ー消えゆく前に君とー

-僕-

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1話 日常

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ミンミンミン・・・  

「桜井ー、、も欠席、、、島田ー、、も欠席」   

広い教室に担任の細々とした声が、死に際の蝉の声にも負けそうに響いた。

外から漏れ出てくる蝉の声も、日に日に早短くなる日照時間も減っていくクラスメイトも、そのすべてが夏の終わりを告げていた。

---世界の終わりを告げていた。



この日、ついにクラスメイトが2人だけとなった。。。



----5ヵ月前----



「あの有名アイドルグループの元メンバーにまさかの不倫疑惑がかけられ。。。」

リビングから流れてくる朝の報道番組の音で僕は目を覚ました。

「おはよー母さん」

父さんの仏壇に手を合わせる母に声をかける

「おはようユウキ ごめん起こしちゃった?朝ごはんナニが食べる?ホットケーキ焼いてあげようか?」

「いや今日は早起きしたし自分で作るから母さんは休んでていいよ。昨日の晩ご飯のお惣菜残ってたよね?」

いつもは母が会社に行く前に起こしてくれるんだけど今日は小さなテレビの音声で起きるほど眠りが浅かったみたいだ。

寝起きで重たい体を引きずりながら、まだ眠気が残るまま目をこすりながら台所に向かった。

冷蔵庫から昨日の晩ご飯が入ったタッパーを電子レンジに入れて加熱を開始した。

ジジジジジ——チーン。

電子レンジの終わりを告げる音とほぼ同時に、仏壇の鈴が鳴った。

母が鳴らしたのだ。

それは、一か月前に亡くなった父の仏壇。

母は何かを言うわけでもなく、ただ手を合わせ、しばらくの間じっと動かなかった。

そして、ふと我に返ったように立ち上がると、静かにメイクを始めた。」

父さんはちょうど1か月前に亡くなったんだ。。。

ガンだと判明し、余命宣告もされていた。

心の準備をする時間はあったはずなのに、残された僕たちに大きな傷が残った。

それでも、徐々に日常を取り戻しつつあった。

母は最近、仕事に復帰した。

父と同じ介護の職場だったこともあり、同僚たちから心配され、少し長めに休みをもらえていたのだという。

僕が朝食を食べ終わりテレビを見ていると準備を終えた母が僕のもとへ歩いてきた。

「ユウキ、大丈夫。あなたは私が守るから、何があっても一人にはさせない。」

そう言って母は僕を後ろから抱きしめた。

突然の母の行動に僕は少し照れくさくて、肩をすくめながら、全力で絞り出した感謝の言葉を小さな声で地面に向かって吐いた

「ありがとう」

母は一度、大きく深呼吸をして静かに手を離した。

「それじゃあ、行ってくるね」

「うん、行ってらっしゃい」

バタンと戸が閉まる音がするまで硬直状態でいた。

「ちょっと試験勉強でもしてから学校行こうかな」

大学受験を控えた僕はカバンから問題集と筆記用具を取り出し勉強を開始した。

「こちら、最新のニュースです。NASAが本日、驚くべき発表を行いました。半径10キロメートルにも達する巨大隕石が、地球の近隣領域に位置する銀河団で発見されたというのです。この隕石は現在、地球から約1,200万キロメートルの距離にあり、数ヶ月以内に接近する可能性があると報告されていますが現時点では地球への影響は考えられていません------」

「さて、次のニュースは今日から東京で開かれる動物とのふれあいイベントについてでーす。現場に竹井アナウンサーがいます。竹井さーん」

「まずい、もうこんな時間!」

朝の報道番組に映し出された時計をみて時間を確認した僕は焦って家を出た。

学校へは走って15分ほど。

自転車が新学期早々にパンクして使い物にならないので自分の足で行くことになる。

「パンクしてたの忘れてた。間に合うかな」

なんて小言を吐きながら僕は学校へ駆け出した。
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