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第2話

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第0.5章
快晴な一日だわ。5月4日だわ。アドリーゼさんとレベスクさんもいたずらに来ないだし…いい一日になりそうだわ。少女がベッドで目を覚さまし、頭を窓外に向けながら寝そべています。
「このまま二度寝しよう…」
そんなはずありません。少女はバイトのシフトが入っています。

「おはようございまーすー↘、シアボーネさん…」
「あ、おはよう、ジェニーちゃん」
「え?…違うわっ、おはようございます、キャロルさん、シアボーネさんは?」
少女が目を揉めて、キャロルさんに聞きます。
「今日はティツィアーノ兄ちゃん出ないよ、風邪かなにか、電話からの声も弱かったし、だから、あたしは今日、キッチンだよ」
「私もキッチンがいいな…」

「させるか!ジェニーちゃんが闇のピザを作ったら、もし誰かのお客様が吐いた、いえ、疫病に罹ったら、食品衛生検査官による突入検査でこの店が閉鎖になるわ」
「キャロルさんって言い過ぎないの?」
「全然言い過ぎではないよ。ジェニーちゃんが作ったピザは誠に、本当に、まさに兵器だから」
「わかったわ…ええっと、1軒目の住所は…」
「ジェニーちゃん、外で頑張ってきてね、あと、直帰は厳禁だ」

第1章
「毎度ありがとうございます!デリ・シー・ピザです!」
少女がピザを配達して終わって、自転車でお店に向かいます。
自転車が何十メートルくらい走ったら、横の路地裏から大判サイズ紙地図を見ながら歩く女の子が飛び出して、少女とぶつかりました。
「ハォートンーヤー…」
エルフ耳をする東側大陸風の奇妙な服装をしていた女の子です。
「大丈夫ですか?」
「お願いします。」
「わけわかりませんが...」
「ナー、シャォジェージェー…お姉さん…Tchi Hauはどこ?」
「あの辺の黄色の4階建てビルを見たか、そこら辺を右に曲がって、騎兵の銅像がある広場まで行って、真正面から時計回りで2番目の小道に入って…」
「分からない」
「言葉が通じにくいのか…」
「ない、Tchi Hau、私、行く、簡単」
「付いて来てください」
少女が「来い」という意味の手の合図を女の子に見せ、自転車を押して歩きだします。

「ひとまず自転車をお店に戻そう」

少女がピザ屋に戻りました、店の中は男の子がキャロルさんの傍に話し合っています。
「ジェニーちゃんお帰り、休憩に入ってもいいよ、ミシェル君も来たから」
「ショフリエさん?今日は休みじゃなかった?」
「ダノンが学校で暴れて、わけわからんまま休講になった、そういえば、いい加減に俺をミシェルと呼ばない?」
「ダノンって…まあ、気にならないし、ランク・ル・ブーレイ高に関わらないほうがいいわ…それより、私は今日、早く上がりたいわ、この子をTchi Hauに案内するし」
「後ろの子、奇妙な服装をしているね。俺たちの所にピザを買って持ち帰るそうもみえないね」
「らしいよ、連邦語もわずかでしか話せないし」
「ミシェル君、これ、たのむよ。 …忙しいそうにならないし…いいよ、ジェニーちゃん上がっていいよ」

少女が女の子と騎兵の銅像がある広場を横切ります。
「ここ、綺麗…」
「のんびり観光したいなら後でいいですよ、Tchi Hauまで行きたいでしょう?」
「あなた、シンメイ、友達?」
「そうですわ」
「…私、シンメイ、妹」
第2章
少女とシンメイさんの妹さんがTchi Hauに着きました。
「ここがTchi Hauですよ」
「Tchi Hau、誰もいない(Il n'y a personne)」
「ここ、待って(Attendez)」
「ああ、腕時計を持っていたらよかった、シンメイさんとシアナさんが下校の時間かどうかも分からないわ…」

