彼を取り戻すためにすべてを捧げ…なくても別に良い気がしてきた闇落ち令嬢は、美食家の悪魔と契約をする

hosiiimo

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レイン、悪魔と学校に行く。

レインと悪魔は、買い食いをする①

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レインたちの住む屋敷は中心部から外れた所にあるため、通学にはやや不便だ。学園には、辻馬車を2本も乗り継がなくてはいけないし、停留所まで距離もある。

そのため本日の登校では、ベルに乗って『飛んで』きた。瞬間移動よりも、こうしてなるべく運動をする方が健康にも良いらしい。

美食家があんまりにも嘆くので、帰りの足が心配になってきたレインは、機嫌を取ることにした。

せっかく寮を出て門限を気にしない生活になれたのだ。憧れの『放課後の寄り道』へ誘ってみると、ベルはすぐに食いついた。寄り道の内容は、街歩きをしてからの、アイスの買い食いだ。

お腹がいっぱいなのに、まだ食べるのか…。レインはちょっとゲンナリした。


◇◇◇◇


適度に街を散策して、ようやく小腹が空いたところでベルに案内されて、アイスクリームの食べられる店へと足を運ぶこととなった。

高級感のある白い外観の店舗の中に入ると、色とりどりのアイスクリームがショーケースに並んでいるのが目に飛び込んできた。鮮やかな発色の麗しい絹地のようなアイスクリームと、宝石で作られたボタンのような艶やかなボンボンが並んでいる様子は、上位貴族向けの服の仕立て屋のようでもある。

(すごい!!王都のアイスクリーム屋ってこんななのか?なんてキラキラした世界なんだ。)

ダブルのアイスを2人で分け合って、4つの味をいっぺんに食べれるなんて、なんという贅沢だ!!
大発見である。

辺境には、顔なじみのおばばのやっているバニラとチョコと木苺の3つがある店しかなかった。いつもじゃんけんで勝った順で双子と被らないようにと選んでいた。

栗・芋・南瓜の三種は秋祭りだけの特別だ。

なのに、都会には味が常時10個以上あるのだ!これでは一回では食べきれないではないか。なんということだ、けしからん。


何の味を選ぶか、これは非常に悩ましい問題だ。

ベルがいれば全制覇して一口ずつ楽しむと言う手も可能ではあるのだが、それでは味を覚えきれまい。何よりこの感動も有難みも消え失せてしまうではないか!!

ベルは食に関するお金に糸目はつけないようだが、レインまで釣られて贅沢に慣れてはいけない。アイスクリームの洪水に吞まれ、欲望に溺れてはならない。

困難な選択を…、切り捨てる覚悟を…、大人として決断を……、求められている時なのだ!!

悩んだ末に、無理に全制覇せず、次回の楽しみに取っておくことを、レインは決意した。

(そう、ここは堅実に、ダブルという、新たなる第一歩を選ぶべき時だ。王都の住人にとっては普通のことなのかもしれないが、わたしとベルくんにとっては偉大なる一歩なのだ!!)

ちなみに北の辺境は隣国からの侵攻に備えて土地を守ると言うより、だだっ広いわりに、モンスターと雪ばっかりの土地である。そのような過酷な風土から、天然の要塞とも呼ばれているのだが…。南は隣国との交易、西は異民族が多く住む土地、東は船での貿易が盛んでと、領土を維持するための警戒こそ怠れないものの、それぞれ特色のある豊かな土地である。

北部出身のレインは、あまりにも貴族らしからぬ生活を送って来ていたので…、実は王都の平民の方がよっぽど豊かな食生活だったりもする……。



厳正なる審査の結果、ピスターシュ、ラムレーズン、フランボワーズ、アールグレイ、という耳新しい4つの味を、選択した。

ラムレーズンというのは、レーズンは知っていたが、お酒が入っているもののようだ。干しブドウを戻したグニグニした触感がアクセントになっている上、とても良い香りがする。ベースのアイスも濃厚でまろやかな味わいだ。お酒は飲んだことはないが、こんなにもおいしいとは知らなかった。

ピスターシュと言うのは、どうやらソラマメの仲間のようだ。メロンのような黄緑色をしていたので、てっきり果物の一種かと思ったのが、豆っぽいクリーミーなコクのある味だ。これはこれでおいしくて癖になる。他の味と比べて甘さが控えめなのも良い。

アールグレイは薄茶色で、焼きリンゴのような味かと思って頼んだのが、まさかの紅茶風味に驚かされた。紅茶をアイスにするなんてびっくりだ。クッキーに茶殻を混ぜたのなら食べたこともあったが、段違いだ。滑らかで爽やか。なんという繊細な甘さだろうか。飽きのこない程よくもさっぱりとした味わいがする。

フランボワーズは、果物だった。とても甘くて酸っぱい。香りだけでなく果物の触感もしてすごく良い。知っているようで知らない不思議な味。きっとマンゴーのような、どこかの南国の貴重な果物に違いないとベルに聞いたら、木苺のことでちょっとガッカリした。

いつもゲルにしているお馴染みの奴ではないか。これは辺境にもある。

なのに、どうしてこんなにも木苺がおいしいのだろう。これがパティシエの技という奴なのだろうか……。


さすがは、王都のアイス屋だ。見事なものだ。オシャレなだけでなく、味も香りも食感も桁違いだ。暑い時に食べる甘いものと思っていたアイスが、贅沢で特別なデザートへと生まれ変わっている。これならば一年中食べたい。

アイスを乗せているコーンまでもが、辺境のへにゅとしたモナカとは違っている。ワッフルをサックサクに焼いたものでカリッカリの食感で香ばしい。

レインは都会の味覚に感動に覚えながら、ベルとアイスを分け合った。

アイスは分け合って食べるものなので、『あーん』もされたし、レインも『あーん』返しをした。

喜びのあまり、顔中にアイスをつけていたようで、鼻や頬を拭われたり、舐められたりしたので、次からは上品に頂くことにしよう。

にっこにこのベルに釣られるまでもなく、ほっぺたが落ちそうなほど、おいしくて至福のひと時だった。
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