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よつば 綴

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神隠し

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 時々、確かにあったはずの物が姿を消す。
 机から落ちた消しゴムが見つからなかったり、カバンに入れたはずの鍵がなくなっていたり。摩訶不思議、神隠しである。
 私は特に、小さい頃からそういう現象が多く起こる体質なようで、身の回りの物をよく失くしていた。
 おっとりした性格故に、あまり気にしなかった。しかし、流石に彼も近頃は呆れ気味だ。


 彼と寝室に入り、きっと暑くなるだろうとエアコンをつけた。
 彼とお楽しみの後、またエアコンのリモコンが見当たらない。さっきつけた後、確かにそこに置いたのに。

 少し寒くなってきた。室温を上げたいが、リモコンは見つからない。一体どこに······。
 私が探しているのを無視して彼が言った。


「なぁ、もう一回いいだろ?」

「ねぇ、それよりエアコンのリモコン知らない?」

「またかよ。さっきそこにあっただろ?」


 結局二人で探して、置いてあった棚の下から見つけた。
 もう、リモコンが無くなるなんて日常茶飯事すぎて、何とも思わなくなっていた。


「ねぇ、テレビのリモコン知らない? また今日もお出かけしちゃってるのよね~」

「お前、リモコン全部に発信機でもつけたら?」

「······そうだよねぇ」



 翌日、彼に連れられて電気屋さんへ行った。

 発信機だと、レーダー上では部屋でかたまって見えるだけで、まるで意味がないと言われた。なので、貼り付けて音を鳴らして居場所を見つけるという、画期的なアイテムを手に入れた。
 帰宅後、彼と家中のリモコンやよく失くす物を探し出して貼り付けた。これでもう安心だ。
 私も彼もそう思っていた。


 その日の夜、早速テレビのリモコンが失踪した。


「ねぇ、音鳴らすリモコン····」

「知らねぇ」


 結局、音を鳴らすためのリモコンを探す羽目になった。
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