その時、シンメイさんとシアナさんが自転車に乗ってきました。
「翼っちと奇妙っち?」
「『連邦語で』ユージェ姫?それに、『東部大陸語で』シンカンちゃん?どうしてここにいる?」
「『東部大陸語で』パパとママが留学を許可させたよ、それに、姉上に会いたかった」
「メイっちと奇妙っち、変な呪文を唱えている」
「彼女は私の義理の妹だよ」
「義理なの?シンメイさんの妹と聞いたら、私もびっくりしたわ、あっ、どうして私はシンメイさんの知り合いと知ったのをも知りたいわ」

「『東部大陸語で』どうしてこのお姉さんが私の知り合いと知ったかしら?」
「メイっちって連邦人じゃない?連邦語ペラペラだし」
「『東部大陸語で』姉上から送ってきた手紙で、よく翼の生えた綺麗な方を言及したから」

「あははっ、私は東の大陸の生まれで、子供の時から親に世界各地に付かれて、連邦が好きになったから、親元を離れて移住してきたわ…シンカンちゃんが翼の生えた子を見たらユージェ姫に違いないと思ったから」
「また翼のことか…」

「『東部大陸語で』荷物をもってないのはどういうことかしら」
「『東部大陸語で』クルーズ船に降りたら、連邦郵便貨物部門に預けた」
「『東部大陸語で』だめよ!連邦郵便は信頼感なんかないわ」

「うち、この呪文を学んだら、魔王を討伐するぞ、あっ、翼っちのことじゃない、昔ばなしのような悪い奴だ、あっ、翼っちが悪いのじゃない…」
「『東部大陸語で』私はこの店の上に住んでいるわ。シンカンちゃんが予告なしで来たから、部屋を用意していていないわ、今夜は私のベッドを使おう、私が床に布団を敷くわ」
「シアナさん…シンメイさんがシアナさんへの扱い方を同様にするよ…」
「『東部大陸語で』…姉上って、あの翼の子が好きなのか」
「ああ、翼っちもおこおこ怖くなった」
「『東部大陸語で』好きって…『連邦語で』何のことかしら?」
「カクさんー」

郵便のボネさんが連邦郵便のロゴが印字された行動機械に乗って4人の傍に近づきます。
「お手紙があるよ」
「『東部大陸語で』あ、私が姉上に送った手紙だ」
「『東部大陸語で』ああ、遅くない?だから連邦なんて嫌だ!『連邦語で』ありがどうございます、ボネさん」
「ストライキ期間のだいぶ前から郵便局に到着したけど、字も汚いし、地名のスペルもめちゃくちゃだったから、誰も配達してくれなかったよ。ストライキが終わって、カクさんが使いそうな文字も入っているじゃないかと思いついたから、こっちに届いてきたよ」
「『東部大陸語で』カク シンカン!」
シンメイさんが怒りました。
「『東部大陸語で』だって、連邦語なんて難しいし」

第3章
Tchi Hauの上の階のシンメイさんたちが住む部屋で、4人が机の傍に立っています。

「へぇー、シンカンさんというの?」
「ユージェお姉さん」
「あははっ、私を連邦語で呼んでくれた」
「『わけわからん語で』シュワイぺイーデジュンゴラズ」

「じゃ、私はこれで失礼するわ」
「ユージェ姫、今日はありがとうな」
「ユージェお姉さん、シェーシェー」
「シェーシェーって何なの?」
「ありがとうって意味だよ」
「こちらこそシェーシェーだわ、シンカンさん」
「『わけわからん語で』セボンジェーティーラケメイドゥヴィ」

少女が立ち去りました。
「『東部大陸語で』ね、姉上、あのサルのような女は?」
「『東部大陸語で』彼女は東部大陸語が分からなくてよかった。彼女の両親に頼まれて、彼女を引き留めたんだ。今は私と同じ高校で私の店で住み込みで働いているバイトだよ。彼女の悪口を言わない方がいいよ。彼女、この辺でけっこう影響力のある家族の娘だよ。この町の副市長まで知り合いがいるわ」
「『東部大陸語で』魔王の一族の末裔より影響力があるの?」
「『東部大陸語で』魔王って名前が残っているだけじゃない?時も進んでいるし、政体も変わったし、魔王の一族の末裔なんて今は単に落ちぶれた貴族なんだ。シンカンちゃんももっとユージェ姫に優しくしてほしいな」
「『わけわからん語で』ニダンケボんシェージュハオ」
「先からうるさい!言葉遊びする場合か?バカシアナ」

