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第6章:永遠の誓いと甘美な監禁
第30話:永遠を誓う口づけ
昨夜の熱く、そしてどこまでも優しかった愛の交歓の余韻が、まだシーツの間に、そして二人の肌の間に、甘く残っている。
律は、ルシアンの逞しい腕に抱かれたまま穏やかな寝息を立てていた。
その無防備で安心しきった寝顔を、ルシアンは何時間でも見続けていられると思った。
やがて、窓の外が、ほんのりと白み始める。
永遠の夜を統べる王が、その生涯で、これほどまでに朝の訪れを待ち遠しく、そして愛おしく思ったことはなかった。
「……ん……」
律の睫毛が、微かに震える。ゆっくりと開かれたその瞳が、すぐ目の前にあるルシアンの顔を捉え、幸せそうに、ふにゃりと細められた。
「……おはよう、ルシアン」
「ああ、おはよう。私の、セドリック」
ルシアンは、その額に、朝の挨拶代わりの、優しい口づけを落とす。
「よく眠れたか?」
「うん……。お前の腕の中が、世界で一番、安心するから」
律は、まるで猫がするようにルシアンの胸板に、するりと頬を寄せた。
仕草の一つ一つが、ルシアンの心を、どうしようもなく満たしていく。
「昨日の夜……すごかったな」
律が、少し照れたように、ぼそりと呟いた。
「ああ。お前が、初めて、私にすべてを委ねてくれた夜だ。忘れるものか。
あんなにも満たされた夜は、私の永い生の中で初めてだった」
ルシアンは、律の柔らかな髪を慈しむように、ゆっくりと指で梳く。
「お前は、美しかった。
私を求め、私の腕の中で、愛に蕩かされていくお前の姿は、この世のどんな芸術品よりも、私の心を奪った」
「……ばか。あんただって、すごかったくせに」
律は、顔を赤らめながら、ルシアンの胸を、ぽすりと軽く叩いた。
その仕草さえもが、ルシアンにとっては、たまらなく愛おしい。
彼は、律の身体を、毛布ごと、ふわりと抱き上げた。
「おい、どこへ行くんだ」
「お前に、見せたいものがある」
ルシアンはそう言うと、律を抱いたまま、寝室に併設された、広大なバルコニーへと向かった。
ひやりとした、朝の冷気が、火照った肌に心地よい。
バルコニーから見下ろす森は、まだ夜の気配を色濃く残していたが、東の空の果ては、燃えるような、美しいグラデーションに染まり始めていた。
――夜明けだ。
かつて、律が焦がれ、ルシアンが忌み嫌った、世界の理。
「綺麗だ……」
律が、その荘厳な光景に、感嘆の息を漏らす。
「ああ。だが、私にとっては、お前こそが、私の世界の、唯一の太陽だ」
ルシアンは、律をバルコニーの手すりにそっと座らせると、その前に跪いた。
そして、律の手を取り、その甲に、騎士が姫に誓うように、敬虔な口づけを落とす。
「セドリック」
ルシアンは、律の瞳を、真っ直ぐに見上げた。
その紅い瞳には、今、一点の曇りもない、純粋な愛と、そして、永遠の誓いが宿っている。
「お前に、誓おう。
この私の永劫の魂、すべてを賭けて。
私は、永遠に、お前だけを愛し続ける。
お前の喜びは私の喜びとなり、お前の痛みは私の痛みとなる。
お前のいない一瞬など、もはや、私には存在しない」
「お前のその美しい瞳が、涙で曇ることがないように。お前のその柔らかな唇が、悲しみに歪むことがないように。この世界の、ありとあらゆる脅威と絶望から、私が、お前を守り抜こう。
お前がいれば、きっと、瞬きほどの短さで過ぎていくであろう私の未来のすべてを、お前に捧げることを、許してはくれないだろうか」
それは、支配者の命令ではない。
ただ一人の人間を、その魂のすべてで愛してしまった、吸血鬼の王からの、切実で、真摯な、プロポーズだった。
律の瞳から、一筋、美しい涙がこぼれ落ちた。
それは、悲しみや、恐怖の涙ではない。
ただ、どうしようもないほどの、幸福感からくる、……温かい涙だった。
「……馬鹿だな、お前は」
律は、そう言って、幸せそうに、微笑んだ。
「許すも、許さないも、ないだろ。俺は、もう、お前のものなんだから。
俺の未来も、魂も、とっくの昔に、お前に奪われてる。
だから……今更だ。
俺も、お前と一緒に生きていく。
お前が、その永い生に飽き飽きするくらい、ずっと、ずっと、傍にいてやるよ。お前の孤独は、俺が終わらせてやる」
その言葉は、ルシアンが、何千年もの間、聞きたくて、聞きたくて、たまらなかった、最高の答えだった。
「―――ああ」
ルシアンは、感極まったように、律の身体を強く、強く抱きしめた。
そして、二人の唇が、自然に、重なり合う。
最初は、鳥の羽が触れるような、優しいキス。
やがて、それは、互いの存在を確かめ合うように、深く、そして、貪るような、濃密な口づけへと変わっていく。
舌と舌が、熱く、絡み合う。互いの唾液が混じり合い、魂が溶け合っていくような、背徳的で官能的な感覚。
ルシアンの大きな手が、律の腰を、そして、丸みを帯びた臀部を、所有欲を隠すことなく、大胆にまさぐる。
律もまた、その支配を甘んじて受け入れ、もっと、とでも言うように、ルシアンの首に、しがみついた。
朝日が、完全に、その姿を現す。
世界が、新しい光に満たされていく。
その光の中で、二人は、永遠とも思えるほど、長く、深く、愛を確かめ合うように、口づけを交わし続けていた。
