運命の番を殺した英雄

XCX

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31. ひとつに

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 ついにこの日がやって来た。ずっと…十数年も待ち望んでいた日。
 その日は目が覚めた時から何となく体にだるさを感じていた。あまりにいろんなことが起こったから、気が抜けた反動で風邪でも引いたのかと思った。
 僕を抱きしめるシグルドから、いつもより匂いが濃いことと体の熱さを指摘されて、ヒートがようやく来たことに気がついた。自覚すると呼吸が乱れて、どんどん体の芯が熱を持っていく。
 僕のヒートを知ったシグルドは真っ直ぐドアに向かって、鍵をかけた。しかも、手近にあった飾り棚をバリケードのように設置して。これで誰にも邪魔されない、なんて冗談まじりで。

「…ユテ、噛んでもいいか?本当はヤッてる最中、快感で痛みを紛らわせて噛むのが普通なんだろうが……もう一秒たりとも待てねえ。ユテと正式な番になって、ユテはもう俺だけのものなんだって、安心してえ」

 長い指がネックガードの留め金にかかる。僕の顔を覗きこむ青い瞳は熱っぽく、表情には焦燥が見て取れた。申し訳なさのにじむ余裕のない態度に、胸がきゅうと高鳴る。
 願ってもない申し出。だって、僕も同じ気持ちだから。
 痛くてもいい。痛いことは嫌いだけど、シグルドがくれるものなら話は別だ。それにこれは意味のあるもの。シグルドとお互いの唯一になれる行為。僕だってもう、これ以上待ちきれない。
 僕は自らネックガードを外して、シグルドに背を向けてた。

「うん…噛んで。痛くしてもいいから、僕をシグの番にしてください」
「……わかった」

 低く静かな返事が聞こえて、僕は頭を下げて首を差し出した。シグルドが距離を詰めてくるのが衣擦れの音で分かる。うなじにかかるシグルドの吐息。
 待ちに待った待望の瞬間に、心臓が早鐘を打つ。胸から飛び出してしまいそうな勢い。
 シグルドが後ろから手を繋いで、うなじに優しく口づけを落としてくれる。緊張で無意識に体が強張っているのに気づいたのかもしれない。
 僕の些細な変化に気づいて、さりげない気遣いをしてくれるところも大好き。大切に思ってくれているのが伝わってくる。
 ──シグルドが僕の運命の番で良かった。

「……んっ…!」

 うなじに鋭利な感覚を覚えたと思ったら、鋭い痛みが走った。思わず肩をすくめる。
 噛まれた部分がたまらなく熱くなって、頭のてっぺんから足の爪先にまで電気のようなものが駆け巡る。
 首の後ろを触れば出血はないけれど、ところどころ皮膚が窪んだ部分があって、きちんと歯形がついているようだった。
 シグルドを振り返ると、力強く抱きしめられた。

「僕達……これで本当の番になれた、んだよね…?」
「ああ。もう誰も俺らの仲を引き裂くことはできねえ」

 優しい手つきでベッドに押し倒される。言葉の合間に唇を啄まれるのが、すごく気持ちいい。

「僕のフェロモン…もうシグにしか効かないんだよね…?シグ以外のアルファに噛まれるかも、って怯えなくて、いいんだよね…?」
「そう、もう俺だけのものだ。ユテのフェロモンに惑わされるのは俺一人だけ」

 色々な思いや感情が涙になってあふれて、何度も同じことを確認してしまう。
 それをシグルドは嫌な顔ひとつせずに、甘くて柔らかい声音で囁きながら、指で涙を拭ってくれる。

「ん…っ」

 シグルドが覆いかぶさって、口づけが深いものへと変わる。口を開けて、番の舌を嬉々として受け入れる。

「ぁ、ふぅ…ん…」

 熱い舌に絡め取られる。吸って、甘噛みして、舐め回されて──シグルドの舌技に鼻から甘い息が漏れる。
 気持ちいい。数えきれないくらい口づけを交わしたのに、それとは比べ物にならない。番になれたシグルドとのキスはこんなにも格別なんだ。
 目の前のアルファの舌に吸いつきながら、ぎゅうときつく抱きしめる。

「ぅ、ン…は、ぁう…」

 息継ぎのために唇が離れても、すぐにまた塞がれる。喉の渇きを互いの体液で癒すように、舌を啜り合う。大きな手が僕の体をまさぐって、服を脱がしていく。
 シグルドの手、熱い…。それとも僕の体が熱いのかな…?

