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「……アラルク。本気なのか? 一度弟と婚約破棄した娘を、次期国王たるお前の妃に据えるなど、前代未聞だぞ」
玉座に深く腰掛けた国王陛下が、眉間に深い皺を寄せて唸った。
謁見の間には重々しい空気が漂っている。……はずなのだが、私の隣に立つアラルク様の余裕に満ちたオーラが、それをことごとく無効化していた。
「前代未聞? それは褒め言葉として受け取っておきましょう、父上。凡庸な妃など、俺の隣には必要ありませんので」
アラルク様は、私の肩を抱き寄せる手に力を込めた。
(……きゃっ! 公衆の面前で、しかも国王陛下の前でこの密着度! アラルク様の体温が、ドレス越しに私の魂まで焼き尽くしそうだわ!)
「しかし、ルルノ嬢の評判はどうする。マリアンヌ嬢をいびり倒し、セドリックを絶望させた『悪役令嬢』だぞ? 民衆が納得すると思うか?」
「陛下。……失礼ながら、申し上げてもよろしいかしら?」
私は、アラルク様の腕の中から一歩前へ出た。
これ以上ないほど優雅に、そして少しだけ傲慢に、扇子で口元を隠して微笑む。
「私の悪評こそが、王家の盾となりますわ。……清廉潔白な王妃にはできない『汚れ仕事』、そして貴族たちの醜い権力争いの掃除。……それらすべてを私が引き受け、殿下を光の中へ押し上げます。それが、私がここにいる理由ですわ」
「ほう……。汚れ仕事を引き受けると申すか」
「ええ。嫌われることに関しては、私はプロフェッショナルですもの。おーっほっほっほ!」
私の高笑いが謁見の間に響き渡る。
国王陛下は呆気にとられた顔をしたが、隣に座るヴィクトリア王妃様が、楽しげに扇子を鳴らした。
「陛下、よろしいではありませんか。私はこの子のその『面の皮の厚さ』、もとい『精神の強靭さ』を高く買っていますの。アラルクのような一癖も二癖もある男を御すには、これくらいの毒が必要よ」
「……王妃まで味方するのか」
国王陛下は深くため息をつき、頭を抱えた。
「分かった。……アラルク、そしてルルノ嬢。二人の婚約を認める条件を出す」
(条件! きたわね! 『ドラゴンを退治してこい』とか、『一晩で金の糸を紡げ』とかかしら!?)
「一つ。セドリックの再教育を、ルルノ嬢、お前が責任を持って行うことだ。……あのアホンダラを、まともな王族として更生させろ」
「えっ」
「二つ。アラルク。お前は今すぐ、その『ルルノ以外はどうでもいい』という冷酷な執務態度を改め、少しは周囲の臣下にも慈悲を見せろ。……以上だ」
あまりにも現実的、かつ面倒な条件に、私は思わずアラルク様と顔を見合わせた。
「……父上。慈悲ならルルノにすべて使い果たしました。臣下には給料で還元しているので問題ないでしょう」
「殿下、そこは嘘でも『努力します』って仰ってくださいませ! ……陛下、分かりました。セドリック様の筋肉脳に、私が直接、王族としての誇りを叩き込んで差し上げますわ!」
私は不敵な笑みを浮かべた。
セドリック様を更生させる。それは、マリアンヌちゃんを幸せにし、かつ私の「悪役スキル」を存分に発揮できる、最高の任務ではないか。
「……決まりだな。ルルノ、君の初仕事は、弟の『人間化』だ」
アラルク様は私の耳元で囁き、満足げに微笑んだ。
「失敗したら……夜通し、俺の『特別教育』を受けてもらうことになるからな」
(……ひ、ひいいいいい! ご褒美としか思えない罰ゲーム! アラルク様、策士すぎるわ!)
こうして、私たちの婚約は、まさかの「教育係就任」という形で正式に認められたのである。
玉座に深く腰掛けた国王陛下が、眉間に深い皺を寄せて唸った。
謁見の間には重々しい空気が漂っている。……はずなのだが、私の隣に立つアラルク様の余裕に満ちたオーラが、それをことごとく無効化していた。
「前代未聞? それは褒め言葉として受け取っておきましょう、父上。凡庸な妃など、俺の隣には必要ありませんので」
アラルク様は、私の肩を抱き寄せる手に力を込めた。
(……きゃっ! 公衆の面前で、しかも国王陛下の前でこの密着度! アラルク様の体温が、ドレス越しに私の魂まで焼き尽くしそうだわ!)
「しかし、ルルノ嬢の評判はどうする。マリアンヌ嬢をいびり倒し、セドリックを絶望させた『悪役令嬢』だぞ? 民衆が納得すると思うか?」
「陛下。……失礼ながら、申し上げてもよろしいかしら?」
私は、アラルク様の腕の中から一歩前へ出た。
これ以上ないほど優雅に、そして少しだけ傲慢に、扇子で口元を隠して微笑む。
「私の悪評こそが、王家の盾となりますわ。……清廉潔白な王妃にはできない『汚れ仕事』、そして貴族たちの醜い権力争いの掃除。……それらすべてを私が引き受け、殿下を光の中へ押し上げます。それが、私がここにいる理由ですわ」
「ほう……。汚れ仕事を引き受けると申すか」
「ええ。嫌われることに関しては、私はプロフェッショナルですもの。おーっほっほっほ!」
私の高笑いが謁見の間に響き渡る。
国王陛下は呆気にとられた顔をしたが、隣に座るヴィクトリア王妃様が、楽しげに扇子を鳴らした。
「陛下、よろしいではありませんか。私はこの子のその『面の皮の厚さ』、もとい『精神の強靭さ』を高く買っていますの。アラルクのような一癖も二癖もある男を御すには、これくらいの毒が必要よ」
「……王妃まで味方するのか」
国王陛下は深くため息をつき、頭を抱えた。
「分かった。……アラルク、そしてルルノ嬢。二人の婚約を認める条件を出す」
(条件! きたわね! 『ドラゴンを退治してこい』とか、『一晩で金の糸を紡げ』とかかしら!?)
「一つ。セドリックの再教育を、ルルノ嬢、お前が責任を持って行うことだ。……あのアホンダラを、まともな王族として更生させろ」
「えっ」
「二つ。アラルク。お前は今すぐ、その『ルルノ以外はどうでもいい』という冷酷な執務態度を改め、少しは周囲の臣下にも慈悲を見せろ。……以上だ」
あまりにも現実的、かつ面倒な条件に、私は思わずアラルク様と顔を見合わせた。
「……父上。慈悲ならルルノにすべて使い果たしました。臣下には給料で還元しているので問題ないでしょう」
「殿下、そこは嘘でも『努力します』って仰ってくださいませ! ……陛下、分かりました。セドリック様の筋肉脳に、私が直接、王族としての誇りを叩き込んで差し上げますわ!」
私は不敵な笑みを浮かべた。
セドリック様を更生させる。それは、マリアンヌちゃんを幸せにし、かつ私の「悪役スキル」を存分に発揮できる、最高の任務ではないか。
「……決まりだな。ルルノ、君の初仕事は、弟の『人間化』だ」
アラルク様は私の耳元で囁き、満足げに微笑んだ。
「失敗したら……夜通し、俺の『特別教育』を受けてもらうことになるからな」
(……ひ、ひいいいいい! ご褒美としか思えない罰ゲーム! アラルク様、策士すぎるわ!)
こうして、私たちの婚約は、まさかの「教育係就任」という形で正式に認められたのである。
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