幼馴染が勇者になって、桜井さんも大変そう。

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07.桜井結菜の結論

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 結菜は学校に着き、自分の教室に入ると無言で自分の席に着いた。いつもは周りに挨拶をするのだが、今の結菜にその余裕はない。

 登校時、勇の手から火炎放射のような炎が出たのだ。そのことで結菜は頭がいっぱいになっていた。

 結菜が眉間にしわを寄せながら、朝の出来事を自分なりに解釈しようとしていると、隣の席の朝倉が心配そうに声をかけてくる。

「桜井さん……大丈夫? 無理して学校来なくてもよかったんだよ?」

「……あっ、大丈夫です。問題ありませんよ」

 結菜は愛想笑いを作り、手を横に振った。
 前の席の花崎も振り返る。心配そうに眉間にしわを寄せていた。

「無理すんなよ、桜井。彼氏が死んだのに、大丈夫なわけないだろ」

 花崎の言葉に、朝倉はうんうんと頷く。

「そうだよ、大丈夫なわけない。辛くなったら、無理せず私たちに言ってね。できることなら、何でもするから」

「いえ……。あー……そうでしたね」

 結菜は昨日、友人の朝倉と花崎に、電話で勇の死を伝えていたのである。

 ――――言うべきじゃなかったな。

 結菜は二人にどう伝えるべきか悩む。
 しかし、結局は脚色を加えることなく、ありのままを話すことにした。

「お二人とも、落ち着いて聞いてほしいんですけど……実は、勇は生きてたんです。今朝も一緒に学校まで歩いてきました。彼は、ちゃんと元気です」

 2人はその言葉に目を見開いた。
 朝倉が、首を傾げながら聞いてくる。

「え……。生きてるって……。でも、冬樹は事故に遭ったんだよね?」

「ええ。事故には確かに遭いました。でも、なんとか無事だったんです。なので、心配はいりません」

 朝倉が眉間にしわを寄せ、「んん?」と唸った。

「……待って。昨日、電話で即死だったって言ってたよね? 内臓が飛び出てたとか……」

 朝倉の言葉に、花崎は頷く。 

「言ってた言ってた。脳が飛び出したとか言ってたよ。……それが、生き返った?」

 花崎と朝倉はしばらく見つめ合う。互いに意見が一致したのか、2人は頷くと、憐みの目を結菜に向けた。

「……桜井さん。それ、悪いけど幻覚か何かだよ。今すぐ帰った方がいいと思う。ゆっくり休みな?」

 朝倉が優しい声をかけてくる。

「そうだぞ、桜井。お前、相当やばいぞ。悪いことは言わないからさ、帰っとけよ。……な?」

 花崎も、真剣に結菜を心配している。
 結菜は首を横に振った。

「……いや違うんですよ、お二人とも。確かに勇は生きてるんです。ええと……そうだ! ちょっと来てください!」

 結菜は、朝倉と花崎の手を掴み、教室を出て勇のいる教室へと向かった。

「ほら! あそこです! ちゃんと、勇がいるでしょう?」

 結菜は教室の入り口で、遠くから勇のことを指さしながら二人に言った。
 勇は、そんな3人の様子に気づくことなく、椅子に座ってぼうっとしている。

 朝倉は、勇の姿を見て目を丸くした。
 
「あれ? ほんとだ。冬樹、生きてるね」

「はあ? じゃあ、冬樹が事故ったってのは何だったんだよ。桜井。嘘吐いたのか?」

 花崎は眉間にしわを寄せ、結菜に迫った。
 結菜は、首を横に振る。

「違うんです! ほんとに事故に遭ったんですよ! ひどいケガで、何度も轢かれて、内臓も脳もビチャーッて飛び出しちゃって!」

「いやいや、桜井。言ってることおかしいじゃん。そんな状態になってたら生きてるわけないだろ。生きてたとしても、まだ病院から出てこられないって」

 花崎がもっともな事を言う。

「そうなんですけど! 無事だったんです! 朝、普通に家から出てきたんですよ!」

