侯爵家の清純美少女?いいえ、腹黒ドS大魔王ですが何か?

阿華羽

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14話が通じないんですが!

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 帰宅後、私は身なりを整え城へと向かった。

 と、まぁ、ここまでは何時も通り。
 だが、問題は…。

「貴様、今日も卑しくエリオットに会いに行くとは!下心が丸出しな下品な男だ、それでも侯爵家の人間か?呆れるな!」

 いや、本当に………っちゃっていいかなぁ。

 一旦帰宅した私は、案の定と言うか、待ち構えていたルドニーク殿下に捕まった。
 それから、我家の用意した城への馬車に無理やり近侍と共に乗り込んで来ると、そのまま付いてきたのだ。

「その……シルビア様。ウチのバ……いぇ、王太子殿下がご迷惑をお掛け致します」

 馬車の中、向かいのルドニーク殿下の横で、護衛を兼ねた近侍の男が渋い顔をしていた。

<あー。今、この人「バカ」って言いかけたな…>

 そして、近侍は懐から何やら取り出すと、ささっと口に流し込んだ。

 …………多分胃薬だ。

 まぁ、仕えてる主人が「コレ」じゃあ、分からないでもないけどね。

 思わず向けてしまった同情の視線に、近侍は自身の胃を押さえながら、「痛み入ります」と、無言の表情で返してきた。

 だがその時。

 横でそのやり取りを見ていたルドニーク殿下は、全くもってお門違いなセリフを吐いてきたのだった。

「貴様!私の近侍にまで色目を使うとは何事だ!そのような輩を義理弟にしなくてはならぬとは……。恥を知れ!」

 ん?
 は?
 今…何て言ったかな?
 幻聴?

 殿下の横では、一瞬にして近侍の表情が蒼白になっている。

「………失礼ですが、殿下。義理弟とはどう言う事でしょうか?」

 私は、スーッと自分の視線が冷めていくのを感じながら、殿下へと口を開いた。
 その視線に、向かいの近侍がビクリと肩を震わす。
 だが、当の殿下はというと、「お前は何を言っているんだ?」という表情で私を見ていた。

「私の弟と、貴様の姉が婚姻を結んだら、貴様は私の義理弟だろうが!馬鹿なのか?理解力もないとは嘆かわしい」

 ………理解力が無いのは「お前」だ。

 今日、父上に要相談だな。 
 姉上が、あんな奴の嫁になどなる訳がない!
 何で、こんなのが王太子なワケ?

 と言うか……。

<ふふっ……相手をする「価値」もない「クズ」だな>



 それから程なく。

 私…いや、私達が乗った馬車は、城へと到着し、何時もの様にエリオット様の専属侍女である「マイカ」に迎えられた。
 因みに、到着直後のウチの御者の枯れた様な表情に、バカ王太子の近侍が頭を下げまくっていたのにはウケた。

 家臣が主人に意見するには勇気がいる。自国の王太子なら尚更。
 特に、このバカ殿下は人の話を聞かないばかりか、理解すらできない。

 まぁ、同情は「もう」する気ないけどね。
 アレを放置していたのは自分達だし?

「では、シルビア様」

 そんな中、マイカは私以外をマル無視し、城内へと向かってくれた。

 うん、彼女も中々…。
 そういうこは好きだなぁ…あ、恋愛感情じゃなくね?
 流石はエリオット様の「乳姉妹」だけはある。

「少し…遅くなったけど、エリオット様は大丈夫かな?」
「はい。多分「こうなる」だろうからと…、陛下と宰相閣下より申し使っておりましたので」

 何やら、陛下達にはお見通しだった様だ。
 まぁ、国同士のなんやかんやがあるから、バカ王太子の留学に関して、陛下と父上が知らない訳がないな。

 それより…。

 何時までこいつらは付いてくるんだ……。

「貴様とエリオットを二人きりなど出来ん!女装好きの変態で、しかも女ばかりか、男にまで色目を使う者にエリオットをやる訳にはいかんしな!」

 あー、ダメだ。
 今すぐ殺したい。

 と、その時。

 玄関ホールの奥。
 吹き抜けの階段から陛下が父を従えて降りて来るのが見えた。
 ものすごく、面白そうな表情の陛下と、今にも人を殺しそうな表情の父に、その場にいた者達は一斉に動きを止めた。

 そして、陛下はというと、ゆっくりとした足取りで、此方へと近づいてきた。

「ルドニーク殿…。我が城での醜い暴言は控えてくれぬか?いくら同盟国とは言え、礼儀は心得られよ」

 顔は笑顔だか、目は全く笑っていない。

「もっ…申し訳ございません」

 恐怖にか、一瞬にして顔色を失った殿下とその近侍は、すぐさま腰を折り、陛下に頭を下げた。

 まぁ、あれだな。
 エルドラントは同盟国だか、国の規模で考えたら小国だ。
 大国であるトーラスの王族に勝てる筈がない。
 寧ろ、機嫌でも損ねようものなら、同盟を切られても文句は言えないのだ。

「まぁ、よい。今後は控えられよ……っと、それよりシルビア。話がある故、少々時間をもらうぞ?エリオットなら心配するな。既に伝えてある」

 話し…ね。
 さて「どちら」の話だろうねぇ。

「はい。畏まりました」

 含みを込めた笑顔で返した私に、陛下はとても満足そうに頷いた。
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