地球でひとり(?)のスライムマン

角野総和

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突然の訪問者 ③

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あの後、大急ぎで愛美と真紀子、ちょっと考えたけどやっぱり関係者だから弥生にも電話して三波の家に集まってもらった。スライムと顔を合わせる為に。





ヤツの言い分はこうだった。







スライムは『アダルガナリア大迷宮』という迷宮で冒険者を相手にしているモンスターだった。

彼は普通のスライムと違い、知性があり、意志があるユニークモンスターだ。レベルもかなりのもので、50階層の番人を務めていたらしい。

(まぁ、三波にはそれがどの位凄いのかよくわからないけれど)



だが、ある時油断していたせいで冒険者に深手を負わされ、体の一部を削り取られてしまった。剣士の巨大な剣で抉られた傷は、いくらでも修復可能な体だけでなく、存在を維持するコアである核の部分にも傷をつけた。とはいえ、幸いにも傷は核表面に亀裂のような傷をつけただけだったので、はしばらく休めば再生は可能だったため、迷宮の外にあるモンスターの慰安所で眠りについたそうだ。




ゆっくりゆっくり、時間と共に体は癒され元に戻っていく。

どの位眠っていたのかよく覚えていない。だが、気がつけば体は癒え、欠けた部分もすっかり修復されていた。

これで又迷宮に戻って冒険者の相手ができると思い、喜んだ。



だが、帰ってみれば迷宮がなくなっていた。

彼が眠っている間に別世界から現れた勇者なるものによって攻略され、アダルガナリアのマスターは消滅。よって、迷宮自体も消えていた。



いくら迷宮モンスターとはいえ、こうなれば自由だ。彼が何処に行こうがお咎め無し。



だが、迷宮で生まれ育った彼に行く所は無かった。





ならば、自分を産んだ迷宮を攻略した勇者を探そうと思い立った。

何をしようと言うんじゃない。いくら迷宮生まれとはいえ、勇者に怨みも何も全くない。ただ、何となく顔が見たかっただけなのだ。顔を見て、ふ~ん、コイツが迷宮を攻略したんだなぁと思いたかっただけだ。そしてちょっと話しがしてみたかった。



その思いであちこち渡り歩き、召喚された別世界の勇者が王宮から異世界に帰還すると聞き込んだ。王宮に急いだスライムは、地下の聖堂へ潜り込んだ。



そこは酔いそうな程の魔力に溢れ返り、大勢の人間でごった返していた。その間をぬいながら、魔方陣の近くへ急いだものの、関係者でないスライムが簡単に近づける場所ではない。

やきもきしている間に何度か帰還陣が光り、何人かの勇者が別世界へ渡ってしまった。



気がつけば帰還の列に並んでいる勇者はひとり。

彼を逃がせばスライムが勇者に会える機会は二度とない。

思いきるならここしかない。





走った。正確には這ったのだが、スライムとしては帰還陣に向けて走った。最後の勇者に走り寄った。



待ってくれ。怪しい者じゃない。只、聞いてみたかったのだ。どうしてこの世界に来たのか。どうしてスライムの生まれた迷宮を消滅させたのか。

どうして、どうして。どうして。どうして。





《後はアルジ殿も知っておろ。わしの体が魔法陣の端に掛かった時、術が発動した。よって、アルジ殿はわしの体の一部と共に帰還した。



おかげでわしは又欠損スライムに逆戻りじゃ。動けなくなったところを居合わせた兵士どもに取り押さえられたわい。まぁ、幸い変わり者の魔術師がわしの身柄を引き取ってくれたがな。



尤も、界渡りした体の一部がアルジ殿に取り込まれるとは思わんかったがなぁ。

だが、そのおかげじゃろな。本来なら核を持たないスライムなぞ簡単に消滅する。なのにヤツはかなり長く生き延びた。ひとえにアルジ殿の体内にある微量の魔力を貰っていたのじゃろうな。界渡りをした名残の魔力が血脈に残っておっただろうから。



アルジ殿がコナミと名づけて可愛がってくれたあいつは、離れていてもわしの一部じゃ。根っこの部分で繋がっておった。あやつが知る事はわしも知る。あやつが経験した事はわしも感じる。こちらの世界の色んな事が感覚として伝わってきて、とても楽しかった。



だがの、いつまで経っても消滅せんコナミを、陣を描いた術師が気にし始めた。界渡りしたスライム。核が無いのに生き続けるスライム。



魔術でも剣技でも体術でも何でも、極めようとする人間の知識欲は底知れない。時には常軌を逸する程だ。。

アルジ殿を界渡りさせた術師も然り、じゃ。

何時までも消滅せんコナミをアルジ殿ごと元の世界に呼び戻そうと王家に訴え始めた。勿論、スライムの研究だとは言わんぞ。世界を守る結界にひずみが生じたとか何とか、適当な言い訳をでっち上げおったわ。

腐れ野朗じゃが、王宮お抱えの術師じゃ。信用がある分皆を騙しやすかったんじゃ。





元の世界にアルジ殿とコナミが戻れば一生飼い殺しの研究材料にされる事は間違いない。いくら何でもそれは酷い仕打ちと思ったんじゃ。

第一なぁ、コナミはわしの一部じゃからな。幸せに生活しておるならそのまま続けさせてやりたかったんじゃ》





ヤバイ。ここまで聞いただけで女3人はウルウルだ。三波もちょっとばかし鼻の奥がツンとしている。

え~~話やないか。





「で?それでスライムちゃんがこっちに来たの?でもどうやって来たの?」



真紀子が先をそくす。



《ああ。わしらモンスターじゃとて、そう捨てたもんじゃないぞ。界渡りをこなす術師位存在するわ。

わしは伝手を辿って別の迷宮のマスターに界渡りを頼んだんじゃ。王宮の面子より先にアルジ殿の元へたどり着きたかったからな。



じゃがっ、じゃ。あのクソボケ術師がああぁぁぁっっっ!わしの中から感じるコナミの思念を座標に界渡りの陣を組めと言ったのに、何をどう間違えたのかてんで頓珍漢な場所に送りおったわっ!

おかげでアルジ殿の元へたどり着くのに6の月程も掛かってしもうた。ったくぅ~~~。わしにいらん苦労をかけおって。今度会うたら目にモノみせてくれようぞ》



スライムは思い出し怒りに染まったのか、燃えるような赤に変色した。表面も刺々しい。





だけど、今のスライムの話が本当なら三波の所に異世界から誰かやって来るのだろうか?そうしたら又、あの別の世界に連行されて、しかも今度は人体実験の材料にされる?勘弁してくれ~~~って気持ちでいっぱいになった。



そこの部分をもう少し詳しく聞かねば、おちおち生活できないじゃないか。





《いやいや。王宮の術師がピンポイントでアルジ殿の元へ来るのは難しいと思うのじゃ。何故なら座標になるわしが姿をくらましたからの。座標が決定できるわしらでもかなりズレこんだんじゃ。座標なしで界渡りなぞ、ムチャもええとこじゃ。まともな考えの持ち主なら絶対にせんじゃろう。安心せぇ》 





その後も、なんだかんだ言いながらスライムの話を聞いて安心した三波たち4人だったが、彼が次に発した言葉を聞いて驚愕した。







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