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3章 希う大学生編
完成したんだって
待ちに待った9月。ついに、僕たちの新居が完成した。そして週末、揃って新居の見学に行く事になった。
けれど、どこかのリゾートホテルにでも行く気分だ。だって、あまりにも規模が凄すぎて、家って感じがしないんだもの。
僕の家から車で20分ほど。凜人さんの車を借り、朔の運転で来た。もちろん僕は助手席に乗せられて。ドライブデート気分で、短い時間だったけどドキドキとワクワクで胸が躍っていた。
まだ家具などは置いておらず、殺風景にガランとしている。中庭には草木が植えられていて、まるで緑豊かな園庭のようだ。
その中庭を囲うように、7つの部屋がある。僕たちの個室と客間。どこが誰の部屋になるのかは未だに揉めている。つまりは、僕の両隣りを誰が勝ち取るかという事。
あとは、キッチンや浴場、リビング的なフリースペースだ。全体的に明るくてゆったりしている。間接照明があちこちにあってお洒落だ。
2階には、既にジムが出来上がっていた。皆、筋トレが趣味みたいなものだから、ワクワク····というかウズウズしている。こんな設備、一般家庭にはないよ。
もう一部屋には、朔のピアノが既に設置されていた。他にも、朔ができる楽器が数点。言わずもがな、ここだけでなく家中防音完備だから、これからはいつでも聴かせてもらえるんだ。そんなの、楽しみでしかない。
そして、こじんまりとしているが、決して手狭ではないウッドデッキ。外の景色が一望できる。と言っても、見慣れた地元の町並みなんだけど。それでも、ここから見れば絶景に思える。
最後に屋上。うん、広い。ここでバーベキューやプールをするんだと、朔が満足気に説明してくれた。
因みに、浴室とトイレは各階にある。掃除が面倒だからと、トイレは各部屋に備えなかったらしい。
お風呂なんて、1階にはスイートルームにあったようなガラス張りのお洒落なやつ。スイッチひとつで、曇りガラスに早変わりする。マジックアイテムみたいなそれに、僕と啓吾ははしゃいでしまった。
2階のは露天風呂のような岩造りのお風呂で、もはや温泉だ。
「ねぇ、ここ····家だよね?」
スパリゾートとかじゃないんだよね? これから、僕たちが暮らす家なんだよね?
僕と同様に、りっくんと啓吾も言葉を失っている。藤さんから内装の説明をされた時は、なんか凄そう····くらいに思っていた僕たち。実際に、出来上がったものを目の当たりにすると、色々と現実味を帯びない。
今日は内覧だけだったが、徐々に家具などを設置していくのだと言っていた。もう少し涼しくなったら、本当にここに引っ越すんだ。
「思ってたよかゆったりしてんな。風呂はもうちょい広い方がよかったけどよ」
「いやいやいや、2階の温泉なんか俺ら全員で入れんじゃん!? あれで狭いの?」
「実家の露天風呂よか狭ぇわ」
「お前ん家の露天風呂なんか知らねぇよ! つぅか一般家庭に露天風呂なんかねぇわ!」
ここに来てからというもの、金持ち組が本領を発揮している。とてもじゃないけど、2人の感覚にはついていけない。
「なぁ、そんな事より客間が2部屋つってたけど、客なんかそう来ねぇだろ。1部屋はヤリ部屋でいいんじゃないか? どうせ俺ら、誰の部屋でするか揉め出すだろ」
唇に指を添え、悩ましげな表情で件の部屋を見つめる朔。やり部屋って、槍?
「槍····飾るの? 専用の部屋なの? 誰かの趣味なの?」
「ゆいぴ落ち着いて。ヤリ部屋ってのはね、えっちする為の部屋だよ。ラブホみたいな感じ」
「家に····ラブホテル····」
僕の知らない世界に、ポカンと思考が飛ぶ。そんな僕を無視して、八千代が話を進める。
「いいんじゃねぇ? 客なんか来たところで、1部屋で事足りんだろ」
「そりゃあんだけ広けりゃなぁ····。個室って何畳あんの?」
「30だったか?」
「20だろ。上の風呂よか狭ぇわ」
ここは元々、小さな商業施設があった場所で、敷地としてはかなり広い。それをふんだんに使った家になっているのだ。外には庭やガレージもあって、知らない人からは一見、展示場か何かだと思われるだろう。
朔と八千代の実家より敷地面積は狭いと言っていた。が、充分広すぎて、家中移動するだけで疲れちゃうよ。
「お前のその風呂基準なんなの? つぅか個人部屋20畳ってなんなんだよ····。んな置くもんねぇよ?」
啓吾がツッコミ疲れているようだ。ここに来てから、八千代と朔の素にツッコミっぱなしだもんね。
「俺もだ。ピアノ置かねぇなら特に置くものがねぇ」
「なんか、寂しい感じの部屋になりそうだね。僕の部屋のもの運んでも、半分も埋まりそうにないや」
「ぁに言ってんだよ。家具は今から買いに行くぞ」
「「「····へ?」」」
僕とりっくん、それに啓吾は目を丸くしてしまう。そんな僕たちを置いて、八千代と朔はスタスタと次へ向かう。
ちなみに、僕の部屋の家具は、そのまま実家に置いておくようにと言われた。帰った時ベッドがないと困るし、空っぽになったら母さんが寂しがるだろう、と。
それに、心機一転する為にも、部屋のサイズに合った家具を選べと言われた。朔と八千代のご両親から、僕たちへの新居祝いなんだそうだ。
啓吾は『ここまで来たら遠慮しねぇよ?』と開き直り、本当に無遠慮にコーディネイトして部屋を作り上げていた。りっくんも、徐々に遠慮というものを忘れ、好みの部屋に仕上げていく。
問題は僕だ。好みと言っても特にないし、こだわりもこれと言ってない。値札を直視できないような家具を前に、思考が止まり視界がぐるぐるしてきた。
「大丈夫か?」
朔が肩を抱いて支えてくれる。なんだかんだ、部屋に見合ったものを揃えた朔。一緒に選んでくれると言って、手を繋いで見て回る。
僕が不意に『新婚さんみたいだね』と口走ったら、朔が上気してしまいそうなほど赤くなった。皆、変なところで純情なんだよね。ポイントがよく分かんないや。
皆が、気にせず推しグッズを飾ればいいと言ってくれたから、そういう仕様の部屋を目指した。ショーケースや本棚も沢山設置して、趣味全開の部屋にするんだ。
どうせ、自分の部屋で寝ることなんて少ないだろうし、深く考えないようにしよう。そう、個室は趣味部屋でいいんだ。
全員分の家具が決まったので、いつも通り八千代の家へ行って寛ぐ。なんだろう、凄く落ち着くんだよね。
「こんくらいの広さが落ち着くわ~」
僕が思っていた事を、啓吾が代弁してくれる。新居は凄すぎて、慣れるのに暫くかかりそうだ。
何はともあれ、新居が無事に完成した事を皆で祝う。啓吾が意気揚々とピザを注文している間に、八千代が僕を洗浄に連れ立つ。またなのか····。
手際よく洗浄を終え、湯船に浸かりご機嫌な八千代の胡座に収まった。後ろから頬擦りをしてくる八千代。髪が擽ったくて、肩を竦めながら振り返る。
唇が触れ合うだけのキス。何度も啄み、次第に唇を食べられてゆく。僕を対面で膝に乗せなおすと、本格的に舌を絡め始める。そのまま、ぐぷぷっとおちんちんを受け入れた。
ゆっくりと奥の扉を解し、インターホンと同時に貫く。必死に声を殺すと、水音に混じり玄関扉の開閉音が聞こえた。すると、いきなり高速ピストンで奥をぐぽぐぽする八千代。強い衝撃に、激しい嬌声が家中に響く。
八千代がナカにぶち撒け、僕はくたっと八千代に寄りかかる。乾いた溜め息が聞こえ、ハッとして扉の方を向く。
目の座った朔さんが、浴室の扉を空け放ち縁に寄りかかっていた。腕を組んで、上向き加減に僕たちを見下ろしている。絶対怒ってるよ····。
「お前ら、早く上がれ。知ってると思うけど、ピザ届いてんぞ。今すぐ出ろ」
間違いなくご立腹だ。まさか、今日受け取ったのは····。
部屋に戻ると、啓吾とりっくんが正座をさせられていた。何事だろうか。
「お前らもそこに座れ」
こうして、初めてピザを受け取った朔から、滾々とお説教された。静かに、僕以外を冷ややかな目で見ながら。
配達員さんに申し訳ないから、二度とするなと言われた。それは、僕も初めから言ってた事なんだけどな。それから、新居では絶対にするなと釘を刺されていた。
啓吾と八千代は怪しい返事をする。けれど、朔の鋭い眼光に睨まれて、八千代まで少しビビっている様子だった。
漸く、少し冷めたピザにありつく。新居について、あれやこれやと話は弾む。僕たちは、少しずつ現実味を帯びていく同棲生活に胸を躍らせた。
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