「『東部大陸語で』私が店を開くわ、シンカンちゃんがここで休憩していいわ」
「『東部大陸語で』私も手伝うよ」
「呪文がたくさん…うち分からないよ、あ、うちも分かる呪文があるぞ『極東語で』リンゴがこんばんは、くたばれ焼酎みずうみ!」
「シアナ、さぼらないで、店の営業に手伝いなさい」

「『海峡語で』行かないぞ、シンメイってバーカ」
「私が海峡語を知らないと思ったかしら?殴ってあげないと思っているのかしら?」

「シアナ、頑張ります」
第3.5章
「誰だって不完全であるが、不完全な我々は、やがて自分を補完できる人間に出会える」

少女が独特な形状をした大きな襟が特徴のトップスと暗い青の色をするスカートを着て、周りが時々配線もぐちゃぐちゃに電柱も見えて木造方形建物が乱立する街で立っています。人がそこそこ通りかかるが一人も連邦語を話しません。

「そんな夢を見た」

「法律はグルテンのようなもので、あまり綺麗なものではない。 しかし、グルテンがあれば、卵と砂糖は一緒に混ぜることができ、好きな材料を加えてくっつけることができる。 私たち法律関係者がすることは全て、不様であっても必要なことであり、グレーは私たちを通してしか生まれない。 多くの人がグルテンを非難するが、グルテンがなければ、小麦粉でできた食べ物はただのクソみたいなものだ」

少女がきちんとしたスーツを着て立っています。向こうの長い台の後ろに座っているまじめな顔をしているおじさんとおばさんたちに向かって、何かを述べています。

「また別の夢だった」

少女が自分の部屋のベッドから立ち上がります。
「私の声らしくないわ。誰が語り手なの?」

少女が窓外に眺めます。まだ日が高いままです。
「私って、昼寝をあまりしなかったのだったじゃない?」
第4章
「種族は、一人の個人と同様に、それぞれユニークで特別な、際立った才能を持っている…私もそうなの?…」

少女が夢で見た言葉を考えながら、窓際から机に体を移って、宿題を書き始めました。
日が暮れるようになってきました。いくつかの学科の宿題が終わって、基礎法学でしか宿題が残りませんでした。

「暗くなった、ライトを付けよう…シンメイさんやリョネルさんちのように天井にライトが付いているデザインが羨ましいわ…ああ、昨日に気づいたらよかったのに…線路がメンテナンスじゃなかったわ。これは、白熱灯の電球を買い換えないとなおらないわ、タングステン線だけ変えたらいいじゃない」

少女が暗闇の中で、机の上のライトに電球を取り出して観察しようとしています。
「ダンボワーズ駅って営業している店がないらしいね…そういえば、エディスおばさんが紹介した、エグランティーヌさんの家族が経営しているのは…トロワヴィルだったっけ?あそこは夜でも営業しているじゃない?…そこに行くわ、ついでにロウソクもマッチも少し買って備えよう」
少女が暗闇の中で、1本のマッチを燃やして、階段を降ります。木製ドアの内側に、石壁にかべにもたれている自転車を押しながら木製ドアを通ります。量産型の鉄のカギをかけて、少女が自転車で出かけます。
「夜だったし、街灯のある道を通そう」
少女がジュール・ラヴォー街道に沿って自転車で走ります。

「憲兵さん…何の話だ?俺、これから仕事にいかないいけないだ!」
「あそこの公衆電話で家族と保険会社に掛かってきなよ、それとも警察署に連れてほしいのか?逃してあげているのに、感謝してくれよ」
憲兵の印のあるとない行動機械が路側にそれぞれ止まっていて、お酒臭いがするおじさんとミノさんが話し合っています。
「やっぱ憲兵って大変だわ」
第5章
「新品電球丸ごとだけ?タングステン糸の単品が売ってないのか…やっぱ高いわ」
少女は電球がたくさん置かれている棚の前に葛藤しています。

