侯爵家の清純美少女?いいえ、腹黒ドS大魔王ですが何か?

阿華羽

文字の大きさ
24 / 29

20聞き分けなさいよ! ーバイオレットー

しおりを挟む
 全く持って気分が悪いわ。

 先程、突撃して来たカイル殿下に、半ば無理やり部屋から連れ出された。
 そして、何度か城内の廊下を曲がり、目的の部屋にたどり着いたのが今だ。

 しかも、私達の後ろには側妃母娘が一緒。
 まぁ、理由は、殿下が「どうせなら一緒に行きましょう!義母子おやこですから!」と、引っ張って来たのが原因だ。

 そう言えば…さっき、ミランダ妃は自国の王と、トーラス国王が何やら得策してる様な話をしてたわね……。
 しかも、その事実をミランダ妃が何故知っているのか。

 あらあら?

 ふふっ……この状態って、もしかしたら「面白い」かもしれないわね。

「父上、失礼します」

 ふと「ある考え」が頭を過ぎる中、部屋の扉が侍従により開けられ、中へと促された。

 部屋の広さはそこそこあり、真ん中に豪奢な長机と、並べられた椅子がある。
 そして、奥に扉があるのを見るに、二間続きの部屋なのだろう。
 中では上座に国王陛下が座り、その近くに正妃様と宰相らしき人物がいた。

「失礼致します」

 理由はどうあれ、国王の御前。
 私は優雅に腰を折り、淑女の礼をとった。

 そして、そのまま着席を促され、私達は席に着いた。
 勿論、殿下は私の隣をガッチリキープしている。
 その様子に、正妃様は嬉しそうだ。

<………ウザいったらないわね>

 そんな中、最初に口を開いたのは、国王陛下だった。

「うむ、バイオレット嬢、此度の事、ここにいる我が正妃に報告は受けた……。して、君は「どうしたら良い」と思うかね?ここには「皆が揃っている」。君の意見を聞きたくてね?」

<………ふふっ、あらやだ>

 私は思わず笑みを漏らした。
 その笑みは、きっと父譲りのもの。
 きっと、とてもな笑みなんでしょうね?
 現にこの部屋にいる皆の顔が微かに赤らんでいるもの。

 ただ一人を除いては…だけど。

 その人物………国王陛下は、私の笑みに、逆に「ニヤリ」と不適な微笑みを返してきた。

 あらあら。
 此方の陛下、トーラス国王に負けず劣らずね。
 ふふっ。そうね……まず、初めにキッチリ言っておかないと…ね?

「……え?」

 そんな中、正妃様が「何か」悟ったのだろう。
 陛下と私を交互に見ると、若干焦った表情になった。

 まぁ、知った事じゃないわね。

「失礼ながら陛下、発言を宜しいですか?」
「ああ、「」言いなさい」

 私がにこやかに問うと、陛下は快く了承してくれた。

 うん、言質はとった。

 ……では。

「大変申し訳ないのですが、今回の殿下からの婚約のお申し出、お受けする訳にはまいりません!」

 えぇ、キッパリ言ってのけましたよ?

 その瞬間、カイル殿下がガタリと椅子から立ち上がった。
 正妃様など、顔を真っ赤にし、怒りを露わにしている。

「なっ、何を言っているんだ!バイオレット嬢、君は私が好きなんだろ?今まで国や身分を気にして素直になれなかっただけだろ?心配しなくても、正妃である母から了承は得ている!自分の気持ちを隠す事はないのだぞ!」

「そっ…そうよ。まったく、皆を困らせないでちょうだい?貴女が息子を好いているのは知っているのよ?」

 あら?息子が馬鹿なのは置いといても、正妃様はやはり私の気持ちを知ってたのね?
 無理やり感が出てるわ。

 思わず、失礼ながら溜息が出た。

「まったく、呆れましたわ。何度も申し上げてましたでしょ?私は殿下を好いてはおりません!」
「なっ、何だと!」
「いい加減にしてくださいませ!」
「バイオレット嬢!素直になれ!」
「何度も言いましたでしょ?私には好いた方がおりますと!」
「それは私だろ!」

 話が通じない!

 陛下と側妃様母娘は既に呆れ顔じゃない!

 あーーーーーもぉ!

「殿下の頭は、綿か藁でも詰まっておいでですか?それに、私の意見も聞かず、何を勝手に婚約など!それと、それを勝手に了承した正妃様も、息子可愛さか、我が家の名前目当てか存じませんが、大迷惑ですわ!」

 今日一の大声で言い放ってやった。

 そう。

 殿下にはキッパリ断るために。
 正妃様には「意味」を込めて。
 そして、陛下が「動きやすい様」に。

「ふっ、ははははは!」

 その瞬間、陛下から大きな笑いが起こった。

「ふふっ……誠、其方は面白い。流石は「あの男」の娘よの?息子も大概とは聞いてはいたが、まさか娘までとは。……そちら姉弟は皆その様な性格をしておるのか?……ぶふっ!」

 あら?
 どうやら陛下の琴線に触れたらしい。
 どこで共感したのかしら?

「のぉ?宰相」
「ふふっ……はい。誠に」

 何だか宰相閣下まで共感してるわ。
 まぁ、否定はしないけど…。

 そして、一頻り笑った陛下は、若干涙目になりながら、私に笑みを向けた。
 隣の正妃様は怯えた表情になっている。

「聡いそちの事だ、此度の事の真相に気付いたようだな…。だが、まずワシから其方に謝らなくてはな。バイオレット嬢、今回の件、誠、手を煩わせた。此れらを放置したワシにも原因はある。すまなかった」

<王が易々と頭を下げるなんて…>

 本来ならばあってはならない事に、宰相閣下の表情も冴えない。
 まぁ、自国の王が他国の人間に頭を下げたのだから当たり前ね。

 私は、苦笑すると、陛下に深く頭を下げ、笑顔を向けた。

「いいえ、確かに手を煩わしましたが、これで陛下の憂いは晴れますでしよ?」

 私のその様子に、陛下も笑顔を返す。

「すまぬ。そう言って貰えると助かる」
「…それに」
「……ん?」

 思わず、黒い笑みになる私。

「将来、王位に着くエリオット様の憂いも晴れ、同時に夫となる弟の憂いも晴れますしね?」

 そう、全ては自分達のためですもの。
 そんな私に、陛下は困った様に溜息をついた。だか、どこか楽しそうだ。

「まったく…正妃も息子共も、嫌な家に手を出したものだ…。そう思わぬか?」

 そして、首を奥の扉へと向ける。

「待たせてすまぬな、入られよ」

 そして扉が開き、入って来た人物達に、陛下と宰相以外の全員が驚く事となった。

 奥の部屋から出て来た人物。

 それは。

「ダリス様、シルビアも!」
「あ、兄上!」
「ルドニーク!」

 そこにいたのは、私の婚約者にして、王弟殿下である「ダリス=トーラス」様とウチの弟だった。
 おまけで、この国の王太子までいる。

 我が家と同じ特徴である、サイドに流した長い銀の髪に大きな赤い瞳の美丈夫。
 私の愛しの方。

「バイオレット、久しぶりだね?」

 手紙でのやり取りはしていたが、やはり直接会うのとは違う。
 留学を決めたのが自分とは言え、やはり寂しかった事に変わりはない。

「姉上、ダリス様。見つめ合うのも結構ですが、話を進めませんか?」

 そんな中、弟から呆れた声が掛かった。

 あら、忘れてたわ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...