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「はぁ、はぁ、はぁ……! み、見つけたぞ……! これこそが、真実の愛を映す……がはっ!?」
森の奥から、泥まみれで木の枝を頭に刺したセドリック様が這い出してきた。
その手には、伝説の鏡――ではなく、誰かが捨てたであろう古びた鍋の蓋が握られていた。
私はアラルク様の腕の中で、冷ややかな視線を彼に向けた。
「セドリック様。その『真実の愛(鍋の蓋)』で、一体何を調理されるおつもりかしら? あなたのその、こんがり焼けた脳みそでも煮込みますの?」
「な、鍋の蓋!? 馬鹿な、鏡の間へ辿り着いたはず……。あ、兄上! なぜルルノの腰を抱いているのですか! それは勝者の特権だ!」
セドリック様が、震える指で私たちを指差す。
アラルク様は、私の腰を引き寄せたまま、鼻で笑った。
「勝者? そんなものは最初から決まっていた。セドリック、お前が森でガラクタを拾っている間、俺とルルノは……言葉よりも確かな方法で、互いの愛を確かめ合っていたのだからな」
「確かな方法……? ま、まさか、二人でプロテインを!?」
「いいえ。唇を重ねておりましたのよ。おーっほっほっほ!」
私はここぞとばかりに、高慢な笑い声を上げた。
アラルク様は、私の耳元に顔を寄せ、全神経を痺れさせるような低い声で囁いた。
「ルルノ。……君の問いに対する、俺の回答をまだ言っていなかったな」
(ぎゃああああ! くる! 公式な回答がくるわ!)
アラルク様は私を正面から見据え、セドリック様にも、そして隠れて様子を伺っていた家臣たちにも聞こえるような堂々たる声で告げた。
「俺は、ルルノ・エルバートを、単なる一時的な愛人や魔除けとして求めているのではない。……俺の生涯唯一の妃として、この国の母として、誰よりも高く、誰よりも美しく俺の隣に置くことを誓う」
広場に、水を打ったような静寂が訪れる。
「……え、妃? あの、悪役令嬢をですか……?」
どこからか漏れた声に、アラルク様は冷酷な笑みを深めた。
「悪女? 大いに結構。……この国の淀んだ政を、清廉潔白な聖女が導けるとでも思うのか? 毒を以て毒を制す。……そして、その毒に唯一耐えられるのは、この俺だけだ」
アラルク様は私の手を取り、その薬指に、いつの間にか用意していたであろう深紅の石が嵌まった指輪を通した。
「これが俺の回答だ。ルルノ、君は俺の毒に溺れ、俺は君の毒に狂う。……永遠に、逃がしてはやらないぞ」
「……っ、……あ、アラルク様……!」
私は、あまりの尊さに膝から崩れ落ちそうになった。
推しからの、実質的な求婚。しかも、ただの結婚ではなく「毒に狂う」という、私の性癖(悪女属性)を完璧に理解した上での言葉。
「あ、兄上……。本気なのですか……。ルルノは、僕の広背筋を……」
「セドリック。お前のその筋肉、今すぐ騎士団の訓練場で限界まで痛めつけてこい。……これ以上その口を開けば、次こそは本当に国外追放だ」
アラルク様の殺気。セドリック様は「ひいいいい!」と悲鳴を上げ、鍋の蓋を放り投げて逃げ去っていった。
私は、自分の指に輝く指輪をうっとりと眺めた。
「……アラルク様。私、一生あなたについていきますわ。たとえ奈落の底でも、薔薇の絨毯でも!」
「奈落には行かせない。……君が輝くのは、俺の隣だと言っただろう?」
アラルク様は私の額にそっと唇を寄せた。
こうして、史上稀に見る「物理的な愛の試練」は、第一王子の完全勝利という形で幕を閉じたのである。
森の奥から、泥まみれで木の枝を頭に刺したセドリック様が這い出してきた。
その手には、伝説の鏡――ではなく、誰かが捨てたであろう古びた鍋の蓋が握られていた。
私はアラルク様の腕の中で、冷ややかな視線を彼に向けた。
「セドリック様。その『真実の愛(鍋の蓋)』で、一体何を調理されるおつもりかしら? あなたのその、こんがり焼けた脳みそでも煮込みますの?」
「な、鍋の蓋!? 馬鹿な、鏡の間へ辿り着いたはず……。あ、兄上! なぜルルノの腰を抱いているのですか! それは勝者の特権だ!」
セドリック様が、震える指で私たちを指差す。
アラルク様は、私の腰を引き寄せたまま、鼻で笑った。
「勝者? そんなものは最初から決まっていた。セドリック、お前が森でガラクタを拾っている間、俺とルルノは……言葉よりも確かな方法で、互いの愛を確かめ合っていたのだからな」
「確かな方法……? ま、まさか、二人でプロテインを!?」
「いいえ。唇を重ねておりましたのよ。おーっほっほっほ!」
私はここぞとばかりに、高慢な笑い声を上げた。
アラルク様は、私の耳元に顔を寄せ、全神経を痺れさせるような低い声で囁いた。
「ルルノ。……君の問いに対する、俺の回答をまだ言っていなかったな」
(ぎゃああああ! くる! 公式な回答がくるわ!)
アラルク様は私を正面から見据え、セドリック様にも、そして隠れて様子を伺っていた家臣たちにも聞こえるような堂々たる声で告げた。
「俺は、ルルノ・エルバートを、単なる一時的な愛人や魔除けとして求めているのではない。……俺の生涯唯一の妃として、この国の母として、誰よりも高く、誰よりも美しく俺の隣に置くことを誓う」
広場に、水を打ったような静寂が訪れる。
「……え、妃? あの、悪役令嬢をですか……?」
どこからか漏れた声に、アラルク様は冷酷な笑みを深めた。
「悪女? 大いに結構。……この国の淀んだ政を、清廉潔白な聖女が導けるとでも思うのか? 毒を以て毒を制す。……そして、その毒に唯一耐えられるのは、この俺だけだ」
アラルク様は私の手を取り、その薬指に、いつの間にか用意していたであろう深紅の石が嵌まった指輪を通した。
「これが俺の回答だ。ルルノ、君は俺の毒に溺れ、俺は君の毒に狂う。……永遠に、逃がしてはやらないぞ」
「……っ、……あ、アラルク様……!」
私は、あまりの尊さに膝から崩れ落ちそうになった。
推しからの、実質的な求婚。しかも、ただの結婚ではなく「毒に狂う」という、私の性癖(悪女属性)を完璧に理解した上での言葉。
「あ、兄上……。本気なのですか……。ルルノは、僕の広背筋を……」
「セドリック。お前のその筋肉、今すぐ騎士団の訓練場で限界まで痛めつけてこい。……これ以上その口を開けば、次こそは本当に国外追放だ」
アラルク様の殺気。セドリック様は「ひいいいい!」と悲鳴を上げ、鍋の蓋を放り投げて逃げ去っていった。
私は、自分の指に輝く指輪をうっとりと眺めた。
「……アラルク様。私、一生あなたについていきますわ。たとえ奈落の底でも、薔薇の絨毯でも!」
「奈落には行かせない。……君が輝くのは、俺の隣だと言っただろう?」
アラルク様は私の額にそっと唇を寄せた。
こうして、史上稀に見る「物理的な愛の試練」は、第一王子の完全勝利という形で幕を閉じたのである。
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