侯爵家の清純美少女?いいえ、腹黒ドS大魔王ですが何か?

阿華羽

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「だいたい……「も」って…姉上」
「あら?認識してあげた分、有り難く思いなさい?」

 私の呆れ顔に返って来たのは、なんとも姉らしいセリフだった。

 うん、やっぱり血は争えないね…。

 久方ぶりに会った実弟に対する言い方ですか?
 しかも、私を無視して、殿下と無駄に長く見つめ合ってるし。

 まったく、お花畑は後にしてほしい。

 姉が、王弟殿下であるダリス様の事を、どれだけ好いているかは、よく知っている分、致し方ないとは思うけど……。
 こっちだって、エリオット様置いてわざわざ来てるのに……はぁ。

 そんな中。

「あなた、こちらの方々は、どなたですの?それに、トーラス国にいるはずの息子が、何故此処にいるのです?」

 持っていた扇子で口を隠し、怪訝そうな表情を向けてくる正妃様。

「そうだぞ、何故兄上と一緒にいる!……そうか、は兄上の恋人ですね!男は近侍ですか?わざわざ、私の祝いと重ねて紹介するために帰国したのですね?」

 …………おい!
 花畑は姉上達だけで結構だ!
 何だ、このノー味噌兄弟は!

 まったくもって斜め上な問いに、言った本人と、その母親以外の表情が、各々もの凄いものになった。

 姉はその性格からか、毒を漏らしまくりな顔をし、横のダリス様は可哀想なものを見る目になっている。
 そして、エルドラント国王と、宰相閣下は下賤なものを見るような表情だった。

 あ、因みに、側妃母娘様は、状況についていけてないみたい。

「お前達は……。そこまでして、我が国の恥をさらしたいのか?まったく、嘆かわしい」

 この状況に、腹を立てない方がおかしい。
 陛下から重たい声が出た。

「此方は、トーラス国の王弟である、ダリス殿と、宰相殿の子息で、バイオレット嬢の弟であるシルビア殿だ。後……ルドニークがここにいる理由だが、「時の門」を使用するためと………このバカを強制帰国させたからだ」

「なっ、何ですと!弟?…男なんですか!」
「あなた!ご自分の息子……しかも、王太子であるルドニークにバカとは!」

 正妃様と第二王子の驚くトコ…そこなんだ。

 しかも、第二王子は、私が男と分かるや、ジロジロと此方を見始める始末。

「バイオレット嬢の弟君は………へっ、変態趣味がおありか?」

 しかも、超失礼な質問された。

 あ、因みにに、「時の門」とは、各国の城にある転移用の魔法陣の事だ。
 で、その門を使用するには、行き先の国の王族が必要になる。
 使い勝手がいいんだか悪いんだか…まぁ、防犯上の仕様なため仕方ない。
 で、今回門が使えない私は、行きはルドニーク殿下、帰りはダリス様と言う「鍵」を使う事になった。
 まぁ、ルドニーク殿下はそのまま置いて帰国するがな…。

「変態……ですか?」

 このセリフ…今年に入って何回聞いたかなぁ。

 満面の笑みで、毒々しいものをダダ漏らす。
 そんな私に、第二王子はビクリと肩を震わせた。

 次の瞬間。

「いい加減にせんか!」

 陛下からの雷が落ちた。

「誠、そちらは揃いも揃って…嘆かわしい。宰相、書類をこれに!」

 陛下がそう言うと、横にいた宰相が、数枚の書類を取り出し、丁寧に陛下の前へと置いた。
 そして、陛下はそれを取ると、よく通る声で口を開いた。

「今回、ワシはトーラス国王と宰相であるサフィール殿に協力をあおいだ。まず一つは正妃マーリア、お前の不正、そして、トーラス国へのスパイ活動だな。後は……ワシへの暗殺」

「あなた!何を言っているの!」

「黙れ!後一つは、王太子ルドニークと、第二王子カイルは、ワシの子ではないな?」

 スッと瞳を細め、真っ直ぐに正妃様を見る陛下。
 それに対し、正妃様は顔色を失っていく。

「なっ、何を…なぜ私がその様な事を…しかも、息子達があなたの子でないなど」

「証拠なら上がっておるぞ?お前の相手である、トーラス国伯爵、バルシルが全て吐いたからな。子供らの父はあやつ。そして、あやつに頼まれ、我が国の情報を漏えいと、同じく、息子に王位を継がせ傀儡とするためにワシの暗殺を目論んでいたであろう?」

 冷めた瞳で正妃様を見る陛下。
 そして、その手にある書類をバサリと正妃様の前に落とした。

「子供らとワシの血が繋がっておらぬのは、魔法検査で確認済みだ。言い逃れはできんぞ!」

 キッパリと言い放った陛下。
 それに対し、正妃様は書類をグシャリと鷲掴みすると、ワナワナと震えていた。

「何故です、私は正妃です!……何かの間違いよ!こんな事許されないわ!一方的すぎますわ!」

 どうやら往生際が悪いらしい。

「まさか……私が父上の子では…な…い?」
「有り得ない!母上が父上を裏切るなど!」

 王子二人に関しては、認めたくはないだろう。
 母親の不正。
 しかも、自分達は「王子」ではなかったのだから。

 そんな中、もう相手をするつもりも無いと、三人をマル無視した陛下は、別の書類を宰相から受け取っていた。

 そして、その書類を読み上げる。

「正妃の不正を踏まえ、王太子ルドニーク、並びに第二王子カイルは、その地位を剥奪。……まぁ、子には罪はない故、母親の生家であるアイゼン侯爵家に引き取らす事になった。……そして、正妃マーリア!貴様はその地位を剥奪後、斬首刑に処せる!」

 どうする事も出来ない息子二人は、動揺をしつ、無言で頷いた。

 まぁ、従う道しかない二人は、了承する他ないんだけどね。
 一方、元正妃はと言うと。

「そ……そんな!陛下、お許し下さい!斬首刑だけは!国外追放でも構いません、どうかどうか!イヤァァァァア!」

 涙と鼻水を垂らし、陛下の足元にすがる様にへばり付いていた。

 やれやれ。
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