「いや、ありえないって」

 ――――そう。
 確かにそれは、花崎が言うようにありえないことだ。

 だからこそ、結菜はこれまでずっと考えていたのだ。
 この謎に対し、納得がいく答えをずっと探していた。

 そして結菜は、とうとう一つの答えにたどり着いたのだった。

 ――――その答えを、今、言うしかないようですね。

 結菜は仕方がないと言うようなため息を吐いて、ゆっくりと2人に言った。

「いいですか、お二人とも。信じられないと思うんですが、落ち着いて聞いて欲しいんです。……勇は恐らく、サイボーグにされてしまったんだと思います」

 教室の入り口。
 立っている結菜と、友人2人。
 沈黙が、その場を支配した。

 数秒して、花崎が沈黙を破る。

「…………………はあ?」

 結菜は、花崎がそう反応をするのを、わかっていたかのように頷いた。

「わかります。『何言ってんの?』って思いますよね。でも、そうだとしか考えられないんですよ!」

 朝倉が、半笑いで首を横に振る。

「いや……桜井さん。それはちょっと厳しいって。いくら何でもありえないよ」

「いや、絶対そうです! 勇、登校してる時に、手から火炎放射を放ったんですよ!? サイボーグ以外に考えられますか!?」

「火炎放射ぁ? ……あはははは!」

 花崎が笑った。
 結菜はムッとする。

「いやいや、ありえないよ、桜井! 火炎放射はない!」

「本当なんですって! すごい火力の炎が勇の手から出て、コンクリートを焼いたんです! そしたらコンクリートも砕けちゃって! もう、ほんとにすごくて!」

「わかったわかった! もう教室に帰ろうぜ、お嬢様!」

 花崎が、結菜の肩を背後から掴んで、自分の教室へと押した。

「だから、本当なんですって! 本当にコンクリートに穴が開いたんです!」

「わかったって、桜井。面白かったよ。冗談なんだろ? あっはっはっは!」

 花崎は豪快に笑いながら、結菜の様子に構わず教室へと進む。
 結菜はなされるがまま、教室へと押されていく。

 途中、廊下でかたまって話している女子生徒の前を通り過ぎた。
 結菜は、その時彼女らが話していた会話を聞き逃さなかった。

「あそこのコンクリート。派手に割れてたけど、なんだったんだろうね。工事中ってわけでもなさそうだし」

「――――ちょっとまったあああ!!」

 結菜は、自分の肩を掴んでいる花崎の手を払って、素早く廊下でかたまっている女子生徒の集団に駆け寄り、話しかけた。

「今の話、どういうことですか!? コンクリートに穴が開いてたって言いましたよね!? どこのコンクリート!?」

「えっ!? えぇっ!? あの、あそこですよ、ほら! 脇道の途中の!」

 女子生徒は、鬼気迫る勢いの結菜に困惑しながらも答えた。
 それを聞いた結菜は、花崎の肩を強く揺さぶる。

「ほら! 今の聞きました!? 確かにコンクリートは砕けたんですよ! だから、やっぱりサイボーグなんだ! 私の彼氏、サイボーグにされちゃった!」

 結菜はぴょんぴょんと跳ねながら、泣き笑いのような顔で騒ぐ。

「お、落ち着け、桜井! お前、今相当やばいって! サイボーグとか、普通に考えてありえないだろ!?」

「でも、間違いないですよ! 昨日、普通に勇、死んでましたもん! あそこから生き返るわけない! 脳だけ取り出して他の部分は機械にされちゃったんですよ! 絶対そう!」

「……冬樹の脳、はみ出してたんじゃなかったっけ?」

「とにかく間違いないんです! 勇はサイボーグにされちゃったんです! これから私、どうすればいいの!?」

 結菜は混乱しながらも、これからの2人の未来に不安を抱くようなことを口にする。

 友人2人は面倒くさそうに、結菜を引っ張って教室まで運んで行った。
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