18 / 29
14話が通じないんですが!
しおりを挟む
帰宅後、私は身なりを整え城へと向かった。
と、まぁ、ここまでは何時も通り。
だが、問題は…。
「貴様、今日も卑しくエリオットに会いに行くとは!下心が丸出しな下品な男だ、それでも侯爵家の人間か?呆れるな!」
いや、本当に………殺っちゃっていいかなぁ。
一旦帰宅した私は、案の定と言うか、待ち構えていたルドニーク殿下に捕まった。
それから、我家の用意した城への馬車に無理やり近侍と共に乗り込んで来ると、そのまま付いてきたのだ。
「その……シルビア様。ウチのバ……いぇ、王太子殿下がご迷惑をお掛け致します」
馬車の中、向かいのルドニーク殿下の横で、護衛を兼ねた近侍の男が渋い顔をしていた。
<あー。今、この人「バカ」って言いかけたな…>
そして、近侍は懐から何やら取り出すと、ささっと口に流し込んだ。
…………多分胃薬だ。
まぁ、仕えてる主人が「コレ」じゃあ、分からないでもないけどね。
思わず向けてしまった同情の視線に、近侍は自身の胃を押さえながら、「痛み入ります」と、無言の表情で返してきた。
だがその時。
横でそのやり取りを見ていたルドニーク殿下は、全くもってお門違いなセリフを吐いてきたのだった。
「貴様!私の近侍にまで色目を使うとは何事だ!そのような輩を義理弟にしなくてはならぬとは……。恥を知れ!」
ん?
は?
今…何て言ったかな?
幻聴?
殿下の横では、一瞬にして近侍の表情が蒼白になっている。
「………失礼ですが、殿下。義理弟とはどう言う事でしょうか?」
私は、スーッと自分の視線が冷めていくのを感じながら、殿下へと口を開いた。
その視線に、向かいの近侍がビクリと肩を震わす。
だが、当の殿下はというと、「お前は何を言っているんだ?」という表情で私を見ていた。
「私の弟と、貴様の姉が婚姻を結んだら、貴様は私の義理弟だろうが!馬鹿なのか?理解力もないとは嘆かわしい」
………理解力が無いのは「お前」だ。
今日、父上に要相談だな。
姉上が、あんな奴の嫁になどなる訳がない!
何で、こんなのが王太子なワケ?
と言うか……。
<ふふっ……相手をする「価値」もない「クズ」だな>
それから程なく。
私…いや、私達が乗った馬車は、城へと到着し、何時もの様にエリオット様の専属侍女である「マイカ」に迎えられた。
因みに、到着直後のウチの御者の枯れた様な表情に、バカ王太子の近侍が頭を下げまくっていたのにはウケた。
家臣が主人に意見するには勇気がいる。自国の王太子なら尚更。
特に、このバカ殿下は人の話を聞かないばかりか、理解すらできない。
まぁ、同情は「もう」する気ないけどね。
アレを放置していたのは自分達だし?
「では、シルビア様」
そんな中、マイカは私以外をマル無視し、城内へと向かってくれた。
うん、彼女も中々…。
そういうこは好きだなぁ…あ、恋愛感情じゃなくね?
流石はエリオット様の「乳姉妹」だけはある。
「少し…遅くなったけど、エリオット様は大丈夫かな?」
「はい。多分「こうなる」だろうからと…、陛下と宰相閣下より申し使っておりましたので」
何やら、陛下達にはお見通しだった様だ。
まぁ、国同士のなんやかんやがあるから、バカ王太子の留学に関して、陛下と父上が知らない訳がないな。
それより…。
何時までこいつらは付いてくるんだ……。
「貴様とエリオットを二人きりなど出来ん!女装好きの変態で、しかも女ばかりか、男にまで色目を使う者にエリオットをやる訳にはいかんしな!」
あー、ダメだ。
今すぐ殺したい。
と、その時。
玄関ホールの奥。
吹き抜けの階段から陛下が父を従えて降りて来るのが見えた。
ものすごく、面白そうな表情の陛下と、今にも人を殺しそうな表情の父に、その場にいた者達は一斉に動きを止めた。
そして、陛下はというと、ゆっくりとした足取りで、此方へと近づいてきた。
「ルドニーク殿…。我が城での醜い暴言は控えてくれぬか?いくら同盟国とは言え、礼儀は心得られよ」
顔は笑顔だか、目は全く笑っていない。
「もっ…申し訳ございません」
恐怖にか、一瞬にして顔色を失った殿下とその近侍は、すぐさま腰を折り、陛下に頭を下げた。
まぁ、あれだな。
エルドラントは同盟国だか、国の規模で考えたら小国だ。
大国であるトーラスの王族に勝てる筈がない。
寧ろ、機嫌でも損ねようものなら、同盟を切られても文句は言えないのだ。
「まぁ、よい。今後は控えられよ……っと、それよりシルビア。話がある故、少々時間をもらうぞ?エリオットなら心配するな。既に伝えてある」
話し…ね。
さて「どちら」の話だろうねぇ。
「はい。畏まりました」
含みを込めた笑顔で返した私に、陛下はとても満足そうに頷いた。
と、まぁ、ここまでは何時も通り。
だが、問題は…。
「貴様、今日も卑しくエリオットに会いに行くとは!下心が丸出しな下品な男だ、それでも侯爵家の人間か?呆れるな!」
いや、本当に………殺っちゃっていいかなぁ。
一旦帰宅した私は、案の定と言うか、待ち構えていたルドニーク殿下に捕まった。
それから、我家の用意した城への馬車に無理やり近侍と共に乗り込んで来ると、そのまま付いてきたのだ。
「その……シルビア様。ウチのバ……いぇ、王太子殿下がご迷惑をお掛け致します」
馬車の中、向かいのルドニーク殿下の横で、護衛を兼ねた近侍の男が渋い顔をしていた。
<あー。今、この人「バカ」って言いかけたな…>
そして、近侍は懐から何やら取り出すと、ささっと口に流し込んだ。
…………多分胃薬だ。
まぁ、仕えてる主人が「コレ」じゃあ、分からないでもないけどね。
思わず向けてしまった同情の視線に、近侍は自身の胃を押さえながら、「痛み入ります」と、無言の表情で返してきた。
だがその時。
横でそのやり取りを見ていたルドニーク殿下は、全くもってお門違いなセリフを吐いてきたのだった。
「貴様!私の近侍にまで色目を使うとは何事だ!そのような輩を義理弟にしなくてはならぬとは……。恥を知れ!」
ん?
