭だけもぐりこんできていて、僕としてはうかつに腰の位置をずらすこともできない。
もっとも動かせないのは腰の位置ばかりでなく、手もいつの間にか先輩の手としっかりと恋人つなぎをして頭の両側に押さえつけられているから、実際には身動きひとつとれないのだけれど……。
「もう……今、すごくいいとこなのに……」
けれど、この状況で僕の中に生まれたのは僕を組み敷いて処女を奪おうとしている先輩にでなく、空気を読まずに無粋な選択肢を出してきた運営への反発だった。
色々思うところはあったけど何だかんだで僕の方もその気になり、欲情に燃える瞳で見つめ合ってお互い「いただきま~す♡」となっているところへこの仕打ちはあんまりだと思う。
正直、僕としてはここまできたら先輩には何が何でもロリコンとしての本懐を遂げさせてあげたい。先っぽだけ入りかけているこの大きなおちんちんを根本まで受け入れ、僕のおまんこでやわらかく包み込んであげたいのだ。
もちろんそのあとに約束されている処女膣への容赦ない中出しに興味津々ということもあるのだけど……。
「でも、この選択肢って……」
二番目の選択肢はいい。そっちを選べばここまで盛り上がった処女貫通の儀式を中断しなければならないことは目に見えているけれど、問題はそれだけだ。
……けれど、一番目の選択肢は危ない。何となくだけど、危険なにおいがする。
『やめないで……最後までして』
ここで僕がそう言えば、先輩はその希望を叶えてくれるだろう。
ドアホンを無視して先輩のおちんちんが僕の処女膜を突き破り、そのままロリコンとロリ美少女による『朝まで生セックス!』の火蓋が切って落とされる。
気持ちいいか痛いかは未知数だけれど、すごい初体験になること請け合いだ。ぶっちゃけ僕としてはそれを体験してみたい気持ちでいっぱいなのだ。
……だがそうなると、玄関の外でドアホンを鳴らしているのが誰かというのが気になってくる。
宅配業者の線も捨てきれないが、運営がこのタイミングで選択肢を出してきたことを考えるとそれはないだろう。児童福祉関係の職員……あるいはお巡りさんと呼ばれる職種の人である可能性が高いように思われる。
「そしたら先輩……警察に捕まっちゃうのかな……」
何となく、この選択肢は運営の警告のようにも思える。僕をロリっ子にしてこんな場所に送り込んでおいて今さら何だという気がするが、一番目を選んだら破滅のフラグ……それも先輩だけが破滅する悲しいフラグが立つような気がする。
ローティーンの少女を家に泊まらせ、性的な関係を持とうとしている……というか既に持っているのであるから、公安に知られれば社会的な破滅は避けられないだろう。
先輩にロリコンの本懐を遂げさせてあげたいという思いと、頑張って勉強してきた先輩に破滅して欲しくないという思い。そのふたつを僕の中で比べたとき、わずかだが後者の重さの方がまさった。
「……すごくいいとこだったのになぁ」
今まさに自分のおまんこに入ってこようとしているペニスをもう一度見つめて、僕は小さなため息をついた。
……ここまできたからには僕だってセックスしたかったのである。けれどもそんなうらみを脇に置いて、心配げな表情に戻り先輩の顔を見上げて、僕はその言葉を口にした。
「……誰か、来たのかな」
その瞬間、世界は動き出した。
玄関からこちらに目を戻した先輩は、このまま続けたい衝動と玄関先への不安とがないまぜになったわかりやすい表情で僕を見つめた。
その間、先輩のペニスの先っぽは僕の膣口にキスを続けていた。けれども、そのペニスが膣内へもぐりこんで来ようとする圧は、もう失われていた。それで、僕は先輩の結論を悟った。
「……ごめん、マコト。服着て、どこかに隠れててくれるか?」
「うん、わかった」
言われた通り、先輩に脱がされて床に放り出されていた着衣を拾い上げ、僕はトイレに駆け込んだ。物音を立てないように服を身につけてしまったあと、扉に耳をあてて外の様子を窺った。
ぜんぶは聞き取れなかった……だが、やはり訪ねてきたのは児童福祉関係の職員のようだった。
警察のように高圧的な調子ではないけれども、最近、この部屋に女の子が出入りしているという情報が寄せられたという話をだいぶストレートな言葉で語っている。その調子からは明らかに先輩を疑っていることが伝わってくる。
そんな訪問者に先輩は言葉を荒げることもなく、ただ淡々とそんなのは知らないという態度を貫いていた。
トイレの中まで踏み込んでくるんじゃないかと僕は内心にヒヤヒヤしていたけれど、訪問者にそこまでの権限はなかったのか部屋の中には入ってくることなく、しばらくして帰って行った様子だった。
「……あ」
やがてトイレの扉が開けられたとき、それを開けた先輩の顔を見て僕は言葉を失った。
それは三日前、僕がはじめてこの部屋を訪れたとき、玄関の扉を開けて僕を迎えた先輩の顔とそっくりだったからだ。
「その……どうだったの?」
「……」
僕の質問にも返答はない。先輩は食べかけで終わりになっていたすき焼きの鍋を無言でキッチンに運び、ちゃぶ台を畳んで食器を片付けていった。
居たたまれない思いを抱えながら僕はその場に立ち尽くしていた。
すき焼きをあらかた片付けてしまい、キッチンで食器を洗い始めた先輩は、あの最初の日と同じぶっきらぼうな声で「もう寝ろ」と言った。
「うん……おやすみ」
有無を言わせない先輩の口調に、僕はそれだけ言ってベッドに入った。
しばらくすると先輩は部屋の照明を消し、自分一人机に向かった。これも最初の日に経験した通りだ。
(……元に、戻っちゃった)
ほんの数分前、同じベッドで先輩と一線を越えようとしていたことを思って、急転直下した今の雰囲気とのギャップに寂しさを覚えた。
さすがにこの雰囲気ではさっきの続きを、という話にはならないだろう。それどころか明日にもこの家を出ていけということになってしまうかも知れない。
……いや、どのみちそうなるだろう。さっきの訪問者の口ぶりからすればこの家は未成年者を泊まらせている疑いありとして関係当局にマークされたということになる。
そんな中、僕がいつまでもこの家に居続けることはさすがにできない。先輩は言い出しにくいかも知れない。なら、ここは僕からその話を切り出すしかない。
「……ねえ、お兄さん」
「……」
「迷惑かけちゃってゴメン……ボク、出てくね」
「……明日の朝にしてくれるか」
「え?」
「……さっき来た連中が見張ってるかも知れない。だから、出てくなら明日の朝にしてほしい」
「明日の朝も見張ってるかも知れないよ?」
「……」
「ボクがちょろちょろ外に出たりしてたから怪しく思われちゃったんだよね?」
「……たぶんな」
「だったらボクもう外に出ないようにして、この家の中だけで生活する子になってもいいよ?」
「……」
「……そしたら誰にも何も言われないし、お兄さんは毎日、ボクに好きなだけエッチなこと……」
「……そんなのは駄目だ」
「……わかった。明日の朝、出てく」
「……ああ」
最後のは言ってみただけだった。すっかり冷えてしまった今の雰囲気を考えれば、断られることはわかっていた。
(……でも、残念だな)
正直、先輩に処女をあげられなかったことが残念だった。
僕の方でもその気になっていただけに、あそこまで盛り上がった初セックスが未遂に終わったのも残念だけれど、あと一歩で絶世のロリ美少女の処女膣を堪能できたものが直前でその機会を奪われた先輩の無念を思うとやるせない気持ちでいっぱいだった。
完全にこの家に囲われて先輩専用の性奴隷になるような提案をみずからしたのも、迷惑かけるだけかけて何の見返りも返せなかった先輩への申し訳なさからだ。
だが、先輩にきっぱり断られて出ていけと言われたからにはそうするしかない。それが先輩の意志ということだからだ。やっぱり先輩は最後の最後には人の道を踏み外せない人だった。
(……まあ、ちょっとはエッチなことさせてあげられたし)
そう思って僕は目を閉じた。
色んなことがあって眠れるとは思えない。けど、明日からの宿無し生活を思って少しは休んでおこうと思い、古典的だが頭の中に羊を数えはじめた。
*
「――マコト、起きてるか?」
(……?)