「んンっ…!ん、うぅ……っ」

 シグルドの指先が乳首に触れる。指で捏ねられると、すぐにピンと硬くなっていく。更に弄りやすくなったそれを、摘まれたり弾かれたり、優しく愛撫される。
 ヒート状態では些細な刺激すら全て快感に置き換えられて、口から出る声はシグルドに口づけごと絡め取られてしまう。

「…ゃ、…シグ…っ」
「分かってる、離れねえよ。服脱ぐだけだ。肌、合わせてえだろ」

 シグルドが体を起こそうとするのが分かって、自分でも何故だか分からないくらい深い悲しみに見舞われた。一瞬たりとも離れて欲しくなくて腕に力をこめる。自分でも面倒くさい反応をしてると思う。だけどシグルドは僕の言いたいことが分かってるみたいで、蕩けるような笑みで応えてくれた。
 あやすように甘く唇を何度も啄まれるのが気持ちいい。素肌で抱き合いたいのは僕も同じで、全身からふっと力が抜けていく。
 互いに一糸纏わぬ姿になって、直にシグルドの温もりに包まれる。

「ユテのチンコ舐めてえな」
「っあ……」

 大きな手が僕の下半身を弄って、勃ちあがった陰茎を緩く扱かれる。僕を見下ろしながら舌なめずりするシグルドに、腰がずくりと疼く。
 熱のこもった目。まるで獲物を目の前にした肉食獣みたいな、少し怖さを持った眼差し。だけど僕しか眼中にないような、その目がたまらなく好き。
 僕の全部を差し出したくなるし、余さず食べて欲しいって気持ちになる。

「うれし、けど…今は、だめ…」
「駄目?なんで?めちゃくちゃ気持ち良くしてやるぞ。約束する」

 僕のペニスを尚も扱きながら食い下がるシグルドに、頭を横に振る。頑なに拒否する僕に、目の前のアルファの眉が困ったように下がった。なんで断られるのかわからず、困惑してるのが伝わってくる。
 そんな彼の唇をかぷっと甘噛みする。

「一瞬でもシグの体が離れるの、嫌だよ…。それに…気持ち良くして欲しいのは、お尻の中…だから。シグので…中、たくさん突いて、いっぱい精液出してもらうの…もう待てない」

 早くシグルドの熱を中に入れて欲しい。一つになりたくてたまらない。
 シグルドの首に回した腕に力をこめて、足を彼の腰に絡めた。絶対に離れてほしくないっていう意思表示。

「ん…っ!?」

 突然お尻の中に異物感を覚えて、声が喉をついて出た。シグの指。僕のお尻の中を撫で押しながら、深いところまで進んでくる。

「ユテの言葉、脳と心臓とチンコに来た。望み通り、中が俺の形になるまで突いて、タマが空になるまで射精させて、溢れるくらいに精液注いでやるからな。朝まで寝かせねえからそのつもりで」

 鼻先が触れそうになるくらいの至近距離。シグルドの吸い込まれそうに真っ青な瞳は瞳孔が開いて、こめかみには血管が浮き上がってる。
 興奮と怒りが紙一重の、圧のある雰囲気に背中をぞくぞくとしたものが走って、僕はそれだけでイきそうになった。

「ん…更に溢れてきた。今から自分がどうされるか想像したのか?」

 たくさん愛される期待に、自分でもお尻の中がびしょびしょに濡れるのが分かった。シグルドがニヤニヤしながら、音を立てて指を動かして、本数を増やしていく。わざと聞かせるかのような卑猥な音に、羞恥心がわずかに湧く。でも、興奮の方が大きかった。
 だって、こうなるのはシグルドだけ。こんなふうに、自分の体が淫らで、はしたなくなっちゃうのは、シグルドだから。