は?
今…何て言ったかな?
幻聴?
殿下の横では、一瞬にして近侍の表情が蒼白になっている。
「………失礼ですが、殿下。義理弟とはどう言う事でしょうか?」
私は、スーッと自分の視線が冷めていくのを感じながら、殿下へと口を開いた。
その視線に、向かいの近侍がビクリと肩を震わす。
だが、当の殿下はというと、「お前は何を言っているんだ?」という表情で私を見ていた。
「私の弟と、貴様の姉が婚姻を結んだら、貴様は私の義理弟だろうが!馬鹿なのか?理解力もないとは嘆かわしい」
………理解力が無いのは「お前」だ。
今日、父上に要相談だな。
姉上が、あんな奴の嫁になどなる訳がない!
何で、こんなのが王太子なワケ?
と言うか……。
<ふふっ……相手をする「価値」もない「クズ」だな>
それから程なく。
私…いや、私達が乗った馬車は、城へと到着し、何時もの様にエリオット様の専属侍女である「マイカ」に迎えられた。
因みに、到着直後のウチの御者の枯れた様な表情に、バカ王太子の近侍が頭を下げまくっていたのにはウケた。
家臣が主人に意見するには勇気がいる。自国の王太子なら尚更。
特に、このバカ殿下は人の話を聞かないばかりか、理解すらできない。
まぁ、同情は「もう」する気ないけどね。
アレを放置していたのは自分達だし?
「では、シルビア様」
そんな中、マイカは私以外をマル無視し、城内へと向かってくれた。
うん、彼女も中々…。
そういうこは好きだなぁ…あ、恋愛感情じゃなくね?
流石はエリオット様の「乳姉妹」だけはある。
「少し…遅くなったけど、エリオット様は大丈夫かな?」
「はい。多分「こうなる」だろうからと…、陛下と宰相閣下より申し使っておりましたので」
何やら、陛下達にはお見通しだった様だ。
まぁ、国同士のなんやかんやがあるから、バカ王太子の留学に関して、陛下と父上が知らない訳がないな。
それより…。
何時までこいつらは付いてくるんだ……。
「貴様とエリオットを二人きりなど出来ん!女装好きの変態で、しかも女ばかりか、男にまで色目を使う者にエリオットをやる訳にはいかんしな!」
あー、ダメだ。
今すぐ殺したい。
と、その時。
玄関ホールの奥。
吹き抜けの階段から陛下が父を従えて降りて来るのが見えた。
ものすごく、面白そうな表情の陛下と、今にも人を殺しそうな表情の父に、その場にいた者達は一斉に動きを止めた。
そして、陛下はというと、ゆっくりとした足取りで、此方へと近づいてきた。
「ルドニーク殿…。我が城での醜い暴言は控えてくれぬか?いくら同盟国とは言え、礼儀は心得られよ」
顔は笑顔だか、目は全く笑っていない。
「もっ…申し訳ございません」
恐怖にか、一瞬にして顔色を失った殿下とその近侍は、すぐさま腰を折り、陛下に頭を下げた。
まぁ、あれだな。
エルドラントは同盟国だか、国の規模で考えたら小国だ。
大国であるトーラスの王族に勝てる筈がない。
寧ろ、機嫌でも損ねようものなら、同盟を切られても文句は言えないのだ。
「まぁ、よい。今後は控えられよ……っと、それよりシルビア。話がある故、少々時間をもらうぞ?エリオットなら心配するな。既に伝えてある」
話し…ね。
さて「どちら」の話だろうねぇ。
「はい。畏まりました」
含みを込めた笑顔で返した私に、陛下はとても満足そうに頷いた。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる