侯爵家の清純美少女?いいえ、腹黒ドS大魔王ですが何か?

阿華羽

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SS 子息たちの憂鬱 ー後編ー

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「てかさぁ!マジむかつく!」

 私は、目の前で先程から愚痴りまくっている友人に、いい加減うんざりしていた。
 相手は王国魔法士団長の息子である「マルカス=シュタイン」だ。

 今日の放課後は、もう直ぐ行われる卒業式に向け、生徒会長として、生徒会室にて副会長である「ラルフ=バルト」と準備等で忙しく過ごす予定だったはずなのに…。

 あぁ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。

 私の名は「ミカエリス=ハーネル」。
 商業ギルドの総裁を父に持ち、学園では現生徒会長です。
 私の容姿はと言いますと、ストレートの黒髪で襟足を腰まで伸ばしています。瞳の色は、紫水晶ですかね。後、目が悪いので銀縁の眼鏡を掛けています。

 因みに、先程申し上げました、ラルフは冒険者ギルドの総裁子息で、生徒会副会長にして、私達の幼馴染みの一人です。
 彼の容姿は、アシンメトリーな短めのアッシュグレーの髪に、濃い灰色の瞳をしています。

 そして、現在、ラルフはマルカスの余りの煩さに、何処から出したのか、耳栓をして書類整理に明け暮れています。
 はっきり言って、「我関せず」です。

「ちょっと!聞いてるのミカ!」

 いい加減煩いですね……。
 私は、わざとらしく自分の掛けている眼鏡をいじりながら、深い溜息を漏らした。

 マルカスがこの部屋に突撃してきてから、かれこれ30分位でしょうか?
 この部屋に盗聴防止の魔具があるとは言え、少々内容がよくありません。

「聞いてはいますが…。マルカス?いい加減、その口を閉じる気はありませんか?私達は今日忙しいのですが。いくら前生徒会役員とは言え、入り浸るのもどうかと思いますよ?」

 まったく、この「甘えた坊や」にも困ったものです。
 これでは、どちらが年上なのか分かりませんね。

「だってさぁー!何でよりによってシルビアなんかとって、思わないわけ?あの腹黒ドS大魔王だよ?」

 マルカスは、頬を膨らませながら唸り出していますが、正直ウザイだけですね。

 まぁ、部屋に入ってきた初めは違ったんですよ?

 あの、バカ王子がシルビアに婚約破棄を言い渡すらしいとの、馬鹿げた情報を伝えに来たのが初め。
 そして、それから何故か、マルカスがアルフレッドと目撃してしまったと言う「密会」話しに発展して行き、今に至ります。

 因みに、アルフレッドは、目撃した内容にショックを受けたのか、伝言役をマルカスに丸投げして帰宅してしまったそうです。
 まぁ、あのクソ真面目には少々刺激が強かったのでしょう。

「あの聡明なエリオット様が、よりによってさぁ…マジで無いよぉ。ボクの憧れだったエリオット様がぁ…。確かにシーちゃん、顔は超可愛いし、侯爵家の跡取りだし、宰相閣下の息子だけあって頭超いいし、魔法の腕も凄いよー?でも、腹黒ドSだよ?暗黒大魔王だよ?エリオット様が苦労するの目に見えてるよー!」

 まぁ、言わんとする事は分かりますが…。
 いかんせん、どちらかと言うと、私も彼方側の人間なので何とも…。

 と、そんな中、長ったらしく愚痴を言っているマルカスは、まだ気付いていませんでした。

<おや?…これはこれは。マルカス、骨は拾ってあげますよ?…ふふ>

 その、腹黒ドS大魔王が、彼の真後ろに立っていたのです。

「マルカスさぁ、………「オレ」の事、そんな風に見てたんだぁ?」
「ちょっ!何でシーちゃんが!」
「あれ?生徒会会計の「私」が此処にいちゃダメなのかなぁ?」

 ラスボスの如き出立ちで、背中から何やらドス黒いオーラを漂わせた、我らが腹黒ドS大魔王様は、その可愛らしさ全開の姿とは裏腹に、視殺しそうな目線でマルカスを見据えると、彼の後ろ襟を掴み、そのまま部屋から引きずって行きました。

「行ってらっしゃい」

 まぁ、自業自得ですね。
 助ける理由もないので、手を振っておきましょうか。

「ちょっとぉ!何それ!ミカのひとでなし!」

 と言う訳で、マルカスはシルビアによって連行され、やっと生徒会室は静かになりましたとさ。

「ふぅ、やっと出ていったか…。これで静かになった」
「貴方…本当にブレませんね、ラルフ」
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