侯爵家の清純美少女?いいえ、腹黒ドS大魔王ですが何か?

阿華羽

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15愛おしいは虐めたい

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「あら?随分早かったわね」

 陛下と父から解放された私は、その足でエリオット様が待つ、彼女の執務室へと向かった。

 部屋の扉を開いたと同時に、大好きな彼女が目に入る。
 その瞬間、一気に意識が持っていかれた。
 どうやら、私は余程疲れているらしい。

 全ての原因は、例のバカ王太子だ。

 思わず疲れた笑みを返してしまった私に、彼女は溜息をつき、クスリと笑みを漏らした。
 そして、専属侍女であるマイカに目配せをする。

「では、失礼致します。御用の際はお呼びくださいませ」

 すると、彼女マイカは深々と腰を折り、部屋から出て行った。
 どうやら、私はエリオット様に気を使わせてしまったようだ。

 困った様に微笑む彼女に、似たような笑みを返す。

「お疲れ様。……それと、お父様がごめんなさいね」
「あれ、何で私が呼ばれたか知ってるの?」
「聞いてはいないわ。でも大体の察しはつくもの」
「流石は、「アノ」陛下のお子様だ」

 そのまま部屋の長椅子に腰掛けると、彼女も自分の執務机から立ち、私の隣に腰を下ろした。
 そして、私に体を預けると、自身の腕をスルリと私の背に回してくる。

 ……ごめんエリー。

 疲れた私を労いたいのだろうが、これは逆効果だ。

 全く、押し倒されたいのかなぁ。
 可愛いったらないな。

 ちょっとだけ、黒いモノが出かかりながらも、彼女のその優しさに笑みを溢すと、応える様に彼女の背に腕を回した。
 そして、彼女をあやす様に、ぽんぽんと、その背を叩く。

「で、君はどうすれば良いと思う?」
「………意地悪ね」
「そうかな?」
「そうよ」
「でも、全て君のためだ。君の将来のために、憂いは取り除かないとね?」

 私の背に回された彼女の腕に、少しだけ力が入る。
 この先、いつか就く王位。
 定められた事とはいえ、その重圧は計り知れないだろう。

「貴方……やっぱりレイナードの子供だわ」
「あぁ、最高の褒め言葉だよ」
「………もぉ」

 私は彼女の恋人以前に、彼女の家臣だ。
 直ぐに…とはならなくても、この国の憂いは、彼女の憂いになる。

 分かってはいても、自分より国を取った私に少々嫉妬したのだろう。
 彼女は目を細めると、プクッと頬を膨らませた。
 そして、何故かそのまま。

「………意地悪だわ」

 あれ?
 何で私が押し倒されてるのかな?
 意趣返しのつもりかもしれないけど。

「エリオットさん?それ、「オレ」に手を出されても文句言えないよ?」

 だだ漏れた。
 うん、自覚はしてるよ?
 真っ黒な感情が、一気に出てくる。

 そんな「オレ」に、彼女は恐怖からか、ビクリと肩が跳ねた。

「シルビア…私、その」
「だから、逆効果なんだって」
「……え?」

 あー、これダメなやつだ。
 止められるかなぁ……。

 スルリと彼女の頬に手をやる。
 柔らかい、熟れた桃の様な滑らかな肌。
 そのまま輪郭を指先で撫でると、彼女は泣きそうな表情になっていた。
 自分の黒さに、自然と笑みが出る。

「エリー、オレが怖い?」
「……っつ!」

 その時。

 コンコン。

 軽く部屋の扉がノックされる。
 その瞬間、彼女は弾かれる様に私から引いた。

 うーん。
 助かったのか、残念だったのか。

「どうぞ」
「………私がいきましょう」

 私は、クスリと微笑み、エリオット様の応えに合わせ扉へと向かった。
 だが、そこに立っていた人物に、一気に硬直する事となってしまった。

「え………父上と…姉上?」

 そう、そこに立っていた人物。
 それは、父と連れ立った真ん中の実姉だったのだ。
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