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「……アラルク様。いい加減に離してくださいませ。誰かに見られたら、私の『冷酷な悪女』というブランドイメージに傷がつきますわ」
月明かりが降り注ぐ王宮の秘密庭園。
私はアラルク様の腕の中に閉じ込められたまま、精一杯の強がりを口にした。
夜風に乗って漂うバラの香りと、彼の体温が混ざり合い、私の脳内はすでにパニック状態だ。
「ブランドイメージだと? ……さっきまでマリアンヌ嬢を抱きしめて『よしよし』などと言っていた女が、今さら何を言う」
アラルク様はくすりと笑い、私の髪を指先で弄んだ。
その仕草一つ一つが、心臓に悪い。
「……あれは、その、獲物を油断させるための高度な心理戦ですわ」
「ほう。なら、今俺の腕の中で心臓を早鐘のように鳴らしているのも、俺を油断させるための策か?」
アラルク様は私の顔を覗き込むようにして、さらに距離を詰めてきた。
鼻先が触れそうなほどの至近距離。
彼の吐息が唇にかかる。
(ぎゃああああ! 心臓の音が聞こえてる!? 恥ずかしい! でも嬉しい! でも死ぬ!)
「……ルルノ。そろそろ、その『悪役』の仮面を脱いだらどうだ?」
「……仮面、ですわか?」
「ああ。君が誰よりも情に厚く、誰よりも純粋に俺を慕っていることは、もう十分に分かっている。……いつまで俺の前で芝居を続けるつもりだ?」
アラルク様の瞳が、月光を反射して怪しく、そして優しく揺れている。
それは「悪女ルルノ」ではなく、ただの「一人の女性としてのルルノ」に向けられた眼差しだった。
「……芝居ではございませんわ。私は、殿下の地位と権力が欲しくてたまらない、強欲な女……」
「嘘をつけ。……君が本当に欲しがっているのは、俺の愛だろう?」
アラルク様の大きな手が、私の頬を包み込んだ。
親指で優しく唇をなぞられ、私の語彙力は完全に霧散した。
「……俺はな、君が俺の顔を見るたびに目を輝かせる、あの『隠しきれない本音』が好きなんだ。……他の誰にも見せない、俺だけのルルノを、もっと見せてくれ」
「……アラルク、様……」
私は、自分でも驚くほど甘い声で彼の名前を呼んでいた。
悪女の仮面が、音を立てて剥がれ落ちていく。
私は観念して、彼の胸に額を預けた。
「……殿下のいじわる。……あんなに必死に演じていたのに、全部お見通しだったなんて」
「ふ。……君の演技が下手なのではない。俺が君を、誰よりも熱心に観察していただけだ」
アラルク様は私を力強く抱きしめ、その肩に顔を埋めた。
静寂の中、二人の鼓動だけが重なり合う。
「……ルルノ。俺は、君をただの婚約者にするつもりはない。……俺の人生すべてをかけて、君を愛し抜くと誓おう」
(……ひ、ひいいいいい! ガチのプロポーズ! しかも推しからの直球ストレート!)
