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一章
~ 初デート ~
しおりを挟む街に着く手前の中道にレトロな雰囲気の喫茶店があり、2人は窓際のテーブル席に向かい合わせで座っていた。
店はそれほど広くなく、カウンターが6席にテーブルが4席あり、気持ち薄暗く落ち着いた雰囲気だ。
「外寒かったでしょう?」
「あ、大丈夫です・・・瑠花さんの手・・温かかったから・・・」
「それなら良かった」
「お待たせしました。
グラタンと、トマトリゾットです・・では、ごゆっくり」
ここのマスターらしき黒いエプロンをしたダンディーなおじ様は、丁寧なおじきをして落ち着いた足取りでカウンターの方へ戻って行った。
あの人、お父さんとあまり年変わらなさそう・・・
時間ばっかり気にして、いつもせかせかしてるうちのお父さんとは大違いだなぁ・・・・
「優理ちゃん、食べないの?」
「あ、・・いっ、いただきますっ!」
湯気が立ち、いかにも熱そうなグラタンをフォークですくった直後、口に運ぼうとしたーーーが、いきなり瑠花に手を掴まれて阻止されてしまった。
「冷まさないと火傷しちゃうよ?」
「えっ・・・」
フォークを持った優理の右手を掴みながら、瑠花はニコリと優しげな微笑みを浮かべてフォーク先のグラタンを冷まし始めた。
「はい、どうぞ」
「は、はい・・・」
言われるまま、優理は程良く冷まされたグラタンをぎこちなく口に運んだ。
濃厚だけど、後味がサッパリしたチーズとマカロニがいい具合にマッチして、その美味しさに優理は目を丸くさせた。
「・・・ん、美味しいっ・・・」
「口に合って良かった
リゾットも美味しいから食べてみて」
そうにこやかに言うと、瑠花はリゾットの乗ったスプーンを優理の口に近付けた。
「えっ・・その・・・」
ここでそれは、さすがに恥ずかしい過ぎるっ・・・
「どうしたの?」
「あっ・・・ちょっと・・恥ずかしいです・・・」
「ふふ、優理ちゃんは本当に可愛いね」
顔を赤くさせてモジモジする優理に、瑠花は身を乗り出して触れるだけのキスをした。
一瞬の出来事に、優理は何が起こったのか理解できずフリーズしたまま瑠花を見つめた。
え・・え・・・今・・キスされたよね・・・?
こんな人の居るとこで・・まあ、あまり居ないけど・・・でも恥ずかしいっっ!!
「優理ちゃん、このあと行きたい所ある?」
「えっ!?・・・あ・・・今日はカフェの買い物するんですよね・・・?」
「カフェの買い物は帰りで大丈夫
どこに行きたいかな?」
「えーと・・・じゃあーーー・・・」
☆ ☆
ランチを終えて喫茶店を出た後、街にあるデパートの化粧品コーナーに2人はいた。
「あっ、あった!」
ちょっと違うけど、クラスの女子達が持ってたのと似てるっ!
使ってるの見て、気になってたんだよね!
優理は目をキラキラさせながら、テスターを取って手の甲に塗りだした。
ほのかなピンク色で、桃の良い香りに自然と笑みがこぼれた。
「いい匂い・・・」
色もちょうどいいし・・・値段は・・・
商品の値段に視線を走らせると、意外と高く3500円で高校生の優理には少し厳しい金額だった。
うっ・・ちょっと高い・・・
・・・どうしよう・・・もう少し安いの探してみようかな・・・・
「あの・・・もう少し、見ててもいいですか・・・?」
「うん、ゆっくりして大丈夫だよ」
「ありがとうございます!」
真剣な顔でまた化粧品を見始める優理の姿を、瑠花は優しげな表情を浮かべながら見つめた。
うーん・・・いいなって思うやつ全部高い・・・妥協して安いのを買うか・・・迷う・・・・
「はぁー・・・お待たせしました」
「もういいの?」
「はい、また次来た時にします」
「・・そっか・・・
優理ちゃん、この地下で買い物してもいいかな?」
「はい!」
うー・・来月、お小遣いもらったら買おう!!
2人は化粧品コーナーを後にして、エスカレーターのある方へ歩き出した。
さっきよりも学生らしき若い子達が増えていて、女の子達は瑠花の美貌に釘付けになっていた。
「ねぇっ、あの人超イケメンじゃないっ!?」
「ほんとだぁっ!スタイルも良いし、モデルさんかな!?」
「あの隣にいる子、彼女かな?」
「まさか!
年離れて見えるし、妹とかじゃない?」
言いたい放題の女の子達に、優理は目が合わないように俯きながら瑠花の後に続いた。
・・・妹か・・・
だよね・・私なんかが、瑠花さんと釣り合うわけないし・・・・
瑠花さんに買い物誘われて、少し浮かれてた自分が恥ずかしい・・・・
「優理ちゃん?」
「えっ?」
「足元気おつけてね」
気がつくと、いつの間にかエスカレーターの前まで来ていて、優理はハッと我に返った。
すると瑠花は、無言で優理の手を取ってエスカレーターを降りて行った。
えっ・・てっ、手っ・・!
「ボーッとしてたら危ないよ?」
「あ・・・はい・・・」
もしかして、気使って手繋いでくれてるのかな・・・?
・・・ちょっと複雑・・・・
ますます優理の顔は暗くなり、自然と繋いでいた手を緩めたーーーが、瑠花は離そうとしなくギュッと強めに握られた。
「あっ・・・」
「ごめん、痛かったっ?」
「だ、大丈夫です・・ちょっとびっくりしただけで・・・」
「ごめんね、手離したくなくてつい力が入っちゃって」
「えっ・・・」
「優理ちゃん、足元」
「あ・・・」
エスカレーターから降りると、地下は食品売り場になっていて家族連れやカップルが目立っていた。
「じゃあ、まずお菓子の材料から見てみようかな」
「あ・・買い物の邪魔になるから手離します・・・」
「ふふ、物取る時だけで大丈夫だよ
というか、僕が離したくない」
「えっ・・!?」
頬を赤くさせて動揺を隠せない優理に、瑠花は優しげな表情で微笑むと買い物をスタートさせた。
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