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2話 映画の話?
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「パンクしてたの忘れてた。間に合うかな」
なんて小言を吐きながら僕は学校へ駆け出した。
春の朝の空気はまだ少し肌寒く、走るほどに頬がひんやりとする。
けれど、額にはじんわりと汗が滲み始めていた。
見上げると、家のそばの桜はまだ花を残しているものの、枝の隙間には小さな黄緑の葉が芽吹き始めている。
この前の雨でほとんどの花が地面に落ちてしまっていた。
‹満開の桜を見られるのはまた来年か›、なんて考えていると
ーーチリンチリン
真後ろから自転車の呼び鈴が鳴る。
「ユウキが遅刻しそうなの珍しいじゃん、カバン持ってあげるわ。」
突然の出来事に一瞬体がびくっとしたが、聞き慣れたその声にすぐ誰だかわかった。
「びっくりした!いきなり後ろから話しかけるなよ」
話しかけてきたのは高校1年から仲良くなった 井上 祐輔 だった。
祐輔はいいやつだ。穏やかでフレンドリー、正義感も強くておまけにイケメン。
今、僕が元気に学校に来れているのも祐輔のおかげといっても過言ではないのだ。
父さんが亡くなり、精神的に苦しくなっていた僕に寄り添い、気遣ってくれた。
ある日、僕は相当、絶望したような顔をしてたのかな。祐輔は何も言わずに僕の隣に腰を下ろして、しばらくの沈黙の後、ぽつりと「ラーメンでも食べにいこうか」と言ってくれ、その日は1日中、僕の話を聞いて慰めてくれた。
正確には僕は最初なにも喋れなかった。なのに祐輔はただひたすら近くにいてくれた。
別の日だってそんな調子で気にかけてくれた。
そうやって必死に元気づけてくれるもんだから、自然と少しずつ笑顔になれた。
「なんでそんなに気遣ってくれるんだよ」と僕がぼそっと呟くと、
「親友だろ?」
そう言った彼は、まるでそれが 当たり前 みたいに、特に表情も変えなかった。
それがなんだかおかしくて、思わずプフっと笑ってしまった。
ーー僕なりの照れ隠しだ
そうこうしているうちに、校舎が見えてきた。
正門で生徒指導をしている生徒指導の先生は皆に挨拶をしている。
「おはようございます」
祐輔も僕も先生に挨拶をしたのち、小走りで教室へ向かった。
教室に入ると同時にチャイムが鳴る。
もうすでに担任の先生が黒板の前に立っていた。
「はーいってことで点呼を取っていきます。相沢ー」
日常がスタートした。平凡な1日の始まり。
「今回のクラス替えマジで神だよな。俺とユウキがまた一緒のクラスになれたしさ」
理科の授業中に話しかけてきた。
「そうだね。部活のメンバーとも一緒のクラスだし最高だよな」
「てか、そういえば西条とはどうなの?いい感じ?」
「おい!やめろよ。そういうのじゃないって、西条とは幼馴染で、昔から一緒にいるだけだから」
祐輔は勘が鋭くて、怖いな。 確かに西条は僕の初恋の相手でもあるんだけど・・・
高校に入るまで特に理由もなく疎遠だったんだけど1年生の時に同じクラスになってからよく一緒に遊んでる。音楽の趣味も合って、正直一緒にいる時、祐輔と同じくらい居心地が良い。
別に意識しているわけじゃない。断じて違う!
祐輔がいきなり変なこと言うもんだからおどおどしてしまった。
するといきなり教室の前の方で声がした
「そういえば先生、今日のニュースみました?隕石のやつ。あれやばくないんですか?」
「隕石?あーあれね。先生が思ったのは隕石の半径1が0キロメートルって言ってましたよね? 直径にすると20キロメートル…これ、相当デカいよね。例えば、東京都の端から端までがおよそ90キロメートルだから、その4分の1くらいの大きさの岩が宇宙を漂っているわけ。でもそれ以上に問題があるとするならば、この隕石の軌道かな。ニュースでは『数か月以内に接近する可能性がある』と言ってたよね。つまり、今後の動きをしっかり観測しないと、どの程度接近するかはまだ確定していないということになる。」
担任は少し顔つきを変え、腕まくりをしてから黒板に地球を模した絵を描きだした。
「授業からは少し脱線するけど、重力の話をするぞー。いいか、、、【宇宙では重力の影響で天体の軌道が変わることがある】地球や月、あるいは他の惑星の重力を受けることで、隕石の進路がわずかにズレることがあり、それがどの方向に影響するかは精密な計算が必要になる。 天才たちが最新の技術を使って導き出した答えだって、100%正しいものなんてない。過去にも、地球に衝突する可能性があるとされた小惑星が、最終的にすれすれで回避された例はいくつもある、逆に「安全」と言われていたものが、予想外の軌道変更をしたこともあるんだ」
担任の話にみんなが引き込まれ、教室は一瞬の静寂に包まれた。
「まあこのまま衝突!なんてことは起きないと思うよ。映画じゃないんだし。」
担任の話の途中、僕は自分のスマホで今回の隕石発見記事のまとめを見ていた。
5分前に更新された最新の記事でも色々書かれていたけど、専門的な用語が多くて、読む気が起きなかった。