先輩の声がかかったとき、僕は半分眠っていた。だから先輩の質問に返事を返すのが遅れた。
またいつかのように僕に夜這いをかけてきたのかとも思った。けれど、それにしては先輩の声が遠い。
暗闇の中に目をこらすと、先輩は僕が寝ているベッドから離れた場所で寝袋にくるまっているようだった。
「……マコトももうわかってると思うけど、俺、ロリコンなんだよ」
「……」
「でも、マコトは俺のこと、気持ち悪がらないでくれた。……だから、ありがとう」
「……」
「最初、マコトがいきなりメッセージ送ってきたとき、生きてるのが辛い、努力でどうにかなる話じゃないって言ってただろ?」
「……」
「……俺と同じだと思った。俺も気持ち悪いだの何だの言われてて、生きてるのが辛くて仕方なかったから。だから、男か女かもわからなかったけど、マコトのこと匿ってやろうと思ったんだ」
「……」
「……けど、マコトの姿見たらもう駄目だった。マコトは、俺が想像の中で毎日犯してた理想の少女そのものだったから」
「……」
「我慢できなくて襲っちまって、でもマコトは許してくれて……俺、もう何がなんだかよくわからなくなって……」
「……」
「……さっきの連中が来てくれて、良かったと思ってる。マコトの初めてだけは奪わずに済んだから」
「……いいよ」
ずっと黙って聞いていた僕は、そこでついに返事を返した。
僕が起きていたことがわかっていたかのように、先輩は何も言わなかった。そんな先輩に、僕はなおも続けた。
「お兄さんが欲しいなら、ボク、今からでもお兄さんに処女あげるよ?」
「……」
「ねえお兄さん、こっち来て。さっきの続きしよ?」
「……しない」
「どうして?」
「マコトの初めての相手が、俺みたいのでどうするんだよ」
ありったけの想いを腹の底から絞り出すような、先輩の声だった。
「……」
「さっきも、本当は迷ってた。マコトの初めてが俺なんかでいいわけないって」
「……」
「……マコトみたいに可愛い子にそう言ってもらえただけで、俺は十分だ。これからの人生、その言葉を胸に生きていける気がする。ありがとう――」
話はそれで終わりだった。暗闇の中、こちらに背を向ける先輩の姿を認め、僕は目を閉じた。
(……先輩が僕に対していだいてたのは、純愛だったんだ)
新鮮な驚きがあった。まさか、ロリコンの先輩が、家出少女である僕に純愛をいだいていたなんて……。
(まあ、あれだけエッチなことして純愛もないけど……)
そう思い直して、心の中で苦笑した。グダグダな終わり方には違いなかったけれど、心は何となくさわやかだった。
悪くない数日間だった。そう思って僕は眠りが訪れるのを待った――
*
「それじゃあな」
「うん、長い間ありがと」
翌朝、夜が明けきらないうちに起きると先輩はまだいた。
菓子パンと牛乳で簡単な朝食をとり、お別れをすることにした。
玄関で僕を見送る先輩の顔には複雑な表情が浮かんでいた。寂しさと不安をない混ぜにしたようなその表情が、なんのために浮かんだものなのかわからなかった。
けれど、そんな先輩の顔を眺めるうち、僕は最後にひとつ先輩をからかうネタを思いついた。
「ねえお兄さん、ひとつだけ言っとかなきゃいけないことがあるんだ」
「なんだよ」
「ナイショのお話だから、耳かして」
「なんで二人しかいない所で耳なんか……」
そう言いながらも先輩は身をかがめて耳を近づけてくる。僕は背伸びをして、先輩の唇にキスした。
「……!」
「泊めてくれてありがと」
そう言って僕は玄関のドアを開けた。
「今の、ボクのファーストキスだから!」
自分の唇に手を当て、まだ呆然としている先輩にそう言い残して、僕はドアから飛び出した。
* * *
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……」