監禁から始まった、歪な恋。
今、ここで、一つの愛の形となった。
律は、ルシアンの逞しい腕に抱かれたまま穏やかな寝息を立てていた。
その無防備で安心しきった寝顔を、ルシアンは何時間でも見続けていられると思った。
やがて、窓の外が、ほんのりと白み始める。
永遠の夜を統べる王が、その生涯で、これほどまでに朝の訪れを待ち遠しく、そして愛おしく思ったことはなかった。
「……ん……」
律の睫毛が、微かに震える。ゆっくりと開かれたその瞳が、すぐ目の前にあるルシアンの顔を捉え、幸せそうに、ふにゃりと細められた。
「……おはよう、ルシアン」
「ああ、おはよう。私の、セドリック」
ルシアンは、その額に、朝の挨拶代わりの、優しい口づけを落とす。
「よく眠れたか?」
「うん……。お前の腕の中が、世界で一番、安心するから」
律は、まるで猫がするようにルシアンの胸板に、するりと頬を寄せた。
仕草の一つ一つが、ルシアンの心を、どうしようもなく満たしていく。
「昨日の夜……すごかったな」
律が、少し照れたように、ぼそりと呟いた。
「ああ。お前が、初めて、私にすべてを委ねてくれた夜だ。忘れるものか。
あんなにも満たされた夜は、私の永い生の中で初めてだった」
ルシアンは、律の柔らかな髪を慈しむように、ゆっくりと指で梳く。
「お前は、美しかった。
私を求め、私の腕の中で、愛に蕩かされていくお前の姿は、この世のどんな芸術品よりも、私の心を奪った」
「……ばか。あんただって、すごかったくせに」
律は、顔を赤らめながら、ルシアンの胸を、ぽすりと軽く叩いた。
その仕草さえもが、ルシアンにとっては、たまらなく愛おしい。
彼は、律の身体を、毛布ごと、ふわりと抱き上げた。
「おい、どこへ行くんだ」
「お前に、見せたいものがある」
ルシアンはそう言うと、律を抱いたまま、寝室に併設された、広大なバルコニーへと向かった。
ひやりとした、朝の冷気が、火照った肌に心地よい。
バルコニーから見下ろす森は、まだ夜の気配を色濃く残していたが、東の空の果ては、燃えるような、美しいグラデーションに染まり始めていた。
――夜明けだ。
かつて、律が焦がれ、ルシアンが忌み嫌った、世界の理。
「綺麗だ……」
律が、その荘厳な光景に、感嘆の息を漏らす。
「ああ。だが、私にとっては、お前こそが、私の世界の、唯一の太陽だ」
ルシアンは、律をバルコニーの手すりにそっと座らせると、その前に跪いた。
そして、律の手を取り、その甲に、騎士が姫に誓うように、敬虔な口づけを落とす。
「セドリック」
ルシアンは、律の瞳を、真っ直ぐに見上げた。
その紅い瞳には、今、一点の曇りもない、純粋な愛と、そして、永遠の誓いが宿っている。
「お前に、誓おう。
この私の永劫の魂、すべてを賭けて。
私は、永遠に、お前だけを愛し続ける。
お前の喜びは私の喜びとなり、お前の痛みは私の痛みとなる。
お前のいない一瞬など、もはや、私には存在しない」
「お前のその美しい瞳が、涙で曇ることがないように。お前のその柔らかな唇が、悲しみに歪むことがないように。この世界の、ありとあらゆる脅威と絶望から、私が、お前を守り抜こう。
お前がいれば、きっと、瞬きほどの短さで過ぎていくであろう私の未来のすべてを、お前に捧げることを、許してはくれないだろうか」
それは、支配者の命令ではない。
ただ一人の人間を、その魂のすべてで愛してしまった、吸血鬼の王からの、切実で、真摯な、プロポーズだった。
律の瞳から、一筋、美しい涙がこぼれ落ちた。
それは、悲しみや、恐怖の涙ではない。
ただ、どうしようもないほどの、幸福感からくる、……温かい涙だった。
「……馬鹿だな、お前は」
律は、そう言って、幸せそうに、微笑んだ。
「許すも、許さないも、ないだろ。俺は、もう、お前のものなんだから。
俺の未来も、魂も、とっくの昔に、お前に奪われてる。
だから……今更だ。
俺も、お前と一緒に生きていく。
お前が、その永い生に飽き飽きするくらい、ずっと、ずっと、傍にいてやるよ。お前の孤独は、俺が終わらせてやる」
その言葉は、ルシアンが、何千年もの間、聞きたくて、聞きたくて、たまらなかった、最高の答えだった。
「―――ああ」
ルシアンは、感極まったように、律の身体を強く、強く抱きしめた。
そして、二人の唇が、自然に、重なり合う。
最初は、鳥の羽が触れるような、優しいキス。
やがて、それは、互いの存在を確かめ合うように、深く、そして、貪るような、濃密な口づけへと変わっていく。
舌と舌が、熱く、絡み合う。互いの唾液が混じり合い、魂が溶け合っていくような、背徳的で官能的な感覚。
ルシアンの大きな手が、律の腰を、そして、丸みを帯びた臀部を、所有欲を隠すことなく、大胆にまさぐる。
律もまた、その支配を甘んじて受け入れ、もっと、とでも言うように、ルシアンの首に、しがみついた。
朝日が、完全に、その姿を現す。
世界が、新しい光に満たされていく。
その光の中で、二人は、永遠とも思えるほど、長く、深く、愛を確かめ合うように、口づけを交わし続けていた。
監禁から始まった、歪な恋。
今、ここで、一つの愛の形となった。
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