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16国同士の争いに発展しそうです!
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「父上、何かあったんですか?」
父とは先程別れたばかりなのに、間髪入れず、今度は姉まで一緒とは。
「シルビア、すまんな火急の用だ。エリオット様、大変申し訳ございませんが、息子と共に陛下の元へご一緒願えますか?」
そう言った父の顔色は、何時も冷静な父らしからぬものだった。
眉間にシワを寄せ、何か、焦りと怒りがごちゃ混ぜになっている様に見える。
<嫌な予感しかしない………それに>
私は、父の隣に立つ姉に向け、チラリと視線を送った。
何で姉上まで城にいるんだ?
この人は極度の面倒くさがり屋で、社交界はもとより、城になぞ滅多に足を運ばないのに。
「お父様だけだと心配だったのよ」
私の考えを読んだのか、姉から声が掛かった。
「我が家の一大事よ……まさか、こんな事になるとは思わなかったわ」
……そう言った姉の表情は、怒りを露わにした時の父にソックリだった。
本当…何があったんだろ。
それからすぐ、私とエリオット様は、父と姉に伴って陛下の元へと到着した。
軍事会議にも使われる広い部屋。
正方形の広いこの部屋は、中央に大きな円卓がある。
何故此処に…と、ここで疑問が出たが、そこにいた人物達を確認すると、私は眉を寄せた。
「来たか」
厳格そうな風貌で、深く椅子に腰掛けた人物。
それは、父の兄にして現公爵、そして、この国の外務大臣である「ルーナス=リクトル」だった。
先程の陛下との話しの後に、宰相と外務大臣。
どうやら、嫌な予感は的中したらしい。
そして、一番気になった相手。
バカ王太子こと、ルドニーク殿下だった。
後ろに近侍を立たせ、溜息を吐きながら椅子に腰掛けている。
何時もの横暴さは身を潜めてはいたが、「何故自分がここにいるんだ?」と言う様な表情をしていた。
本当に…何でコイツまでいるんだ?
「三人とも、座りなさい」
入り口直ぐに立っていた私達に、陛下から着席を促された。
そして、私達が着席を見ると、陛下は徐にその口を開いた。
その声色はとても低い。
「皆、急に呼び出してすまぬな。皆を呼んだ理由だが……レイナード、話せるか?」
「えぇ。大丈夫です…少しは落ち着きましたので」
……あの父上がここまで冷静を欠くとは。
父は机の上で手を組むと、ゆっくりとした口調で、事の次第を話し始めた。
「……先程、我が家にエルドラント国より使者が来ていると妻より連絡があった。……その内容だが、エルドラント国第二王子と、当家の三女であるバイオレットの正式な婚約の申し出だった。………それは既にエルドラント国にて受理され、後は我が家と王家の返答待ちだそうだ。しかも、バイオレットは今王城にいるらしい」
「なっ…何故そんな事に」
ガタリと音を立て、私はその場に立ち上がった。
意味が分からない!
だって、姉上には既に自国に婚約者がいるのに。
「今、当主であるお母様がその使者と話しています。シルビア、事の重大さが分かりますね?」
父の後に続けて口を開いた姉に、私は無言で頷いた。
私の横にいるエリオット様は、余りのショックからか、拳をキツく握り込んでいる。
「………何故。………バイオレット姉様」
私の中で、何かがスーっと冷めて行く。
これは…国家間の争いに発展しないか?
エルドラント国王は、全て「分かった」上の事なのだろうか。
知らなかった…では済まされないぞ。
だって、姉上の婚約者は…。
視線を陛下へと向けると、含みを込めて頷かれた。
先程、陛下と父とで話した内容が頭を過る。
その時。
「なんとめでたい!弟の婚約とは。では、陛下と宰相殿は、祝いのためにこの席を設けられたのだな」
ルドニーク殿下の発した言葉に、その場にいた全員が静止した。
<………こいつ>
私は、まるでどこかの元男爵令嬢の様な発言に、瞳をスッと細め拳をにぎった。
あぁ…。
相手が王族というのが腹立たしい。
家柄が関係なければ、この場で八つ裂きにしているものを。
父と姉も同意見なのだろう。
先程から二人の殺気がすごい。
そんな中、陛下は耐えきれぬ表情で、ガタリと椅子から立ち上がると、冷め切った視線をルドニーク殿下へと向けながら見下ろした。
「めでたい…ですかな?」
「はい!めでたいではありませんか!弟はかねてよりバイオレット嬢に好意を持っておりました。それが成就したのですから、めでたい以外の何ものでもありません」
「では、ルドニーク殿はご存知か?バイオレットに婚約者がいる事を」
その瞬間、ルドニーク殿下の表情から色が消えた。
「なっ…なんですと!」
そして、次の瞬間とんでもないセリフを吐いた。
「あの女は弟を騙したのか!何と卑しい!婚約者がある身でありながら弟の気を引くとは……宰相殿、どう責任をとられるつもりか!」
余りに幼稚な。
余りに愚かな。
「………陛下、これはどうしますか?」
父が口を開くと同時に、部屋の中が殺気で満ちる。
その中で近侍は気絶寸前になっているが、知った事ではない。
「………エルドラント国王から先に話が来ていてよかったな。そうでなければこの場で拘束しているところだ」
誰を…と、あえて口にしない陛下。
「ルドニーク殿、お教えしよう。バイオレットの婚約者だが」
「そうです!何者ですか、その痴れ者は!」
痴れ者はお前だろ?