先輩の家を出た僕は夜明けの町を全力で駆け抜けた。マークされている先輩のためにできるだけ早く家から離れる――それが狙いだった。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……」
先輩の家から十分離れたところで立ち止まった。そこでふと、僕はここ数日間スマホを見ていなかったことに気づいた。
カバンからスマホを取り出してみる――先生からのLINEは毎日入っていた。
「……」
そうして僕は、先輩の家にいる間、自分が先生からのLINEをぜんぜん気にしないでいられたことにはじめて気づいた。同時にあの駅前で先輩の家に向かった当初の目的が達成されたということも……。
「……先輩のおかげかな」
結局、そういうことになるのだろう。先生との初恋の思い出は、先輩との奇妙な同居生活によって上書きされたのだ。
それは最初のうち恐怖とともに思い描いていたような過酷なものではなかった。けれどもブサイクなお笑い芸人に似たデブなロリコンの家で過ごした数日間で、先生に対する僕の復讐は見事に果たされたようだ。
「……うん、悪くなかったな」
そう呟いて、僕はまた歩きはじめた。
それにしても問題はこれからのことだ。これで僕はまた宿無しに戻ってしまった。夜までに今夜泊まる場所をどうにかしなければならない。
ただそうなると、僕がとれる手段は限られている。……というか、以前に何度も検討したよう神待ち掲示板に書きこむくらいしかない。
その結果、先輩が破ることなく残してくれた僕の処女膜も、今夜にはどこぞの男のペニスに突き破られることになる。それが、僕には何となく悔しかった。
はじめて会う男に処女を捧げるのは仕方がない。けれど、どうせ処女をあげるなら先輩にあげたかった……そんな思いが、自分の処女にこれまでまったく価値を感じていなかった僕に、それを喪失する可能性が濃厚な未来へ一歩を踏み出すことを躊躇させた。
「――マコトさんですね?」
「はい?」
そんな考えに浸っているとき、僕はいつの間にか向かいに立っていた二人組の男性に声をかけられた。
* * *
――そうして僕は始発もまだ走り始めないような時刻から仕事に励んでいた熱心な補導員に補導された。
事務所のような場所に連れていかれ、家出していた間、どこでどうやって過ごしていたのか執拗に尋問された。僕はその尋問に対して黙秘を貫き、一切の事情を話さなかった。
先輩に義理立てしたというのもあるが、実のところそればかりではない。僕が知っている自分の情報は、ステータスで確認できるものに限られる。つまり僕は、その尋問にまともに回答できるほどに自分のパーソナルデータを把握できていなかったのだ。
もっとも、尋問はそれほど長く続かなかった。昼頃になると警察の取り調べ室でもないのにカツ丼を出されたので、僕はありがたくそれを食べさせてもらった。
昼食が終わると待合室のような部屋に通され、そこで僕は四十がらみの夫婦とおぼしき男女に引き合わされた。聞けば男性の方は僕の叔父――母親の弟で、女性の方はその妻だということだった。
僕としては正直「そうなのか」としか言いようがなかった。リアルの世界では僕にも叔父の一人や二人いるが、目の前で心配そうな表情を浮かべているナイスミドルはその誰にも似ていなかった。
第一、その男性の身につけているものは腕時計にしろスーツにしろ素人目に見ても明らかに金がかかっているもので、立ち居振る舞いの上品さをみても自分のような庶民とは縁遠い世界の住人だということがはっきりと見て取れた。
女性の方も、まあ似たようなものだ。少々トウがたっているけれどなかなかの美人で、ダイヤモンドが数珠つなぎにされたネックレスが嫌味にならずよく似合う、有閑マダムを絵にかいたような美魔女だ。
どうしてそうなったのかよく覚えていないが、結論から言えば僕はその叔父夫婦の家に引き取られることになった。