トロワヴィルのロゴが印字されている服を着て、狼のミミが生えている男の子が商品が積むハコを持って少女に向かいます。
「ダノン・D・マータン…」
少女は男の子がついているネームプレートを見て言います。
「ご用件がございますか?」
男の子が顔に傷が付いています。
「あ、いいえ…やっぱ気になりますね、私、ショフリエさんのバイト先の同僚です。ショフリエさんから聞いたことですが…怪我でもしましたの?」
「ああ、そういうご関係ですか。…(小さい声で)ミシェルって口が軽いバカだからな」
「あのう、私でよければ、相談に乗りますわ、ほら、見て」
少女が翼を振ります。男の子が少女の翼にボーと見ます。
「…よし、決めた…あ!後ろの商品を気を付けてください、お姉さん」
「あっ!ごめん…危ないところだった、またやっちゃったわ」
「僕の話を聞きたいなら、僕が今休憩に入りますよ、あそこのスダッフルームの入り口に待ってくれる?」
「いいわ。あっ、これ、タングステン糸だけバラ売りしていない?」
「タングステン糸だけなんて…僕の話を聞いてくれたら、電球くらいサービスにしてやるよ、僕の給料から除けばいいんだ」
「ありがとう、ダノンさん」
「お安いご用だ。魔王のお姉さん」
「私はジャンヌ=ユージェニー・ド・ルプレイヌ=ド=メというだわ。名前がそこそこ長いから、皆ユージェさんと呼んでくれるわ」
「ユージェ…ジェニーさんが僕にとって読みやすいけど、そっちでいい?」
「どっちでもいいわ、私はそこに行くわ」
少女がカートを押しながら向こうに行きました。
「ジェニーさん…ジェニー…五月…」
その時、男の子の暗い目に、光が入ってきそうです。

幕間1
ここは極東の国です。「ここは長野崎県長野崎市稲幸山!世界一夜景を目指す!」という鉄の看板の近くに女の子2人が、極東スタイルの小さい行動機械の中に座って、山の下を眺めています。

「稲幸山ってきれいだったわ」
「切子、機械の頭上のガスライトの明かりで、もう一回、地図をよく見てちょうだい?チャンスは一回のみだ。後からのやり直しなんかないよ」
「ね、由理依、それ、本当に効くのか?」
「試したことないだけど、切子も、極東に未練が残るのなら、行動機械から出て構わないよ、僕、一人で行くよ。速度が出た状態に壁に塗られている魔法陣に当てることは、危ないのを特に知っているから」
「不安すぎてたまらないけど、私は由理依とその魔法陣を信じるわ」
「早く行かないと、誰かに消されたぞ」

行動機械はどんどん加速していて、山から下ります。
「1号カーブ、もっと早く加速してほしいわ」
「わかっているってば」

「5号カーブ、もっと内側によって」
「オッケー」

「16号カーブ通過だったわ」
「よし、順調だ、もっと加速するぞ」

行動機械が速いまま市街地に突入しました。
「よし、ここからは一直線だ、アクセル全開だぜ」
「あ、子猫が道を通そうとしているわ」
「切子、目を閉じて、いまその子猫を譲ったら、僕たちのほうが亡くなるぞ」
「ん…」

直線の道路の末端で、石の壁にきちんとした形状に文字がたくさん書かれています。
「魔法陣、頼むよ」

行動機械が街中で消えてしまいました。女の子2人が騒めいた町は静かに戻りました。

第6章
スダッフルームの中に、少女とダノンさんが木製の足が低いテーブルでお互いに向いあって木製の背もたれのない椅子に座っています。
「変わった家具の配置だわ」
「マネージャーがこういう東側大陸の家具が好きだったから」

ダノンさんが2個の白い小さい茶碗をお湯の入っている大きい茶碗に入れて、すすいで、乾して、後ろケースから黒い円盤状の堅いものを叩いで、黒い屑を小さい茶碗に入れて、お湯でとかします。
「これは何の?」
「東側大陸から運んで来た変わったものだ。烏龍茶というんだ。手間がかかるけど、コーヒーよりすっきりした味をするよ」
「休憩時間でこんなに楽なんて、私も別のバイトをやめて、ここで働きたいわ」