「それは、私の「弟」だ」
父とは先程別れたばかりなのに、間髪入れず、今度は姉まで一緒とは。
「シルビア、すまんな火急の用だ。エリオット様、大変申し訳ございませんが、息子と共に陛下の元へご一緒願えますか?」
そう言った父の顔色は、何時も冷静な父らしからぬものだった。
眉間にシワを寄せ、何か、焦りと怒りがごちゃ混ぜになっている様に見える。
<嫌な予感しかしない………それに>
私は、父の隣に立つ姉に向け、チラリと視線を送った。
何で姉上まで城にいるんだ?
この人は極度の面倒くさがり屋で、社交界はもとより、城になぞ滅多に足を運ばないのに。
「お父様だけだと心配だったのよ」
私の考えを読んだのか、姉から声が掛かった。
「我が家の一大事よ……まさか、こんな事になるとは思わなかったわ」
……そう言った姉の表情は、怒りを露わにした時の父にソックリだった。
本当…何があったんだろ。
それからすぐ、私とエリオット様は、父と姉に伴って陛下の元へと到着した。
軍事会議にも使われる広い部屋。
正方形の広いこの部屋は、中央に大きな円卓がある。
何故此処に…と、ここで疑問が出たが、そこにいた人物達を確認すると、私は眉を寄せた。
「来たか」
厳格そうな風貌で、深く椅子に腰掛けた人物。
それは、父の兄にして現公爵、そして、この国の外務大臣である「ルーナス=リクトル」だった。
先程の陛下との話しの後に、宰相と外務大臣。
どうやら、嫌な予感は的中したらしい。
そして、一番気になった相手。
バカ王太子こと、ルドニーク殿下だった。
後ろに近侍を立たせ、溜息を吐きながら椅子に腰掛けている。
何時もの横暴さは身を潜めてはいたが、「何故自分がここにいるんだ?」と言う様な表情をしていた。
本当に…何でコイツまでいるんだ?
「三人とも、座りなさい」
入り口直ぐに立っていた私達に、陛下から着席を促された。
そして、私達が着席を見ると、陛下は徐にその口を開いた。
その声色はとても低い。
「皆、急に呼び出してすまぬな。皆を呼んだ理由だが……レイナード、話せるか?」
「えぇ。大丈夫です…少しは落ち着きましたので」
……あの父上がここまで冷静を欠くとは。
父は机の上で手を組むと、ゆっくりとした口調で、事の次第を話し始めた。
「……先程、我が家にエルドラント国より使者が来ていると妻より連絡があった。……その内容だが、エルドラント国第二王子と、当家の三女であるバイオレットの正式な婚約の申し出だった。………それは既にエルドラント国にて受理され、後は我が家と王家の返答待ちだそうだ。しかも、バイオレットは今王城にいるらしい」
「なっ…何故そんな事に」
ガタリと音を立て、私はその場に立ち上がった。
意味が分からない!
だって、姉上には既に自国に婚約者がいるのに。
「今、当主であるお母様がその使者と話しています。シルビア、事の重大さが分かりますね?」
父の後に続けて口を開いた姉に、私は無言で頷いた。
私の横にいるエリオット様は、余りのショックからか、拳をキツく握り込んでいる。
「………何故。………バイオレット姉様」
私の中で、何かがスーっと冷めて行く。
これは…国家間の争いに発展しないか?
エルドラント国王は、全て「分かった」上の事なのだろうか。
知らなかった…では済まされないぞ。
だって、姉上の婚約者は…。
視線を陛下へと向けると、含みを込めて頷かれた。
先程、陛下と父とで話した内容が頭を過る。
その時。
「なんとめでたい!弟の婚約とは。では、陛下と宰相殿は、祝いのためにこの席を設けられたのだな」
ルドニーク殿下の発した言葉に、その場にいた全員が静止した。
<………こいつ>
私は、まるでどこかの元男爵令嬢の様な発言に、瞳をスッと細め拳をにぎった。
あぁ…。
相手が王族というのが腹立たしい。
家柄が関係なければ、この場で八つ裂きにしているものを。
父と姉も同意見なのだろう。
先程から二人の殺気がすごい。
そんな中、陛下は耐えきれぬ表情で、ガタリと椅子から立ち上がると、冷め切った視線をルドニーク殿下へと向けながら見下ろした。
「めでたい…ですかな?」
「はい!めでたいではありませんか!弟はかねてよりバイオレット嬢に好意を持っておりました。それが成就したのですから、めでたい以外の何ものでもありません」
「では、ルドニーク殿はご存知か?バイオレットに婚約者がいる事を」
その瞬間、ルドニーク殿下の表情から色が消えた。
「なっ…なんですと!」
そして、次の瞬間とんでもないセリフを吐いた。
「あの女は弟を騙したのか!何と卑しい!婚約者がある身でありながら弟の気を引くとは……宰相殿、どう責任をとられるつもりか!」
余りに幼稚な。
余りに愚かな。
「………陛下、これはどうしますか?」
父が口を開くと同時に、部屋の中が殺気で満ちる。
その中で近侍は気絶寸前になっているが、知った事ではない。
「………エルドラント国王から先に話が来ていてよかったな。そうでなければこの場で拘束しているところだ」
誰を…と、あえて口にしない陛下。
「ルドニーク殿、お教えしよう。バイオレットの婚約者だが」
「そうです!何者ですか、その痴れ者は!」
痴れ者はお前だろ?
「それは、私の「弟」だ」
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