私は感動のあまり、鼻水が出そうになるのを必死でこらえた。
「……あ、アラルク様。私も……私も、あなたのことが、宇宙の果てまで、細胞レベルで大好きですわ!」
「……細胞レベル? 相変わらず表現が独特だな」
アラルク様は可笑しそうに笑うと、私の顎を持ち上げ、ゆっくりと顔を近づけてきた。
ついに、念願の瞬間が訪れようとした――その時。
「ルルノぉぉぉ! やっぱり君がいないとダメなんだ! 僕を許してくれぇぇ!」
庭園の入り口から、空気の読めない爆音が響き渡った。
……セドリック様だ。しかも、またしても半裸で叫んでいる。
「…………ッ!!」
アラルク様の眉間に、見たこともないほど深い皺が刻まれた。
「……あいつ、今度こそ北の果ての炭鉱に送る必要があるようだな」
「賛成ですわ、アラルク様。私の……私のロマンチックな時間を返してぇぇーー!」
幸せな夜の静寂は、無慈悲にも筋肉の雄叫びによって打ち砕かれたのである。
月明かりが降り注ぐ王宮の秘密庭園。
私はアラルク様の腕の中に閉じ込められたまま、精一杯の強がりを口にした。
夜風に乗って漂うバラの香りと、彼の体温が混ざり合い、私の脳内はすでにパニック状態だ。
「ブランドイメージだと? ……さっきまでマリアンヌ嬢を抱きしめて『よしよし』などと言っていた女が、今さら何を言う」
アラルク様はくすりと笑い、私の髪を指先で弄んだ。
その仕草一つ一つが、心臓に悪い。
「……あれは、その、獲物を油断させるための高度な心理戦ですわ」
「ほう。なら、今俺の腕の中で心臓を早鐘のように鳴らしているのも、俺を油断させるための策か?」
アラルク様は私の顔を覗き込むようにして、さらに距離を詰めてきた。
鼻先が触れそうなほどの至近距離。
彼の吐息が唇にかかる。
(ぎゃああああ! 心臓の音が聞こえてる!? 恥ずかしい! でも嬉しい! でも死ぬ!)
「……ルルノ。そろそろ、その『悪役』の仮面を脱いだらどうだ?」
「……仮面、ですわか?」
「ああ。君が誰よりも情に厚く、誰よりも純粋に俺を慕っていることは、もう十分に分かっている。……いつまで俺の前で芝居を続けるつもりだ?」
アラルク様の瞳が、月光を反射して怪しく、そして優しく揺れている。
それは「悪女ルルノ」ではなく、ただの「一人の女性としてのルルノ」に向けられた眼差しだった。
「……芝居ではございませんわ。私は、殿下の地位と権力が欲しくてたまらない、強欲な女……」
「嘘をつけ。……君が本当に欲しがっているのは、俺の愛だろう?」
アラルク様の大きな手が、私の頬を包み込んだ。
親指で優しく唇をなぞられ、私の語彙力は完全に霧散した。
「……俺はな、君が俺の顔を見るたびに目を輝かせる、あの『隠しきれない本音』が好きなんだ。……他の誰にも見せない、俺だけのルルノを、もっと見せてくれ」
「……アラルク、様……」
私は、自分でも驚くほど甘い声で彼の名前を呼んでいた。
悪女の仮面が、音を立てて剥がれ落ちていく。
私は観念して、彼の胸に額を預けた。
「……殿下のいじわる。……あんなに必死に演じていたのに、全部お見通しだったなんて」
「ふ。……君の演技が下手なのではない。俺が君を、誰よりも熱心に観察していただけだ」
アラルク様は私を力強く抱きしめ、その肩に顔を埋めた。
静寂の中、二人の鼓動だけが重なり合う。
「……ルルノ。俺は、君をただの婚約者にするつもりはない。……俺の人生すべてをかけて、君を愛し抜くと誓おう」
(……ひ、ひいいいいい! ガチのプロポーズ! しかも推しからの直球ストレート!)
私は感動のあまり、鼻水が出そうになるのを必死でこらえた。
「……あ、アラルク様。私も……私も、あなたのことが、宇宙の果てまで、細胞レベルで大好きですわ!」
「……細胞レベル? 相変わらず表現が独特だな」
アラルク様は可笑しそうに笑うと、私の顎を持ち上げ、ゆっくりと顔を近づけてきた。
ついに、念願の瞬間が訪れようとした――その時。
「ルルノぉぉぉ! やっぱり君がいないとダメなんだ! 僕を許してくれぇぇ!」
庭園の入り口から、空気の読めない爆音が響き渡った。
……セドリック様だ。しかも、またしても半裸で叫んでいる。
「…………ッ!!」
アラルク様の眉間に、見たこともないほど深い皺が刻まれた。
「……あいつ、今度こそ北の果ての炭鉱に送る必要があるようだな」
「賛成ですわ、アラルク様。私の……私のロマンチックな時間を返してぇぇーー!」
幸せな夜の静寂は、無慈悲にも筋肉の雄叫びによって打ち砕かれたのである。
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