発情期のタイムリミット

なの

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発情期の始まり

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翌朝、陸は母親の声で目を覚ました。

「陸、大丈夫?」

母親が心配そうに陸の額に手を当てる。熱は少し下がっているようだったが、まだ微熱がある。

「うん……昨日よりはマシ」

実際、昨夜の地獄のような辛さに比べれば、今は幾分楽になっていた。

「そう。でも今日も学校はお休みよ。無理しちゃダメ」

母親は陸に朝食を持ってきてくれた。食欲はないが、少しでも食べなければと思い、陸はお粥を口に運んだ。

「ありがとう、お母さん」

「どういたしまして。今日は私も会社休んだから、何か必要なものがあったらすぐに言って」

母親が仕事を休んでまで看病してくれることに、陸は申し訳なさを感じた。

「ごめん……」

「謝らなくていいのよ。これも大切な仕事だから」

午前中、陸はベッドで静かに過ごしていた。
体調は安定しているが、時々体の奥から熱が湧き上がってくる。

昼頃、スマホに大輝からメッセージが届いた。

《大輝:昼休み。調子どう?》

《陸:昨日よりは良くなった。ありがとう》

《大輝:良かった。でも無理すんなよ》

《陸:大輝は試験大丈夫だった?》

《大輝:まあまあ。お前のことが心配で集中できなかったけど》

その言葉に、陸の胸が温かくなった。

《陸:心配かけてごめん》

《大輝:だから謝るなって。放課後、見舞いに行ってもいい?》

《陸:今、ちょっと変な状態だから……》

《大輝:変な状態?》

陸は返信に困った。発情期のことを、どう説明すればいいのか。

《陸:その……発情期だから……》

《大輝:だから何だよ。俺はお前の幼なじみだろ》

《陸:でも……》

《大輝:お前が嫌じゃなければ、行く》

陸は迷った。
大輝に会いたい気持ちはある。でも、この状態の自分を見せるのは恥ずかしい。

《陸:……来て》

《大輝:分かった。早めに行くから》

午後になり、解熱剤を飲んでも、体の奥の熱は収まらない。むしろ、時間が経つにつれてどんどん酷くなっていく。

そんな中、大輝がやってきた。

「こんにちは。陸の具合はどうですか?」

玄関で母親と話している大輝の声が聞こえる。

「ありがとう。少し良くなったり悪くなったりを繰り返してるの」

「そうですか……」

「でも、大輝くんが来てくれたら喜ぶと思う」

母親に案内されて、大輝が陸の部屋にやってきた。

「よう、調子はどうだ?」

大輝の姿を見た瞬間、陸の心臓がバクバクと鳴り始めた。

「大輝……来てくれたんだ……」

「当然だろ」

大輝は陸のベッドサイドの椅子に座った。
その瞬間、陸の甘い香りが大輝の鼻をくすぐる。

「匂い……昨日より濃いな」

「ごめん……」

陸は恥ずかしそうに布団を頭まで被った。

「謝るなって。別に嫌じゃないから」

大輝は陸の頭を優しく撫でる。その手の温もりに、陸は思わず小さく声を漏らした。

「ん……」

「大丈夫か?」

「うん……でも、なんか変」

陸は布団から顔を出して、大輝を見つめた。頬が赤く、瞳が潤んでいる。

「変って?」

「大輝を見てると……ドキドキして……頭がぼーっとする」

その告白に、大輝の胸が高鳴った。

「俺も、お前を見てるとドキドキする。特に今のお前は……」

大輝は言葉を途中で止めた。

「今の俺は?」

「……すごく可愛い」

その言葉に、陸の顔がさらに赤くなった。

「そんなこと言わないで……」

「本当のことだろ」

二人の間に、甘い空気が流れた。陸の香りが部屋に満ちて、大輝の理性を揺さぶる。

「陸……」

「何?」 

「俺に、何かできることはないか?」

大輝の真剣な表情に、陸の胸がきゅっと締め付けられた。

「そばにいてくれるだけで……十分」

「そうか」

大輝は陸の手を握った。
その瞬間、陸の体に電流が走ったような感覚がする。

「あ……」

「どうした?」

「手……繋がれると……変な感じ……」

陸の正直な反応に、大輝はドキッとした。

「嫌?」

「嫌じゃない……でも……」

「でも?」

「もっと……触って欲しくなる……」

その言葉に、大輝の心臓が激しく鳴った。

「陸……」

「大輝……」

二人の距離がどんどん縮まっていく。大輝は陸の頬に手を当てた。

「熱いな……」

「うん……でも、大輝に触られてると……気持ちいい……」

陸の素直な言葉に、大輝は理性を保つのが困難になった。

「陸……俺……」

大輝が何かを言おうとした時、母親の声が聞こえた。

「陸、お夕飯よ」

二人は慌てて離れた。

「大輝くんも一緒に食べていく?」 

「いえ、俺はもう帰ります」

大輝は立ち上がったが、陸が慌てて手を伸ばした。

「待って……もう少しいて……」

「でも……」

「お願い……」

陸の潤んだ瞳に見つめられて、大輝は断ることができなかった。

「……分かった。もう少しいる」

母親が夕食を持ってきてくれた。陸はあまり食欲がなかったが、大輝がいてくれることで少しは食べることができた。

母親は二人の様子を見て、何かを察したような表情を見せた。

夜八時頃、大輝は帰ることになった。

「また明日、様子見に来るから」

「本当?」

「本当だ。お前のことが心配だから」

玄関で、大輝は母親に挨拶した。

「今日はありがとうございました」

「こちらこそ。陸のこと、よろしくお願いします」

「はい。俺、陸のこと絶対に守りますから」

その言葉に、母親は少し驚いた。

大輝が帰った後、陸の症状は再び悪化した。体が火照って、どうしようもなく大輝のことを考えてしまう。

「大輝……」

夜中、陸は何度も目を覚ました。体の奥から湧き上がってくる、どうしようもない想い。

これが発情期なのか。
こんなに辛くて、でも同時に甘い気持ちになるものなのか。

スマホを見ると、大輝からメッセージが届いている。

《大輝:大丈夫?》

陸は嬉しくて、すぐに返信した。

《陸:ありがとう。大輝がいてくれただけで、すごく安心した》

《大輝:そうか。俺もお前といると落ち着く》

《陸:明日も来てくれる?》

《大輝:もちろん。お前が嫌がらない限り、毎日でも行く》

明日も大輝が来てくれる。それだけで、この辛い夜も乗り越えられそうな気がした。

でも同時に、陸の心の中には新たな不安も芽生えていた。

大輝への想いが、どんどん大きくなっていく。もう、友達としての感情ではない。

これは……恋なのか。
陸は枕に顔を埋めて、複雑な気持ちで夜明けを待った。


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