10 / 29
SS 子息たちの憂鬱 ー前編ー
しおりを挟む
まず、始めにオレの自己紹介をしておこう。
とりあえず、今からつらつらと登場人物が出てくるため面倒だからな。
オレの名は「アルフレッド=コール」。
王国騎士団の団長を父に持ち、学園卒業後は自動的に騎士団への入隊が決まっている。
容姿は…。
そうだな、短めの父譲りのブロンズ色の髪に、母譲りの黒曜石の様な瞳といった所か?
卒業まで数日。
嫌でも気合いが入り始めた今日この頃だ。
入隊後は、団長の息子とて新人扱いだ。
見習いから始まり、正騎士になるまでの暫くは、騎士団の宿舎で生活する事になっている。
おかげで、ここのところ、学園から帰宅すると準備等に追われる毎日だった。
だが、そんな中。
ここ最近、オレは毎日の様に友人と「ある二人」について愚痴り合っていた。
「まったく、あの方にも困ったものだ」
昼休み、学園のカフェテラスにて、オレ達は項垂れながら、ここ最近の恒例行事となった愚痴り合いをしていた。
だが、今日は何時もの愚痴り合いとはひと味違う。
先程オレ達は聞いてしまったのだ。
アイリッド殿下とメリッサ嬢の有り得ない会話を。
「まったくね?……本気で将来が不安になってきたよ。ボク達、アレに仕えるんだよ?」
オレの目の前では、愚痴り合いの相手である王国魔法士団の団長の息子、「マルカス=シュタイン」が不貞腐れる様にテーブルに突っ伏していた。
金色の肩口まであるストレートの髪に、アクアマリンとエメラルドのオッドアイ。
この瞳の色は、こいつの家の特徴だな。
因みに、こいつもオレ同様、今年この学園を卒業し、そのまま城に仕える予定だ。
「ねぇ、ボクは思うんだ。このままあの二人が結婚したら、この国は危ないんじゃないのかなぁってさ?」
「マルカス…お前、いくら盗聴防止の魔道具を使っているとはいえ……大胆だな」
こいつの言わんとしている事はよく分かる。
確かにあれを聞いて不安にならない訳がないな…。
「だってさぁ、あれは無いよ!まさかシーちゃんに婚約破棄を言い渡す予定だなんてさ!しかも、めっちゃノリノリで言ってたよ?」
こいつの言う「シーちゃん」とは、オレ達の幼馴染みであり、大切な友人である「シルビア=サフィール」の事だ。
サフィール家の「長男」にして、次期当主。
見た目だけなら、そこいらのご令嬢など目でも無い純粋美少女。
まぁ、見た目だけなら…な。
実際は、父親である宰相閣下にそっくりな「腹黒ドS」だ。
間違っても敵にまわそうものなら……考えただけでも恐ろしい。
まぁ、とは言っても、普通にしていれば害は無いし、あいつは身内をとことん大切にする。
だから、オレ達はあいつの事が好きなんだ。
「しかし、殿下は何故シルビアが男だと忘れているんだ?幼少期からの知り合いだろ?しかも、王族の方がサフィール家の事情を知らない訳がないはずなのに」
そう、サフィール家はこの国の貴族の中でも異質な家だ。
あの家では、男子の出生率が何故かかなり低い。
しかも、生まれたとしても、16歳の成人まで生きられない者がほとんどなのだ。
そのせいで、男子は、生まれると、魔除のために成人まで女性の姿をとらされる。
現にシルビアも幼少期は体が弱く、オレ達はあいつが何度も倒れ、生死の境を彷徨った事をよく覚えている。
まぁ、今では考えられない位元気になったが。
「どうせ、あのトリ頭の事だから、自分のいい様に解釈完結したんじゃないの?シーちゃん、見た目だけは可愛いからさぁ」
嫌いなのは同意するが、「トリ頭」は言い過ぎだ。
まったく、こいつはこいつで口が悪すぎる。
オレは、面倒くさそうな顔で、目の前にあるグラスから果実水をストローで吸うマルカスに、溜息しか出なかった。
しかも何か「ジュー」って音たててるし………汚いな。
「で、この事はシルビアに言うのか?」
いきなり卒業式で殿下から宣言されたら、流石のシルビアでも困るはずだ。
先に伝え、対処を考えた方がいいかもしれない。
「んー、そうだねー。シーちゃんには伝えた方がいいかも。あ、後、ラルフとミカにも言っといた方がいいだろうね」
因みに、「ラルフ」は冒険者ギルドの総裁の息子で、ミカ…「ミカエリス」は商業ギルドの総裁の息子だ。
二人共、オレ達の幼馴染みになる。
因みに、この二人は、シルビアと同い年。オレとマルカスの一つ年下だ。
「とりあえず、先にシルビアに伝えておくか?どうせ何時もの場所にいるだろうからな」
シルビアは、何時も昼休みになると決まって「ある場所」へ向かう。
それは、今オレ達がいるカフェテラスからそう遠くない。
ラルフとミカエリスを探すより、先に居場所が分かっているシルビアに伝えた方が効率がいいだろう。
「そうだね。んじゃ、シーちゃんの所に行きますか?」
だが、オレ達は自分達のこの行動が間違っていたと、後から後悔する事になるとは思いもしなかった。
とりあえず、今からつらつらと登場人物が出てくるため面倒だからな。
オレの名は「アルフレッド=コール」。
王国騎士団の団長を父に持ち、学園卒業後は自動的に騎士団への入隊が決まっている。
容姿は…。
そうだな、短めの父譲りのブロンズ色の髪に、母譲りの黒曜石の様な瞳といった所か?
