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宮城 美智子の場合 ②
しおりを挟む言いたい事だけ言った真紀子は、次のバイトがあるからとさっさと帰ってしまった。まるでどこぞのやり手ババァみたいだ。怒られるから絶対口に出せないが。
残された三波と美智子は、借りてきた猫の如くカチンコチンで座っている。
《主サマ。いつまでもコウシテハおられまセヌゾ。何か喋らナクテハ》
わかってるよ。でもなぁ、この状態で何を喋ればいいのやら
《ソウデスネ。まあ、ズバリ、どんな変態行為を行いタイノカ希望を聞けばよろしいのでは?》
コナミは身の蓋もない言いようだ。
だが、いくら何でも無いだろう。いくら何でも、今、ここで、それは聞けない。と、言うより三波が聞きたくない。こんなムチャな頼みを引き受けたとはいえ、変態大好きだなんて思われたくない。普通の感性を持った男だと思われたかった。
「その……さ、美智子…ちゃんだっけ。これって本当に君の望みなの?え…とね、ちょっとした愚痴だったのに真紀が突っ走ったとか、無い?」
目の前の大人しそうな女の子が変態行為を望むMっ娘だとは思いにくい。真紀ならありえるかもしれないけど。
そう思って聞いてみたのだが、美智子の返事は三波の願望とは真逆だった。
「は……はい。私…その……中学2年の時だったんです。修学旅行で……」
滞在先のホテルで、同室のメンバー2名がふざけ心でテレビの有料チャンネルを見ようと言い出したのだ。中3だ。男子生徒ならAV鑑賞の経験もあっただろうが女子生徒では難しい。好奇心と親元を離れた開放感、ホテルの密室だという安心感でついつい小銭を投入してしまった。
画面は昼の野外。どこかの公園らしかった。緑が茂って、人がまばらに歩いている。
ベンチに座るひと組の男女。何処にでもある平凡な風景だ。
美智子たちもほっと方の力を抜いた。本当は、お金を投入した途端、男女の裸が出てきたらどうしようと不安だったのだ。
だが、そんな風景の中、女の服装だけが目立っていた。
胸がギリギリまで開いたカットソーと太股の付け根ぎりぎりの超ミニ丈のスカートだった。露出し過ぎだ。
スピーカーから男の声が聞こえてきた。
「スカートを持ち上げろ」
命じられた女はびくっと震えたかと思うと、そろそろと布を引き上げる。元々短いスカートだ。あっと言う間に下着が丸見えになった。
白いパンティ。前の部分がレースで出来ているせいか、黒い茂みが透けて見えている。
ベンチの近くにいた通行人が目を見開いている。顔を赤くして目を逸らす人。あからさまに見詰めている人。
学校でスカートを捲られただけでも恥かしいのに、こんな風に自分から外で下着を晒すなんて死ぬ程恥かしいだろう。
なのに、男は更に女に命令する。
「脚を開け」
「皆に見せながらパンツを脱げ」
「シャツを捲りあげろ」
次々繰り出される命令に女は真っ赤になりながらも従っている。
そこで、言いだしっぺだったクラスメートがもう消そうと、これ以上は恥かしくて見られない、と言ったのだ。
美智子たち2人も同意して、テレビを消し、気まずさからすぐ話題を人気アイドルのものに変えた。
その時からだ。美智子がエッチな事に興味を持ったのは。
あの時、美智子は見てしまった。
人前で恥かしい事を強要されて真っ赤になった女の表情。とろりと蕩けて、嬉しそうだった。
あんな恥かしい事をされていたのに、あんな恥かしい事を大勢の人に見られていたのに、気持ちが良さそうだった。
それ以来、美智子はこっそりその手の情報を手に入れ始めた。
最初はティーン向けのちょっとだけエッチな小説。次は大人向けのレディースコミック。そして、大人向けのエロ小説。
その中には色々なエッチが載っていた。
思い合うカップル。強引な関係。不倫。出会い系。痴漢。脅迫。SM。露出。複数プレイ。
年頃の女の子なら、恋が実った後のドキドキエッチに心引かれる筈なのだが、美智子は違った。そうじゃなく、痴漢物や露出物。強引な彼に恥かしい事を強要されている話から目が離せなかった。そういった話を読んだ後は、自分のパンツも恥かしい部分がしっとり湿っている事に気がついた。
勿論誰にも相談できなかった。
自分は異常なのだ。頭の線が何本か絡まっているのだと恐ろしくなった。
徹底してそういったものから目を逸らす事もした。
でも、心の底では憧れていた。
そんな時、家が苦しくなってアルバイトを始めた。
真紀子と知り合って、時折小耳に挟む真紀子のエッチな話に驚いた。
彼じゃない幼馴染とエッチをしていると言う。
通販でメイド服やエッチな下着を買って着ていると言う。
女の子とした事があると言う。
だから、勇気を振り絞って真紀子に話掛けてみた。最初からエッチな話題に持ってはいかなかったが、親しくなるにつれ踏み込んだ話も出来るようになった。
思い切って、自分の願望を真紀子に話してみた。
「おかしくないよ。変態?そんなの、ここから変態ってラインがあるわけでもないし。当人が納得してたらいいんじゃないの?他人に迷惑掛けない限りOKよ」
そのひと言で吹っ切れた美智子だった。
はあああぁぁぁぁぁ~~~~~。
思い切り溜息が洩れた三波だった。
真紀子め。確かに間違ってない。だが、俺を巻き込むなよぉ~。
仕方が無い。何時今でもグズグズ迷っていられない。一旦引き受けたからにはやるしかない。
ちらりと見た美智子は頬を染め、期待に満ちた目をして三波を見詰めていた。
とりあえず、一歩から。
幸い、今日の美智子は膝丈のスカートを穿いている。
「じゃぁさ、トイレに行ってパンツ、脱いできてよ」
「ええぇっ」
店中の視線が集中した気がした。
抵抗するかと思った美智子だが、やはり自分で言う通り変態なのだろう。赤面はしたものの、いそいそと化粧室に向かっていった。
「ほんとに行っちゃったよ」
《ハイ、デス。ドウヤラ、ミヤギミチコは本当に喜んでイルヨウデスネ》
10分後、美智子は顔も耳も真っ赤に染めて、妙に内股でモジモジしながら歩いてきた。不自然に右手でスカートを押さえているのが、返って目を引いた。
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