4 / 5
10年後の君は
しおりを挟む「シィー····。もう少し黙ってて」
そう言って、僕の唇に人差し指を当てる。もう少しとはどのくらいだろう。
廊下に居る人が、帰るまでだろうか。
扉の磨りガラス越しに外の様子を伺う。
静かになるのを待ち、シャツの中に手を忍ばせてきた。脇腹に触れる手が、ヒヤッとして身体を跳ねさせる。
「ひぁっ」
「ごめん、冷たかった?」
「うん。でも大丈夫。だから····」
引っ込められた手を捕まえ、自ら腹部を触らせた。
冷たい手で撫でられるのは気持ちいいんだ。
「ねぇ、学校ではシないって言ってなかった?」
「言ったけど、守る気ないんでしょ」
「まぁね」
やめる気などさらさらないらしい。
シャツの中を遠慮がちに撫で、僕の感度を確認するとシャツのボタンを外し始めた。
プチプチと、ゆっくり外されるのは何だか恥ずかしい。
「ね、自分で外そうか?」
「ダメ。俺が外す」
僕が照れるのを見ながら、嬉々としてシャツを剥ぎ取る。暖房が弱いのか、少し肌寒い。
僕を机に座らせると、腰をそぅっと撫でる。触れるか触れないか、絶妙な距離。
「ひゃっ····擽ったいよ····」
「だって、あんまり触ると痛いでしょ?」
「そうだけど····」
「ほら、腕上げて」
甘い声で僕を従わせる。素直に腕を上げると、青くなった脇腹を指でつつかれた。
「いぁっ····」
「あーあ。綺麗な肌が傷んでる」
体育の時間、よそ見をしていたらバスケットボールが直撃したのだ。その拍子に転んで、壁で頭を打った。
「頭のほうは? ちゃんと冷やしてた?」
「冷やしてたよ。タンコブもマシになったもん」
「でも、まだ小さく残ってんじゃん」
何故か不機嫌になる。昔からそうだ。僕が怪我をすると機嫌を損ねる。
僕の鈍臭さに苛立つのだろうか。なら、構わなければいいのに。
「大丈夫だから、もう放っといてよ」
「は?」
「僕のドジ、苛つくんでしょ?」
そう言うと、さらに機嫌を悪くした。
「苛つく。なんで怪我する前に助けらんなかったんだろうって、毎回自分に苛つくんだよ」
世話好きの心配性は厄介だ。打ち身を心配そうに見つめ、すっと指で撫でた。
いくらなんでも、世話焼きが過ぎる。
「怪我、させないように俺が守りたい」
「いくら僕がドジだからって、守ってもらわなくても····」
「初めて会った10年前から、ずっと思ってた。怪我する度に、守ってやりたいって」
随分前からだな。10年前だなんて、小学生じゃないか。衝撃の告白だ。
僕の手を握って、告白は続く。
「そのうち、取り返しのつかない怪我するんじゃないかって、毎日不安なんだよ。だからさ、これからは俺に守らせて。彼氏として、さ」
「彼··氏?」
「うん。好きなんだ。ずっと、好きだった」
予想外の展開だ。
「僕、男だよ?」
「その辺の女の子より可愛いし守り甲斐あるよ」
「失礼すぎるでしょ」
答えを保留にし、僕達は帰路につく。途中、さり気なく手を繋がれた。
突然の事に驚き、振りほどくタイミングを失う。そのまま家の近所まで、夕闇に隠れて手を繋いで帰った。
この胸の高鳴りは、ただ戸惑っているだけ。そう、自分を納得させた。
そして、家の前でもう一度、想いを告げられる。
「返事は急がないからさ。ゆっくり考えてよ」
「ゆっくりって言ったって····」
「10年あっためてたんだよ? あと10年くらい余裕で待てるよ」
なんて軽口を叩くが、その表情で僕の答えを待ちわびているのが分かる。
これは、早々に返事をしなければ。そう思わせるほどに、泣きそうな顔をしていた。
「今度、僕が怪我しそうになった時····」
「なった時?」
「守ってくれたら付き合ってあげる」
僕は、そう言葉を投げて家に駆け込んだ。
鳴り止まない電話。出れずにいると、ポコンとひとつ、メッセージが届く。
『次は絶対に守る』
だって。10年間、一度も守れなかったのに。
僕は、返事をせずにスマホを抱いて眠った。
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
唐突に書いたツイノベと言うやつ。を、まとめました。
また #よつばのツイノベ をつけて衝動的にやるかもしれません。その時は暖かく見守ってやってください。
お題
「声を出しちゃいけない」
「10年目の初めて」
「ずっと先の話をしよう」
1
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
【8話完結】帰ってきた勇者様が褒美に私を所望している件について。
キノア9g
BL
異世界召喚されたのは、
ブラック企業で心身ボロボロになった陰キャ勇者。
国王が用意した褒美は、金、地位、そして姫との結婚――
だが、彼が望んだのは「何の能力もない第三王子」だった。
顔だけ王子と蔑まれ、周囲から期待されなかったリュシアン。
過労で倒れた勇者に、ただ優しく手を伸ばしただけの彼は、
気づかぬうちに勇者の心を奪っていた。
「それでも俺は、あなたがいいんです」
だけど――勇者は彼を「姫」だと誤解していた。
切なさとすれ違い、
それでも惹かれ合う二人の、
優しくて不器用な恋の物語。
全8話。
王様の恋
うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」
突然王に言われた一言。
王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。
ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。
※エセ王国
※エセファンタジー
※惚れ薬
※異世界トリップ表現が少しあります
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる