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3章 希う大学生編

リア充って怖いや

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 公園の入り口で立ち止まっていると、窪くんが大きく手を振って、大きな声で呼び掛けてくれた。そんな大きな声を出さなくても、充分聞こえる距離なんだけどね。
 本当に元気で明るい人なんだなぁと、感心しつつ輪に呼び込まれた。八千代は傍にあったベンチにでんと座り、足を組んで横柄な態度を見せつける。

「八千代もやろうよ」

「んじゃお前がこっち来い。その輪には入んねぇぞ」

「もう····」

 仕方がないので、我儘を聞いてあげる事にした。線香花火を数本持って、八千代の隣にちょこっと座る。
 何故か八千代が持っていたライターで火をつけ、パチパチと弾ける小さな火球を眺める。

「ねぇ、なんでライター持ってるの?」

「··········癖」

「もしかして、煙草吸ってるの?」

 臭いやキスの味で、そう感じた事はない。けど、そんなものいくらでも誤魔化せそうだもんね。

「吸ってねぇよ。吸ってねぇからお前に何かあった時我慢できねぇんだろうが」

 そんなの知らないよ。けど、そうだったんだ。それなら尚更、心配掛けないように気をつけなくちゃだね。
 とは思うんだけど、後でマッサージだけは教えてもらうね。と、心の中で何度も謝った。だって、皆に喜んでほしいんだもん。

 線香花火を眺めていると、何本目かで八千代が『結人のケツが壊れませんように』と呟いた。皆には聞こえないように、極々小さな声で、にまっと僕を見ながら。
 だから、僕はお礼に『八千代の腰が振りすぎで折れませんように』と祈ってあげた。

「‎ンっと負けず嫌いだよな」

 まったく、どの口が言っているんだか。自分だって凄く負けず嫌いなくせに。
 僕は呆れて、八千代の手を握った。自分の事は棚に上げて減らず口をたたく八千代に、愛おしさが込み上げて仕方なかったんだもん。

 すると、イチャつく僕たちを見て、啓吾がずでんと隣に座った。

「俺もイチャつきたいんですけどぉ。なぁ結人、ポッ〇ーあーんしてくれんだろ? 今して」

「旅館まで我慢しろよ。つぅかどう見てもコイツの手ぇ塞がってんだろ。ハッ、残念だったな」

 いちいち喧嘩をふっかける八千代。こういう所は僕より子供っぽい。けど、慣れてしまえば可愛いものだ。
 けど、現状僕の手は線香花火と八千代で塞がっている。八千代は手を離す気がないみたいだし、どうやって食べさせてあげようか。

「いいもーん。そう言うと思ってたもんね~」

 啓吾は怯む事なくポッ〇ーを1本取り出すと、持ち手の方を咥えた。そして、僕の顎をクイッと持ち上げる。

「ん」

 整った顔を見せつけて『ん』と言われてもだよ。自分で食べちゃ、あーんできないじゃないか。と、何をすればいいのか分からず軽くパニックに陥った。
 だが、数秒考えて気づく。そうか、これはあれだ、ポッ〇ーゲームだ。え、人前でするの?

「け、啓吾、皆見てるよ?」

 僕は、皆の方をチラッと見て言った。誰か止めてくれないだろうかと、淡い期待を抱いたのだが甘かったようだ。

「あぁ、大丈夫だよ結人くん。俺達、花火以外何も見えていないから。ははっ」

 永峰くんは決して此方こちらを向かず、見事な棒読みで、線香花火から一切視線を逸らさずに言った。それにならい、上影組は線香花火から視線を外さない。
 そして、その向こうでこっちをチラチラ見ながら、見るからにソワソワしている朔とりっくん。後で自分たちもするつもりなのだろう。

 見えていないフリをしてほしかったんじゃないんだけどな。朔とりっくんの事だから、やめてやれって言ってくれると思ったんだけどな。
 どうしてこういう時だけ団結してしまうのだろう。勘弁してほしいよ。

「えぇー··、皆ホントにおバカすぎるでしょ····」

 僕は観念して、啓吾の口から生えているポッ〇ーに齧りつく。これ、途中で折れちゃいけないんだっけ。こんなリア充の遊び、知らないや。

 ガリガリと食べ進めてくる啓吾。慣れている様子に、少しモヤッとする。ううん、気にしちゃいけないんだ。
 それよりも、緊張して上手く進められない。薄ら目を開けると、啓吾が目前まで迫っていた。僕は、もう一度ギュッと目を瞑る。
 さわっと唇が触れ、来る··と思った瞬間、啓吾が止まった。

