彼を取り戻すためにすべてを捧げ…なくても別に良い気がしてきた闇落ち令嬢は、美食家の悪魔と契約をする

hosiiimo

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レイン、召喚に挑む。

レインが、召喚を望む理由①

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繰り出された蹄の一撃は、レインの脳を揺らした。
額に触れるだけでも十分な効果を発揮できるのだが…、『ベソベソ泣いている奴』を見ると蹴りたくなるのだ。

打撃によって、レインはするすると語りだした。

感情が高ぶって涙が止まらなかったのに、しゃくりあげることもなく言葉が出てくる。
いつもは口下手なレインの舌も、滑らかに回りだした。


◇◇◇◇◇◇


レインが5歳の時にかなり大規模なスタンピードが起こり、後方支援で参加していた両親が亡くなった。

当時のレインは、両親の出陣に伴い交流のあったサンダース辺境伯家に預けられていたのだが、伯の弟やその他の一族までも巻き込まれ辺境伯領全体が大混乱になったので、父の弟の家に移ることになった。そしてそこで激しい虐待にあったのだ。

8歳の時に再び辺境伯家に戻ってこられたが、負わされた傷はかなり深かった。

人とまともに接することのできなくなったレインは再会した一家とも、上手く馴染めなかった。前辺境伯の爺様と婆様の2人だけはどうにか対応できたので、供に別宅で暮らすこととなった。

そして大人しく、小柄で控えめだった当時のクラウドも、恐怖心を抱かずに済む存在だった。

週に一度程度辺境伯家にやって来ていた彼は、機嫌を取るように話しかけたり、どこかへ遊びに誘ったり、というような『お世話』はしなかった。ただ静かに寄り添ってくれた。

彼のお陰で、レインは少しずつ落ち着きを取り戻せ、サンダース一家とも再び自然に接することができるようになった。

そして記憶が朧気になってきていた父の話を小父様聞いて、独学で魔術の研究を始めた。
同じく薬師だった母の話を先輩薬師の婆様から聞いて、お手伝いがてら薬学の勉強も始めた。
そうやって、少しずつ歩みだしたレインの再始動を、みんなは応援してくれたのだ。


◇◇◇◇


けれど10歳になった時、師匠の婆様が体を壊してしまった。コーラル夫人と必死で看護をし、滋養のつく薬を作ったりもしたのだが…、結局助けられなかった。

役に立てず、悔しくて、情けなくて、閉じこもったレインに、クラウドはまた静かに寄り添ってくれた。

悲しみも冷めないうちに、一家は水害の影響で困窮を極める領地の立て直しに、駆け回ることとなった。

2つ上の双子たちは、少しでも領地のため動けるようにと、中等科は地元の学校へ進んだ。

レインも当然同じ学校に進学するつもりでいたのだが、今後のためにと王都の学校への進学を勧められた。王都には両親の遺した屋敷もあるし、将来のためにも勉強に専念するべきだと強く説得され、やむなく12歳で王都にきたのだ。クラウドと供に。

地元から離れようと、レインは少しでも辺境伯領の役に立ちたかった。
だから一生懸命勉強して、様々な作品を開発した。…けれど悪い大人に騙されてしまったのだ。


そんな時、一緒に王都に来たクラウドは、サニーという新しい女友達と楽しそうに過ごしていた。

彼にも相談したかったのだが…、二人はいつでも一緒で、その間には、入りこめないような空気を感じる。

彼はすっかり都会に馴染み、垢ぬけていた。

知っていたはずの幼馴染は…、いつのまにか、レインからは遠い人に、なっていた。

領地のことも考えずに浮かれるその様子に、じれったさも感じるが、何もできてないのは一緒だ。
ならば、今を充実させている彼の方がずっと賢いのでは…。

(中等科の一年生が気をもんでも仕方がない。むしろ今は学業を頑張るべきだってことは、分かっている。分かっているけど、どうにかせずにはいられないんだ)

そうやって、じりじりしていたレインの思いは、やがて2人を絶対に許せないと思うほどまでに膨れ上がった。
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