なんでも僕の母親は若いころにどこぞのアーティストの卵と駆け落ちして音信不通になっており、行旅死亡人としての連絡が実家にいって、そこではじめて一人娘である僕の存在が明らかになったのだという。
自分でもぜんぜん知らなかったけど、マコトの設定はそんなシビアなものだった……ということらしい。
この年まで子供が欲しくていろいろやってきたがついに授かることなく諦めかけていたところへ降ってわいたこの話、神様の導きとしか思えない。姉のためにもぜひ君を立派なレディにしたい、だからどうか私たちの子供になって欲しい――と涙ながらに訴える叔父夫婦に、僕は断ることができなかった。
運営がどういうつもりか知らないが、どうやらこの人たちはまともそうだ。とりあえずこの人たちの子供というポジションに落ち着いて、先のことはそこから考えればいい――
そんな青写真は、叔父夫婦に連れられて彼らの家に辿り着いたとき、霧散した。
「ふえぇ……」
デカいのである。ものすごい豪邸なのである。
そもそも電動で開閉する鉄の門をくぐって車に乗ったまま邸内にのりこむということ自体はじめてだったのだけれど、門をくぐってから屋敷につくまで車で一分近くも走ったことからしてまず驚きだった。
屋敷の玄関には執事とおぼしき妙齢の女性が待ち構えていたのに二度びっくりで、屋敷の中に入るとお色気たっぷりの若いメイドさんまでいたことに三度びっくりだった。
叔父様――その屋敷のあまりの立派さに、着いて中に通されたあたりから僕は彼のことを自然にそう呼ぶようになっていたのだけれど、叔父様の指示でメイドさんは僕をこれまたバカでかいお風呂に入れ、自室となる部屋に案内してくれた。
この部屋がまたすごかった。ベッドはファンタジーなんかで見る天蓋つきのいわゆるお姫様ベッドで、物書き机やらテーブルやらもシックな装飾がほどこされた見るからに高級なものばかりだった。
きわめつけに、お風呂からあがった僕に用意されていた着衣はシルクのドレスだった。そのドレスに身を包み、鏡に映った自分の姿を見るにつけ、ひとつの事実を認めざるをえなかった。――僕は、大富豪の養女として引き取られたのだ、と。
……ただまあ、そういう設定なら素直に受け入れてやっていくしかない。
執事とメイドさんが傍らにかしずく夕食はフランス料理のフルコースらしくとびきり美味しいものだったに違いないが、僕はかつてない場違い感に混乱しまくりで何を食べたかさえ思い出せない。
それでも食事が終わり、自室に控えていたメイドさんの手で薄いシルクの夜着に着替えさせられ、やがてメイドさんが部屋を出ていってしまうとようやくどうにか落ち着いてくるのを感じた。
「……ふう」
お姫様ベッドに横たわって、僕は大きく溜息をついた。
……嵐のような一日だった。今日一日でこの世界における僕の立ち位置は大きく変わってしまった。あの家で先輩に組み敷かれ、処女を奪われようとしていたのが昨日の出来事とはとても思えない。
それにしても、これからいったいどうなるのだろう。まさかとは思うが、このお屋敷でお嬢様として暮らしてゆくゲームの第二章がはじまるのだろうか……。
「ふぁ……」
……あくびが出た。いずれにしても今夜はもう寝ようと思った。難しいことを考えるには僕は疲れすぎている。そんなことを思いながら、眠りに落ちようとした。
――その夜、僕は叔父様に犯された。
――――――――――――――――
NAME:マコト
舌:5
唇:7
首筋:12
乳首:15
脇の下:10
背中:4
へそ:2
クリトリス:13
陰唇:8
Gスポット:0
ポルチオ:0
太腿:8
足首:1
足裏:9
足指:2
クリトリス・オーガズム C-
Gスポット・オーガズム ×
ポルチオ・オーガズム ×
――――――――――――――――
10
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