卒業まで数日。
嫌でも気合いが入り始めた今日この頃だ。
入隊後は、団長の息子とて新人扱いだ。
見習いから始まり、正騎士になるまでの暫くは、騎士団の宿舎で生活する事になっている。
おかげで、ここのところ、学園から帰宅すると準備等に追われる毎日だった。
だが、そんな中。
ここ最近、オレは毎日の様に友人と「ある二人」について愚痴り合っていた。
「まったく、あの方にも困ったものだ」
昼休み、学園のカフェテラスにて、オレ達は項垂れながら、ここ最近の恒例行事となった愚痴り合いをしていた。
だが、今日は何時もの愚痴り合いとはひと味違う。
先程オレ達は聞いてしまったのだ。
アイリッド殿下とメリッサ嬢の有り得ない会話を。
「まったくね?……本気で将来が不安になってきたよ。ボク達、アレに仕えるんだよ?」
オレの目の前では、愚痴り合いの相手である王国魔法士団の団長の息子、「マルカス=シュタイン」が不貞腐れる様にテーブルに突っ伏していた。
金色の肩口まであるストレートの髪に、アクアマリンとエメラルドのオッドアイ。
この瞳の色は、こいつの家の特徴だな。
因みに、こいつもオレ同様、今年この学園を卒業し、そのまま城に仕える予定だ。
「ねぇ、ボクは思うんだ。このままあの二人が結婚したら、この国は危ないんじゃないのかなぁってさ?」
「マルカス…お前、いくら盗聴防止の魔道具を使っているとはいえ……大胆だな」
こいつの言わんとしている事はよく分かる。
確かにあれを聞いて不安にならない訳がないな…。
「だってさぁ、あれは無いよ!まさかシーちゃんに婚約破棄を言い渡す予定だなんてさ!しかも、めっちゃノリノリで言ってたよ?」
こいつの言う「シーちゃん」とは、オレ達の幼馴染みであり、大切な友人である「シルビア=サフィール」の事だ。
サフィール家の「長男」にして、次期当主。
見た目だけなら、そこいらのご令嬢など目でも無い純粋美少女。
まぁ、見た目だけなら…な。
実際は、父親である宰相閣下にそっくりな「腹黒ドS」だ。
間違っても敵にまわそうものなら……考えただけでも恐ろしい。
まぁ、とは言っても、普通にしていれば害は無いし、あいつは身内をとことん大切にする。
だから、オレ達はあいつの事が好きなんだ。
「しかし、殿下は何故シルビアが男だと忘れているんだ?幼少期からの知り合いだろ?しかも、王族の方がサフィール家の事情を知らない訳がないはずなのに」
そう、サフィール家はこの国の貴族の中でも異質な家だ。
あの家では、男子の出生率が何故かかなり低い。
しかも、生まれたとしても、16歳の成人まで生きられない者がほとんどなのだ。
そのせいで、男子は、生まれると、魔除のために成人まで女性の姿をとらされる。
現にシルビアも幼少期は体が弱く、オレ達はあいつが何度も倒れ、生死の境を彷徨った事をよく覚えている。
まぁ、今では考えられない位元気になったが。
「どうせ、あのトリ頭の事だから、自分のいい様に解釈完結したんじゃないの?シーちゃん、見た目だけは可愛いからさぁ」
嫌いなのは同意するが、「トリ頭」は言い過ぎだ。
まったく、こいつはこいつで口が悪すぎる。
オレは、面倒くさそうな顔で、目の前にあるグラスから果実水をストローで吸うマルカスに、溜息しか出なかった。
しかも何か「ジュー」って音たててるし………汚いな。
「で、この事はシルビアに言うのか?」
いきなり卒業式で殿下から宣言されたら、流石のシルビアでも困るはずだ。
先に伝え、対処を考えた方がいいかもしれない。
「んー、そうだねー。シーちゃんには伝えた方がいいかも。あ、後、ラルフとミカにも言っといた方がいいだろうね」
因みに、「ラルフ」は冒険者ギルドの総裁の息子で、ミカ…「ミカエリス」は商業ギルドの総裁の息子だ。
二人共、オレ達の幼馴染みになる。
因みに、この二人は、シルビアと同い年。オレとマルカスの一つ年下だ。
「とりあえず、先にシルビアに伝えておくか?どうせ何時もの場所にいるだろうからな」
シルビアは、何時も昼休みになると決まって「ある場所」へ向かう。
それは、今オレ達がいるカフェテラスからそう遠くない。
ラルフとミカエリスを探すより、先に居場所が分かっているシルビアに伝えた方が効率がいいだろう。
「そうだね。んじゃ、シーちゃんの所に行きますか?」
だが、オレ達は自分達のこの行動が間違っていたと、後から後悔する事になるとは思いもしなかった。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる