キューティーラビー  ~月と魔物と正義の味方~

角野総和

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希理子、圭紫の秘密を知る!

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「だぁから~、本当の本当に大丈夫なんでしょうねっ。おじいちゃんの診断なんか当てにしていいの?医者でもないのにぃぃ~~」

(小声で)叫ぶ希理子のすぐ側のベッドにはあちこちボロボロの圭紫が眠っている。


何がどうしてこうなったかと言えば、理由は1時間前に遡る。



犬の死体を抱き上げて、いざ歩き出そうとした圭紫がその場でがっくりしゃがみこみ、そのまま地面に倒れこんだ。糸の切れた人形みたいに全身の力が抜けている。さっきの戦闘でなぎ倒された草の上に、両腕で犬を抱え込んだ状態で突っ伏している。

「えっ?え、ちょっと、橙山君?」

慌てて膝をついて顔を覗き込むが、圭紫はピクリとも動かない。

一体どうしたと言うのだろう。

「ちょっと、橙山君。しっかり、しっかりしてよ」

倒れたままの圭紫の体を大きく揺すってみるが、反応はない。肩を叩いたり、大声で呼びかけてみても、全くの無反応。

気絶?もしかして、どこか打ちどころが悪かったのだろうか?脳内出血とか?

「だ、誰か……」

周囲に呼びかけようとして、ここが立ち入り禁止の河原だったと思い出す。
希理子はすぐさま、ホットラインで左之助に連絡した。
救急車も考えたが、左之助の判断で自宅に連れ帰った圭紫を客間のベッドに寝かせた今、が、先ほどの会話というわけだ。


「本当に大丈夫?やっぱり、今からでも救急車――――」
「大丈夫じゃって。ちっとはわしの事を信用せんかい。彼はただ単に眠っているだけじゃ。お前が言うような、脳みそ破裂みたいな死にかけにはなっとらんわぃ」
「でも………」


今回、希理子は殆ど活躍していない。殆ど圭紫一人が、獰猛なケルベロスと戦ったのだ。罪悪感がわいて当たり前だろう。

だから、こんな風に目を覚まさない圭紫を心配するのも当たり前。

なのに左之助は心配するどころか、倒れた圭紫の体をスキャンしてみようか、などとはしゃいでいる。どこまでも研究バカの自己中爺だ。

ピクリともしない圭紫を見ながら希理子がハラハラ、モゾモゾしていると、別室に引っ込んでいた左之助が大慌てで飛んできた。圭紫の祖父、右近と連絡がついたとか。
さすがに本人は来ていないが、パソコンでつながっているらしい。
画面の中の右近は、先日ビデオレターで見た通りのダンディ爺。

希理子はさっそく状況説明をし、病院に連れていくかどうかの指示を仰いだ。ここは身内の意見が最優先されるべきだろうから。

「ふんふん。圭紫は魔との戦闘でそんな風にボロッちくなって気を失ったというわけだね。大丈夫だよ、お嬢さん。安心しなさい。圭紫の今の状態、それはずばり、エネルギー枯渇による生体機能の低下、つまり、失神だねぇ」
「はぁ……」

失神?て、ことは気絶?まぁ、言ってる事は左之助と同じだが、エネルギーの枯渇?生体機能低下?それって大丈夫なの?

「うむ。さっき君の所の憎たらしい爺と話したのだが、圭紫はもちろんレオフレイに変身状態で戦闘をしたのだろう?そうでなきゃ魔物とは戦えないからね。
そもそも変身、変化というものの仕組みだが―――――」

そこから先はツラツラツララー――――っと、右近の説明が延々続いた。どうやら彼も左之助と同じ研究バカ。研究について語りだしたら止まらないというやつらしい。
語る内容は難し過ぎて半分以上理解できなかったが、何とか要点だけは聞き取った。

圭紫が言っていたように、変身したレオフレイは日中にため込んだ太陽エネルギーをパワーに魔物と戦う。まさに、希理子が例えたソーラー電池そのものだとか。

つまり、戦えば戦う程蓄えたエネルギーを使った事になる。蓄えたものには限りがあるから、底まで使えば枯渇する。
それが、今の圭紫の状態らしい。


「ほぉぉぉ~~~~」

だったらじっと寝ていれば回復するの?太陽エネルギーを補充すれば、つまり明日天気になって日光浴すれば、回復するの?
でも、それって遅くない?このまま一晩、いや、明日の昼頃まで放っておいて大丈夫なの?

右近の説明に納得しかけた希理子だが、今度は別の疑問が湧いて出た。

「うむ、確かに。お嬢さんは優しいな。さすがは緑さんの孫じゃ。
緑さんは見目相応にそれはもう優しい菩薩のような御心の持ち主だったからね。私が実験に失敗して部屋を爆破した時にも、部屋の惨状よりも先に私のケガを心配してくれたんだよ。胸元からそっと懐紙を出して流れる血を拭ってくれたんだ。その後、ミスをおかした私に次があるからと励ましをくれて――――」
「あのっ!右近さん。おばあちゃんの話もいいですけど、今はまずそっちのお孫さんの話を……」

うっとりした表情で話しだした右近をぶった切って、話の軌道を修正してもらう。

「あ?ああ、そうだ。圭紫だったね。
確かに、意識がないのに放置は少々心配だ。で、だ、物は相談だが、お嬢さん。ちょっとそいつと一緒に寝てやってはもらえないかね」
「はぇ?」


そいつと、一緒に、寝てやって?寝てやって?寝る?寝るって―――――


「はえええぇぇぇぇぇ――――――????」
「まあそう驚かずとも。落ち着いて落ち着いて。
君も圭紫からレオフレイの意味は聞いているんだろう?」

パニック状態のまま、画面の右近に頷けば、彼の話も続いていく。

「レオフレイのフレイ部分。太陽からのエネルギーはもちろん素晴らしい可能性を秘めた万能エネルギーだよ。だが、私はあえて圭紫にレオの部分、太陽以外のエネルギーを混ぜ込んで変身薬を作り上げたんだ。異種のエネルギーを重ね合わせる事でより強力なパワーを生み出せるし、またエネルギーを貯蔵する時にも優点があると見たからね」

何だかまたまた話が長くなりそうだったので、希理子は今度も話をぶった切った。
右近は不服そうにしながらも従ってくれる。

詰まるところ、右近が使用した異種エネルギーとは生き物の生体エネルギーらしい。
だから、「一緒に寝て」発言になったとか。

「そうだよ。君が圭紫にピッタリくっ付いていてくれれば、触れ合った部分から微弱ながらもエネルギーが摂取できるんだ。効率面で言えば添い寝よりもっと深くくっ付けばいいけれど、どう?お願いできる?」
「も……もっとくっつく、って……どんな?」

恐る恐る尋ねれば、帰った答えは予想通りのものだった。

「うん。セック――――――」
「いやあああああぁぁぁぁぁあぁぁ」










だって、ライオンってハーレム作ってるでしょ?ハーレムって効率よくエネルギーを集めるにはもってこいなんだよ。オス1頭の周りに大勢のメスが群がってくるんだから。
それを言えば、ライオンでもトナカイでも、ましてやサルでもよかったんだよ。でもさ、ふるわないでしょ?トナカイだったらトナフレイとか?サルと太陽でサンモンキーとか?

「やだよ、そんダサいヒーロー名」


楽し気に右近がのたまったが、希理子から見れば確かにトナフレイやサンモンキーはダサい。でも、レオフレイやキューティーラビーも十分ダサいと、間抜けっぷりではどっちもどっちだと思うのだが………。






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