「ふ··ぅ?」

「ん」

 僕は、恐る恐る目を開けた。しっかりと目が合う。完全に待っていじゃないか。最後の一齧り、キスの仕上げを僕にさせる気なんだ。
 僕は、もう一度ギュッと目を瞑り、意を決して数ミリ進む。そして、キャラメル味の甘いキスをした。
 そっと唇を離すと、満足そうな啓吾の笑顔が僕の心臓を跳ねさせる。本当に、心臓がいくつあっても足りないや。

 待ってましたと言わんばかりのりっくん。今度は、僕が咥えて待つ。目を瞑って待っていると、一度ポッ〇ーを抜かれた。
 何事かと思い目を開けると、持ち手を自分の方に変えて咥え、ニヤけるのをこらえながら待っているじゃないか。本当に甘々なんだから。
 僕は、遠慮なく美味しい方に齧りつく。焦らしながら迫る啓吾とは違い、凄い速さで食べ進めてくる。キスが待ちきれないらしい。
 あっという間に唇が触れ、濃厚なキスで舌まで食べられた。余裕なんてないような、僕を貪るキスだ。何をそんなに急いているのだろう。僕は逃げないのに。

 待ちくたびれた様子の朔は、僕から1本ポッ〇ーを取り上げる。それを僕の口に咥えさせ、二口くらいでキスへ持ち込んだ。早いよ。
 ポッ〇ーゲームを知らないのか、ただキスをしに来ただけみたいになっている。朔らしいや。
 そぅっと離れ、雄剥き出しの目で僕をジッと見つめる朔。目を細めて指で唇を拭う仕草がえっちで、お尻がキュンとした。

 当然、自分もしないと気が済まない八千代。皆とシてる間も、ずっと手を離さなかった。いつの間にか足元に落としていた線香花火を回収してバケツに放り込むと、僕を膝に乗せた。
 朔が『外だぞ』と注意するが、八千代は全く意に介さない。例の如く持ち手側を咥えると、やらしく指を絡めて両手を繋ぐ。それから、顎で『始めろ』と合図する。

 僕は狼狽えながら、おずおずとポッ〇ーに口をつける。体勢も相まって緊張が高まり、八千代の息遣いが耳について集中できない。
 やはり上手く食べ進められず、唇が触れる直前で折れてしまった。にも関わらず、八千代は繋いだ手を引いて強引にキスをする。
 心の中で『外なんだぞ!?』と叫びながらも、引き寄せ握る手の力強さに抗えず、僕はされるがままキスを受け入れる。

「はーい、そろそろ終わってねぇ。君ら分かってる? ここねぇ、お外。ヘイ場野ゴリラくん、人語分かる?」

 啓吾が八千代をなじる。けれど、八千代はキスをやめない。勿論、僕からはやめられない。
 見かねた朔が、八千代の後ろへ回り髪をガシッと鷲掴んだ。目が据わっていて怖い。

「ん゙っ、ッでぇな!」

 身動きが取れず、八千代は朔の手首を掴んで苛つきをぶつける。

「いい加減にしろ。外だつってんだろ。それに、俺らだけじゃねぇんだ。弁えて行動しろ」

 自分も目を輝かせてキスしていたのに。なんて、とてもじゃないが口を挟める雰囲気ではない。
 朔は、八千代の髪を離すと、今度は僕の後ろへ来て僕を抱き上げた。

「理性のねぇゴリラから逃げれなかったんだよな、可哀想に。旅館まで俺が守ってやる」

 そう言って、僕を降ろしてしっかりと手を繋ぐ。反対側にはりっくんが。
 僕を奪われてぐぬぬ顔の八千代は、啓吾に背中をバシバシ叩かれながら宥められていた。苛立ちのおさまらない八千代は、啓吾の首を小脇に抱え、セットした髪をグシャグシャにしていた。なんて腹いせだ。

 それを、生温かい目で見守る上影の皆さん。本当に何をお見せしているのかと、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
 そうして、騒がしく花火を終えた僕たちは、ゆっくりと寒さを肌に沁み込ませながら旅館へ戻る。


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Xでは結構前に投げてたんですけど、そう言えば他で載せてなかったなと····。
初期設定をこんなにちゃんと考えたのは初めてです。
ましてや勢いだけで生まれたモブのはずだった子達なのに····。名前すらなかったよ🤣
この子達だけで話ができそうな気がするけど、余裕がないので生きているうちに書けたらいいな程度に思ってます(笑)

上影組の関係図(メモ)



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