「…だ、だって…ぇ、んぅ…うれし、ぃ…っ!」
「…っはー…俺の番、本当に凶悪だな。こんだけ素直に真っ直ぐに気持ちぶつけられたら、おっさんはもう形無しになっちまう」
「…あゔ……っ!」

 指が抜かれて、喪失感を感じる間もなく、それが入ってきた。指よりもずっと太くて、長くて、硬い熱の塊。
 待ち望んでいたシグルドの熱に感極まってしまい、僕は軽くイッてしまった。ぴゅく、と精液を漏らしてしまう。

「入れただけでイくとか……可愛いな、ユテ。たまんねえ」
「あっ、ん…んン…ふ、ぅ…っ」

 体を密着させた状態で、シグルドが緩慢な動きで腰を突き入れてくる。ゆっくりと体を揺すられて、その度に甘さを含んだ声が出てしまう。
 腰使いがゆったりとしているから、中を擦るシグルドの屹立の形がよく分かってしまう。亀頭が僕の深いところをくちゅくちゅってたくさんキスして、大きく張り出したカリの部分が気持ちいいところを擦っていく。

「はぁ、ァ…ふっ、う、ンぅ…っ」

 シグルドが腰を動かす度に、僕のペニスが彼の腹部に擦れる。六つに割れた硬い腹筋で亀頭や竿を余すことなく扱かれて、先走り液が溢れてしまう。
 陰茎もお尻の中も同時に愛撫されて、気持ち良さがビリ、ビリって電気みたいに全身を駆け巡る。
 頭の中が快感でドロドロに溶けていくような感じがして、何も考えられなくなってしまう。
 ただ、シグルドの欲望の熱さと、与えられる肉体の愉悦だけ。もっと、もっと一つに溶け合いたい。

「あー…やべえな…。ユテの中、熱くてキツくて、でもとろとろで…俺のチンコに吸いついてきやがる。気持ち良すぎてたまんねえ…」
「だ、って…シグ、のっ…こと、好きっ、…だか、ら…!」

 大好きな番相手だから、僕の体も喜んで、自然とそうなっちゃうんだ。
 間近にあるシグルドが嬉しそうに緩んでて、僕の心もふわふわ弾んでしまう。シグルドの口から漏れる断続的で乱れていて、本当に気持ちいいと感じてくれてるのが分かって胸がきゅうと疼く。

「ユテ…先に謝っとく。ちょっと強くするな」
「ぇ、あ、あ…っ!」

 額に唇が落ちたかと思うと、緩やかだった動きが早く力強くなった。シグルドがより深く、僕の奥を貫いてくる。

「…ひっ、う、…ン、んうぅ…っ!」

 口もキスで塞がれて、激しいピストンに頭が真っ白になってしまう。まるでシグルドの情欲を叩きつけられているかのよう。
 中を突かれる最中、何度達したか分からない。それでもシグルドの腰遣いは止まるどころか更に激しくなって、僕はただしがみつくことしかできなかった。

「ぁ、っ…ン ──── ッ!」
「…はっ…」

 最奥にシグルドの熱を感じた瞬間、一際大きな快感の波に襲われた。背中がのけ反って、番の体に回した腕に勝手に力が入る。
 シグルドが息を詰めるのが聞こえて、次の瞬間には温かいのがお尻の中に広がっていくのが分かった。

「はあ……止まんねえ…」
「あぅ、…ん、ン…」

 残滓すら全部、僕の中に出そうと、シグルドが腰を押しつけてくる。その動きすら、イッたあとの体には刺激が強くて、また射精してしまう。散々出したから、精液とも言えないような少量の体液だったけど……。

「ユテ、悪い。かなり乱暴にしちまった。平気か?」
「ん…だいじょ、ぶ…。すごく、気持ち、よかった…」

 頭を撫でられながら、唇を啄まれる。ゆったりとした触れ合いと時間がすごく心地いい。
 長かった。ここまでの道のりはとても長くて、険しくて、我慢の連続だった。
 でも諦めなくて良かった。想いが報われて、これ以上ない幸せに全身を包みこまれていた。
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