侯爵家の清純美少女?いいえ、腹黒ドS大魔王ですが何か?

阿華羽

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22一先ず落ち着きました?

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 陛下の護衛に拘束され、部屋を出て行く元正妃と元王子達。

「私は正妃ですよ!お離しなさい無礼者ぉぉぉ!」
「母上!もうお止めください!」

 元正妃の醜い叫び声が、部屋から遠のいてくのが耳に微かに残る中、ゆっくりと扉が閉ざされた。

 やれやれだな……。

「誠、皆には見苦しいものを見せた…すまぬ」

 そんな中、陛下がドカリと椅子に座り直し、深く溜息を吐いた。

「さて、愚か者どももいなくなった事だ……本題に移そうか。……シルビア殿、待たせたな」
「いえ、事前に我が国の国王、並びに宰相に話は聞いておりましたから、問題はございません」
「そう言ってもらえると助かる」

 そう。

 今回、この国に私が来たのには理由がある。

 一つは、トーラス国王からの命。
 今回の件である、トーラス国伯爵家バルシルとエルドラント国の正妃との繋がりと、事の詳細を伝える事。
 そして、もう一つは、サフィール家当主である母からの書簡を届ける事。

 まぁ、仕方ない。

 宰相である父は城を空けられず、外務大臣の叔父は別の仕事が入り自分では来れない。かと言って、内容が内容だけに向かう人物は限られている。

 そして。

 サフィール家当主である母は大変お怒りで、「何故、あの様な痴れ者の国に私が態々出向かなくてはならぬのです!」と、絶対に行かないと断固拒否してしまった。

 で、両方こなせる私にお鉢が回って来たのだ。

「陛下、遅れましたが、サフィール家より正式な回答にございます」

 私は、陛下の前に母から預かった書簡を差し出した。

「内容は、今回そちらのご要求にありました、サフィール家三女バイオレットと第二王子殿下との婚約について、お断りのむねが記されております……ご確認をお願い出来ますでしょうか?」

 今回、元正妃により承諾された姉の婚約は、エルドラント国にて正式なものとなっている。
 そのため、それを断るためには、此方も正式な書簡をしたためる必要があったのだ。

「うむ、確認しよう」

 陛下は、私から書簡を受け取ると、封蝋を切り、内容を確認し、そのまま宰相に手渡した。

「確認した。では、此方から破棄に関する書類を作成し、サフィール家へとお渡しする。シルビア殿、此れをご当主に渡してもらえるか?」

 そして、代わりに破棄の書類を宰相から受け取り、それにサインと印鑑を押すと、私に見せた。

「内容に間違いはないな?」
「はい、有り難うございます」

 これでひと段落だな。




 本当………今回は、面倒だった。

 城に上がると同時に、トーラス国王と宰相である父に呼び出しをくらい、今回のお家騒動の話をされた。

 まさか、自国の伯爵が隣国の正妃と通じているなんて……。
 聞いた瞬間、頭が痛くなった。

 で、何で私なぞにその話をしたのか…。
 それは、将来エリオット様がつく王位の足場固めと、人脈作り。

 内容の中に、正妃を処罰並びに、王子二人を王家から出した後、現側妃ミランダ様を正式に正妃とし、娘であるエマリア様を次期国王にすると言う事柄があったのだ。

 つまり、同盟国であるエルドラントの次期国王と繋がりを作っておけ………と。

 まぁ、私が代理としてパイプ役になり、エルドラント国に恩を売っておくのも良いのではないか?と言う、陛下と父の考えもあった様だが。

 そして、そんな中で追加された、姉の婚約騒動だ。

 姉を欲する第二王子と、サフィール家を欲する正妃の間で利害の一致があったのだろう。

 本当…嫌になる。

 で、私は陛下の命により、急遽エルドラント国へと発つ事になった。

 それから何と慌ただしかった事か。

 まず、急ぎ家に戻り、母に書簡の用意を頼み、その間に姉の婚約者である王弟ダリス様を呼びに、学園内の研究施設に向かい、書簡を受け取りに帰り、間髪入れずに城に戻った。

 そして、憔悴したバカ王太子……もぅ、「元」だが、彼に「時の門」を開かせ、エルドラント国に到着。

 ざっとこんな感じだったが、正直疲れた。



「シルビア、今回は有り難う」

 私が、エルドラント国王より預かった書類を仕舞うと、珍しく姉から感謝された。

「家族だから当たり前ですよ?……それに……ねぇ?」
「まぁ、そうよね?このまま放置してたら……ふふ」
「面白いものが見れなくて残念でしたか?」
「あら?人聞きが悪い。……まぁ、でも貴方にとっては良かったんじゃなくて?ちゃんと解決しておけば、将来「楽」でしょ?色々と…うふふ」
「まあ、否定はしませんが」

 やはり、血は争えないなぁ。
 あ、周囲の視線が痛い。

「誠、其方ら姉弟は……将来恐ろしいのぉ」
「エマリア、ある意味力強いから…頑張りなさい」
「お母様………はい」

 真っ黒ダダ漏れな私達姉弟。
 エルドラント国の皆様は、顔を引きつらせていた。

 だがそんな中、平然とする人間が一人。

「ははは。相変わらず仲良しさんだね、君たちは……まぁ、役に立つものは使わないと損だから仕方ないね」

 やはり、王弟殿下は「アノ」国王の弟だなぁ…と思った。
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