先生が心配ないって言ってるなら問題ないよね。。。
ーーー映画じゃないんだしね。
なんて小言を吐きながら僕は学校へ駆け出した。
春の朝の空気はまだ少し肌寒く、走るほどに頬がひんやりとする。
けれど、額にはじんわりと汗が滲み始めていた。
見上げると、家のそばの桜はまだ花を残しているものの、枝の隙間には小さな黄緑の葉が芽吹き始めている。
この前の雨でほとんどの花が地面に落ちてしまっていた。
‹満開の桜を見られるのはまた来年か›、なんて考えていると
ーーチリンチリン
真後ろから自転車の呼び鈴が鳴る。
「ユウキが遅刻しそうなの珍しいじゃん、カバン持ってあげるわ。」
突然の出来事に一瞬体がびくっとしたが、聞き慣れたその声にすぐ誰だかわかった。
「びっくりした!いきなり後ろから話しかけるなよ」
話しかけてきたのは高校1年から仲良くなった 井上 祐輔 だった。
祐輔はいいやつだ。穏やかでフレンドリー、正義感も強くておまけにイケメン。
今、僕が元気に学校に来れているのも祐輔のおかげといっても過言ではないのだ。
父さんが亡くなり、精神的に苦しくなっていた僕に寄り添い、気遣ってくれた。
ある日、僕は相当、絶望したような顔をしてたのかな。祐輔は何も言わずに僕の隣に腰を下ろして、しばらくの沈黙の後、ぽつりと「ラーメンでも食べにいこうか」と言ってくれ、その日は1日中、僕の話を聞いて慰めてくれた。
正確には僕は最初なにも喋れなかった。なのに祐輔はただひたすら近くにいてくれた。
別の日だってそんな調子で気にかけてくれた。
そうやって必死に元気づけてくれるもんだから、自然と少しずつ笑顔になれた。
「なんでそんなに気遣ってくれるんだよ」と僕がぼそっと呟くと、
「親友だろ?」
そう言った彼は、まるでそれが 当たり前 みたいに、特に表情も変えなかった。
それがなんだかおかしくて、思わずプフっと笑ってしまった。
ーー僕なりの照れ隠しだ
そうこうしているうちに、校舎が見えてきた。
正門で生徒指導をしている生徒指導の先生は皆に挨拶をしている。
「おはようございます」
祐輔も僕も先生に挨拶をしたのち、小走りで教室へ向かった。
教室に入ると同時にチャイムが鳴る。
もうすでに担任の先生が黒板の前に立っていた。
「はーいってことで点呼を取っていきます。相沢ー」
日常がスタートした。平凡な1日の始まり。
「今回のクラス替えマジで神だよな。俺とユウキがまた一緒のクラスになれたしさ」
理科の授業中に話しかけてきた。
「そうだね。部活のメンバーとも一緒のクラスだし最高だよな」
「てか、そういえば西条とはどうなの?いい感じ?」
「おい!やめろよ。そういうのじゃないって、西条とは幼馴染で、昔から一緒にいるだけだから」
祐輔は勘が鋭くて、怖いな。 確かに西条は僕の初恋の相手でもあるんだけど・・・
高校に入るまで特に理由もなく疎遠だったんだけど1年生の時に同じクラスになってからよく一緒に遊んでる。音楽の趣味も合って、正直一緒にいる時、祐輔と同じくらい居心地が良い。
別に意識しているわけじゃない。断じて違う!
祐輔がいきなり変なこと言うもんだからおどおどしてしまった。
するといきなり教室の前の方で声がした
「そういえば先生、今日のニュースみました?隕石のやつ。あれやばくないんですか?」
「隕石?あーあれね。先生が思ったのは隕石の半径1が0キロメートルって言ってましたよね? 直径にすると20キロメートル…これ、相当デカいよね。例えば、東京都の端から端までがおよそ90キロメートルだから、その4分の1くらいの大きさの岩が宇宙を漂っているわけ。でもそれ以上に問題があるとするならば、この隕石の軌道かな。ニュースでは『数か月以内に接近する可能性がある』と言ってたよね。つまり、今後の動きをしっかり観測しないと、どの程度接近するかはまだ確定していないということになる。」
担任は少し顔つきを変え、腕まくりをしてから黒板に地球を模した絵を描きだした。
「授業からは少し脱線するけど、重力の話をするぞー。いいか、、、【宇宙では重力の影響で天体の軌道が変わることがある】地球や月、あるいは他の惑星の重力を受けることで、隕石の進路がわずかにズレることがあり、それがどの方向に影響するかは精密な計算が必要になる。 天才たちが最新の技術を使って導き出した答えだって、100%正しいものなんてない。過去にも、地球に衝突する可能性があるとされた小惑星が、最終的にすれすれで回避された例はいくつもある、逆に「安全」と言われていたものが、予想外の軌道変更をしたこともあるんだ」
担任の話にみんなが引き込まれ、教室は一瞬の静寂に包まれた。
「まあこのまま衝突!なんてことは起きないと思うよ。映画じゃないんだし。」
担任の話の途中、僕は自分のスマホで今回の隕石発見記事のまとめを見ていた。
5分前に更新された最新の記事でも色々書かれていたけど、専門的な用語が多くて、読む気が起きなかった。
先生が心配ないって言ってるなら問題ないよね。。。
ーーー映画じゃないんだしね。
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