地球でひとり(?)のスライムマン

角野総和

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コナミに何が ①

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ぬめぬめした水のような、でも氷のように冷たいものが空中に漂っている。体に纏わり付くそれは形も無いのに重たくて、触れた場所から体の中に浸み込んでくる。


嫌な感じ。


四角い箱にぎゅうぎゅうに詰め込まれて押し潰される感覚。不快な、空気のような水分のような何かは体に纏わりついて、ぎゅうぎゅう締め上げてくる。息が出来ないような苦しさと目が見えなくなるような恐怖。自分の体が押し潰されて骨の1本1本まで、全て残らず粉々に砕かれるのではないかという疑い。



三波はこの感覚を1度、いや2度経験していた。



あれは―――――――そう、突然異世界なる次元に召喚された時と帰還の魔方陣に入った時だ。







「うわああああああああああああああああああっっっっ!!!!!!」





家、と言うより団地中に響いたんじゃないかと思える位でかい悲鳴を上げて三波は飛び起きた。布団がふっとんだ。いや、駄洒落じゃなくて本当に。



あわてて周りを見回した。ここは自分の部屋なのか。日本なのか。地球なのか。自分の目で確認しただけじゃ信用できないからコナミにも確認してもらおうと名を呼んだのに返事が無い。



「コナミッ!コナミッってばっ」



叫んでみても返事がない。大慌てで自分の体を見回しても、コナミらしき半透明の物体は欠片も生えていない。肌色の人間の手足があるだけだ。

だが、そんな三波の耳にガッサガッサ、ゴッソゴッソという得体の知れない音が届いた。そう、まるで紙くずの中を恐怖のGが歩き回る音に似たそれ。



全身の毛を猫のように逆立てて、恐る恐るベッドの下、床を見れば―――――――何とも言葉に出来ない光景が広がっていた。

言葉に出来ない。

複雑なのだ。



そこにあるのは見慣れたチビコナミ。


そこにあるのは見た事のないチビコナミの群れ。





「な……な、なんじゃ~こりゃ~~~ああああっ!」



某刑事ドラマの名台詞を叫んだ三波は悪くない。それ位驚きだったのだから。







床の上に広がるのは半透明のチビコナミ。その数、数十個(多分)。

そいつらがいつものように、イゴイゴ、ゴゾゴゾ、ガッサガッサと蠢いていた。正直、ちょっと気色悪いかも。



「コナミ、コナミってば。何があったんだよ。分裂するにしたってこれはないだろ?大丈夫なのか?」



声に出して問うてみても返事が無い。



「コナミってば~。怒らないから返事してくれよ」

「コナミ~~~。何でこんなにいっぱい分身作ったんだよ。何かあったのか?」

「コナミ?なあってばっ!」



何度呼んでも返事が無い。それどころか、いつもある体内のコナミの気配さえ感じられない気がする。





まさか?こんなにいっぱいチビコナミを作ったからコナミ本体が消えちゃった?

さっき感じたおかしな気配は本物で、コナミは元の世界に帰還した?



いや、だったらチビコナミも一緒に消えるはず………。





半ばパニックになった三波だが、本当に途方に暮れてしまう前にとにかく体を動かした。

ベッドから降りて、手近にあったスポーツバッグにチビコナミを片っ端から放り込む。

幸いパジャマはグレーのジャージだ。このまま外に出ても、笑われても通報されるレベルじゃない。

三波は上着を着るのも忘れて、バッグを抱え込んだまま隣の棟にある真紀子の家に走っていった。



起きたのが遅かったおかげで高知家夫婦は仕事に出かけ、家にいたのは正に出かけようと玄関で靴に足を突っ込んだ状態の真紀子ひとり。



「たすけてくれ~~~~っ!真紀、真紀子っ。コナミが変態、いや、コナミが変身した~~~~~!!!」





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