侯爵家の清純美少女?いいえ、腹黒ドS大魔王ですが何か?

阿華羽

文字の大きさ
21 / 29

17知らなかったでは済まない

しおりを挟む
 昔話をしよう。

 トーラス国は、花の国と称される程、一年を通して常春な国だ。
 この国の王家は何代も続いており、国自体も大変古い。

 そんな国の「王」の話。

 先代の父王を亡くした時の王は、若くしてその地位を継承した。
 その当時の年齢は、20歳。
 成人して数年しか経たない王だったが、その手腕はとても良く、国営は順調に行われた。

 そんな中、王は兼ねてより婚約していた侯爵家の令嬢と婚姻。そして、めでたく三人の王子をもうけた。
 跡取りにも不十する事なく、順風満帆な日々。

 だが、そんな時……不幸と言うものはやって来るもので。

 王妃は流行病にて、あっという間に空へと上がってしまった。

 その後、塞ぎながらも、王は王子達に一生懸命愛情を注ぎ、国のためにその身を投じた。

 それから二十年の月日が流れ…。

 ある日、視察のために降りた城下にて、王はある娘と出会う。
 その娘は王妃の親類に当たる者で、どこか王妃に似た雰囲気をもつ娘だった。

 その出会いから数年後、二十歳と言う歳の差もあり、色々と問題も起こったが、娘に惚れ込んだ王は、彼女に妻になってほしいと申し出、娘もそれを嬉しそうに了承した。

 ただ一つ、娘から条件はあったが…。

 それは自分を「正妃」ではなく「側妃」にしてほしいと言う事だった。

 前の王妃が亡くなっており、正妃になるのは、何ら問題はなかったのだが、娘は王妃の事を、それは慕っており、正妃なら婚姻は受けないと言った。

 あくまで、この国の王妃は「あの方」なんだと。

 その後、周りからは政略的だなど、余りよい見方をされない事もあったが、二人の仲はとても良く、前妃の子供である三人の王子達も新しい義母にとても懐いた。
 そして、娘が王の妻になり数年後、彼女は子供をもうけた。
 上に王女、その下に三歳下の王子。
 二人とも、王と王妃によく似た、銀の髪に赤い瞳の子供だった。

 その後…。




「その、下の王子が私の「弟」だ」

 昔話を交え、トリ頭の王太子にも分かりやすく説明した陛下。

 この国の人間なら皆知っている事だ。

 しかも…。

「それともう一つ言っておこう。側妃であった義母は、サフィール家の人間だ。つまり、バイオレットは王家と血縁関係なのだよ」

 そう。
 前国王の側妃である「ソフィア」様は、サフィール家の人間。
 私の母の叔母に当たる人だ。

 今は、退位された前国王様と、離宮にて仲良くお過ごしになっている。
 本当に、この場にお二人とウチの母がいない事に感謝してほしい位だ。

 いたら今頃……。
 うん、それはそれで面白いものが見れたかもしれないけど。

「なっ……そんな事は、しっ、知らなっ」

 とたんに、ルドニーク殿下の顔色が悪くなった。

 先程まで騒ぎまくっていたのは何処へやら。
 それはそうだろう。
 これは、この国の王家に喧嘩を売った様なものだ。

 しかも、まだ王にもなっていない、だだの「次期後継者候補」が。

 ウチの国で起こった王太子の廃嫡で分かる様、何かあれば、その地位は簡単に揺らぐ。

 ………それと。

 トリ頭のバカ王太子は気付いているのだろうか。
 殿下の弟がやらかした件もだが……殿下自身もサフィール家に…トーラス王家に喧嘩を売ったという事を。

「まぁ、公表はしておらぬし、弟は学者の道に進み、王家のしがらみからは逃れておるしの。そなたが知らなくても不思議ではないが……ルドニーク殿」

 そして、陛下は広角を上げ、ニヤリと笑った。
 ただ、目だけは怒りに満ち、全く笑っていないのが印象的だ。

「知らなかった…で、済む問題だとお思いか?」

 その瞬間、ルドニーク殿下の後ろで近侍が倒れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...