彼を取り戻すためにすべてを捧げ…なくても別に良い気がしてきた闇落ち令嬢は、美食家の悪魔と契約をする

hosiiimo

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レイン、召喚に挑む。

レインは、雑召喚で悪魔を呼ぶ

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空腹に気が付いたレインは、久々にキッチンに向かい、パンケーキを焼いた。

ひたすらに、圧倒されたひと時だった。不思議と、言い逃げのような、予言への怒りも悲しみも、急に来て逝ってしまったことへの寂しさも湧いてこない。

クダンとは、予言を遺して逝く、そういう生き物らしい。

そういう定めだったのだと、すんなり飲み込めた。

いろいろあったけど、この、とした前向きな気持ちをくれたのだ。

もう亡くなってしまった彼女に、告げられなかった『ありがとう』の気持ちを込めてノートは大切にしよう。

レインはこれからを生きなければいけないのだ。

予言によると不吉なことがたくさん待っているのだから、負けてはいられない。

パンケーキは婆様が良く作ってくれたものだ。暖炉の上に乗せたフライパンで、みんなで作ったこともあった。クラウドともよく食べたおやつだった。

彼をここに呼ぶことはないだろう。クダンは召喚と言っていたが、彼に何を捧げても、きっともう駄目なのだ。少し寂しいけど、仕方がない。なぜだかと諦めがついた。

垢ぬけて『特別』な女友達ができた彼の姿に、取り残されたような気がしたのだ。

だってレインにとって彼は『特別』だったから。でも彼にとっては、レインはそう、じゃなかった。

それだけだ。拘っても仕方がないことには、もう執着しないのだ。

とりあえず、予言の書をよく読んで、悪い未来を避けるのだ。

辺境伯一家とも、もっと話そう。
そして新しいこと、楽しいことして、友達を作って…、友達……どうやって作ろう…。

レインは詐欺に合ったばかりなのだ。

(物やお金や権利を取ったりしない…、いい人と出会えたらいいな……。そういう素敵な人が…、わたしと友達になって…、くれるかな……。)

「新しいこと…、新しい出会い……、あはは、誰かわたしと友達になって。あはは!!!」

なんとなく乳製品が欲しくて、ミルクコーヒーを入れた。

エネルギードリンクは切れてしまったが、ブレイク時にカフェイン補給は、欠かせない。

焼きたてのパンケーキには苺ゲルを落として、生クリーム…は無かったので練乳を選んだ。

「オトモダチぃと~♬一緒にぃ……♪おいしいぃパンケーキを食べるのよぉ…♪あはは!!!」

スッキリしたせいで、頭の中がハッピーになっていた。

歌うように独り言を言い、踊るように練乳を絞る。

婆様は、よく即興で歌っていた。

レインにとって一番友達が多い存在は、いつでもどこでも(健康の話題で)井戸端会議を繰り広げられるわが師、婆様なのだ。おやつを作ってくれた時も、出来上がるまでの間にこうして歌っていた。


ちなみに、レインの音程は激しく外れている。



◇◇◇◇◇◇



「練乳掛けっていいよね。僕も練乳派。分かってるねぇ」

「え?」

「はじめまして、おいしそうな匂いに誘われてきたよ」

いつのまにか正面のテーブルに、銀灰色の髪をした色白の美青年が座っていた。


「あ、あ、あ、あなたどなた?

「こんにちは、僕は悪魔だよ」

「は?」

レインは知らなかった。

苺ゲルは高性能な「下敷き」の機能を持っていたのだ。

『下敷き』とは、正しくは、召喚時に召喚対象を呼び込むための、喚《よ》び水の役目を果たすものであり、その役割さえ果たせれば、形状も配置も特に不問なのだ。

あるに対して、その『下敷き』はこの『界』では通常ありえない程の、強力な効力を発揮した。

パンケーキは紙、練乳は墨を入れた筆と認識され、その相乗効果により、奇跡はなされた。

いつのまにか手元のパンケーキに塗りたくられた練乳は、勝手に『陣』を刻んでいたのだ。


あまりにおいしそうにできたから、ピカピカ煌めいて見えるのだと思っていたレインは、全く気付いていなかったが、いつのまにか召喚をしていた。

こだわりの筆も墨も紙も下敷きも使ってないのに。パンケーキで、来ちゃったのか?まさか、そのまさかである…。わざわざレインの友達になるために『召喚対象』が来るなんて。

そしてそんな雑召喚でやってきたのは、チンピラ三下悪魔より、はるかに質の悪い存在だった。
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