「あははっ、それより、僕の話って、ジェニーさんに通じると直感したから、話し合いたいな…朝の奴らが分かってくれないから喧嘩までしちゃったよ」
「あははっ…」

「ジェニーさんって神を信じるほうか?」
「信じるかどうかが分からないけど、世には百科全書でも解釈しきれないことが山ほどあるの、よその力が介入してくるじゃない?」

「神って、一人か、複数人か、それとも人間が想像できない形なのか、誰も断言できない」
ダノンさん小さい茶碗に入っている液体をひと口飲んで、話します。

「でも、もし神がいたら、「人間が思索すれば、神は笑う」 」
「ええ」

「たった一人の人間だと世界の真実を握るわけない。世界の真実だけでなく、自分自身を見出すこともできない。」
「それな」

「A市に旅行したほうがいいのか? 結婚したほうがいいのか? この会社に入ったほうがいいのでしょうか?絶対なる正解なんてないじゃない」
「確かに」

「各種族は亀のようにゆっくりと這いと正反対に、連邦は列車のように急速に発展が進んでいる。私たちも、ますます外界の制約を受けるようになっていて、誰も逃れることのできない制約で、私たちはますます互いに似てくるじゃない?」
「…確かにそうだわ」

「でも、例え一生に掛けて正解なんてたどり着けなくても、私たちに与えられた使命は、思想を促進することであり、商店の中に客を笑顔で挨拶するのではなく、工場の炉に火をつけるのではなく、信仰と思想の燃える炎を維持し広めることではないか」

「使命って言っても、最終的にお金がないと社会で生きていられないじゃない?」

「…お金に依存して生きることが正しいかどうか、高校を卒業した後師範学校に進学するかどうか、僕にも分からない。でも、いつか東側大陸に行ってみたいな」
「あははっ、ダノンさん頑張って、東側大陸に行ったらお土産送ってくれよ」

男の子の目の中が光っています。すると、男の子が立ち上がって、机に何かを書いて、何かの文字が書かれている小さい紙を少女に渡しました。
「ジェニーさん今日はいっぱい聞いてくれてありがとう、相棒よ、いつでも家に来ていいよ…(小さい声で)「極東語で」五月ちゃん」

第6.5章
少女がスーパーマーケットを出て、紙袋を持って自転車のハンドルに掛けて、自転車を押して歩いています。
「やばっ、包装が適当し過ぎて割れそう、ダノンさんって賢いけど、仕事をまじめにしていないわ」
少女がオノレ大通りで「止まれ」のサインが「行け」に変わることを待ちます。

「…それは幻想であり、少なくとも私たちの夢である。 この夢は何度も裏切らたが、私たちの小さな世界を遥かに超える博愛のために、私たち全員を結びつけるのに十分な強さを持っている。 しかし、私たちは、個人が尊重される世界が、もろくも崩れ去ってしまうことを最初から知っている…」
ダノンさんがした話は、少女の夢見た不思議なゆめの記憶の欠片を再び起こしてしまいました。

サインが「行け」に変わって、少女が歩き出しました。
この時、横から一台の行動機械が突入しました。
「っきゃ!」
少女が翼を振って、空に飛んで回避しましたが、自転車と紙袋が行動機械に引かれてしまいました。

憲兵さんが来ました。
「ったく、またオノレ大通りかよ、あなたたち、サインが見えないのか?」

「だからサインが紛らわしいわ」
「だからサインが紛らわしいだ」
少女と行動機械に乗った男の人が同時に言いました。
第7章
5月5日、少女が学校に行く日です。少女は目が覚めました。日が未だに昇っていません。
「今日は起きるのは早かったわ」

少女はボロボロの紙袋から割れた電球の中のタングステン糸を取って、古い電球にいれます。
「昨日は大変だった…よし、ついた、でも暗いなあ…。電球も天国に行ったし…でも、タングステン糸が手に入れているし、マッチとロウソクも無事だったし…まあいいっか、汚れた電球はまた今度交換しよう」
少女はライトを付けます。ライトはタングステンの蒸発で灰色の灯りがつきます。

「いかなるのものも、根拠なしで存在するのではない…」
少女は中学校の社会科で学んだ言葉を語りながら、昨日から残っていた基礎法学の宿題をしています。
「やっと終わったわ。ああ、自転車は…レイトさんの所においてしまった…メモを置いて無しで私の自転車と知っているのかしら…直してくれるのかしら…」

「今日はどうやってティボービルに行くの…そうだ、私の背中の「あれ」が…でも、まだ講習を受けていないの…ああ、昨日ミノさんも…そういえばガルデさんの彼氏も…ここら辺の人間はルールに緩いじゃない?ならば私も…よし、決めたわ」

日が昇りました。少女は部屋着を着替えて、魔王城を出ます。翼を振って、空を飛びます。
「子どもの時に、父に𠮟られてから一度もこんな高いところまで飛んだことがないの…シンメイさんとの時も人並みの高さくらいでしか飛ばなかったわ…魔王城ってこういう構造なのか、初めて知ったわ…人も行動機械も木も建物も小さい…やはり高くて怖い…」
少女が地面に降りました。

「シンメイさんの所に行こう」

Tchi Hauの上の階の外で、少女が窓を叩きます。
「はーい?...って、ユージェ姫じゃないかしら?今日は朝早いだわ。入ってきてね。玄関ってこっちじゃないわ、次から階段を通って昇ってほしいわ」
「あ、不審者だ、メイっち、早く店の電話を取って通報して」
「『東部大陸語で』どうして朝から騒いだの?あ、『連邦語で』ユージェお姉さん、おはよう」
「『連邦語で』皆さんおはよう『東部大陸語で』シンカンちゃん、おはよう『連邦語で』一緒に学校に行こう」

第8章
「ユージェお姉さん、ここ、シンメイ、頑張る」
「はい?」
「シアナ、頑張らない、シンメイ、意地悪」
「私の妹に真似するじゃない!」
「痛ってば、またおこおこシンメイさんを召喚しちゃった」

「ああ、それのことかしら。それは私が昨晩作ったボードだわ」
「 「私が新入りで、連邦語をあまり話せません。ご注文は指差しでお願いします。」シンメイさんってすごいわ。一晩でこれと連邦語と東部大陸語の入ったメニューボードを作ったのね」
少女が机の上に置かれている手作りの2枚のボードを見て言います。
「それはそうだわ。シンカンちゃんもシノワ料理を作れるし、あさイチから営業できるわ…ここら辺の中学校に編入させたいけど、まだ連邦語が問題だわ。ひとまずお店の手伝いをしてもらうわ」

Tchi Hauのショーウィンドウの前で4人が立っています。
「『東部大陸語で』姉上、安心して行ってきな、このボードがあれば私は大丈夫だわ」
「『東部大陸語で』行ってくるわ。シンカンちゃん、お店とお留守番頑張ってきてね」
「『東部大陸語で』シュウマイ!『連邦語で』奇妙っち、頑張って」
「シアナってたまにノーマルになるわ、いつもこのまま保てば、私も苦労しないし」
「私がシアナさんと共に住んだら、多分私かシアナさんかどちらかが殺人事件の被害者になるわ。シンメイさんも大変だったわ」
「いやーそれほどでもないよ、うちを育ててくれたこの下ブルティノー市にも感謝の言葉を」
「褒めてないわ。それと下ブルティノー市の全市民に謝れ」

少女が翼で低く飛びながら、自転車に乗っているシアナさんとシンメイさんと話します。
「翼っち、ずるーい、うち、翼っちと交換したいな、魔王の一族の力を手に入れて、あっちこっち飛び回って、世界中のシュウマイを食べ尽くすぞ」
「あははっ、シアナさんずいぶんシュウマイ熱心だね」
「バカシアナって、どうしていつもバカなことしか考えないかしら」
「バカをいう奴がバカだぞ」

「あら、シアナって自分がバカだと認めた?」
「バカばかりに群れをなし!」
「ただの共倒れじゃん」
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