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3話
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慰謝料の支払いを命じる勅令が届いた翌日。
私は自室で、今後の計画を練るための会議を開いていた。メンバーは、私一人だけれど。
「さて、まずは人材確保ね」
目の前のテーブルに広げた白紙のノートに、私はそう書き込んだ。
金貨170万枚という大金は、何もしなくても私を一生遊んで暮らさせてくれるだろう。でも、それだけではつまらない。どうせなら、この資金を元手にもっと面白いことをしたい。
そのためには、私の計画を完璧に理解し、サポートしてくれる有能な右腕が必要不可欠だ。
私の脳裏に、一人の人物が浮かんだ。
「グレイソン……」
それは、先代リール公爵、つまり私の祖父に仕えていた執事の名前だ。
彼は、執事として完璧なだけでなく、交渉術、情報収集、危機管理能力、果ては護身術に至るまで、あらゆるスキルに秀でた伝説の人物だったと聞く。
しかし、祖父が亡くなった後、まだ若かったにもかかわらず、あっさりと執事業を引退してしまった。父上が何度か復帰を打診したらしいが、すべて断られたという。
「でも、今の私なら、彼を口説き落とせるかもしれないわ」
そうと決まれば即行動。これが私の信条だ。
私は父上からグレイソンの隠居先の住所を聞き出すと、早速、一台の馬車を仕立ててその場所へと向かった。
王都から馬車で半日ほど揺られた先にある、のどかな田舎町。グレイソンの家は、その町の外れにひっそりと佇む小さなコテージだった。
ドアをノックすると、中から現れたのは、銀髪を綺麗に整え、品の良い平服を着こなした壮年の男性だった。歳は四十代半ばといったところだろうか。穏やかながらも、その瞳には鋭い知性の光が宿っている。彼が、グレイソン。
「……ミリアーナお嬢様。このような辺鄙な場所まで、一体どのようなご用件でございましょうか」
彼は少し驚いた顔をしたが、すぐに落ち着きを取り戻し、丁寧にお辞儀をした。
「単刀直入に言うわ、グレイソン。私の執事になってちょうだい」
「……お断りいたします」
私の言葉が終わるか終わらないかのうちに、彼は即答した。
「まあ、つれない返事。理由を聞かせてもらえるかしら?」
「私はもう隠居の身。執事として再び誰かにお仕えするつもりはございません。穏やかな余生を過ごしたいのです」
「穏やかな余生ですって? 退屈な毎日、と言い換えた方がよろしくなくて?」
私は彼の家の周りを見渡す。手入れの行き届いた菜園、綺麗に積まれた薪。規則正しく、平和な毎日がそこにはあった。
「退屈で結構。私はこの静かな生活を気に入っておりますので」
「嘘をおっしゃい。あなたのその目は、退屈で死にそうだ、と語っているわ」
私の指摘に、グレイソンの眉がぴくりと動いた。
「あなたは、ただ仕えるだけの人ではない。知略と策略を巡らせ、主を勝利に導くことにこそ喜びを見出すタイプの人間よ。そんなあなたが、畑仕事だけで満足できるはずがない」
「…………」
「私はこれから、王都で一番面白いことを始めるつもりよ。元婚約者への痛快な復讐、新しいビジネスの立ち上げ、そして社交界のパワーバランスを塗り替えるような、壮大な計画をね」
私は一歩、彼に近づく。
「あなたほどの男が、そんな心躍るゲームに参加したくないなんて言わせないわ。退屈な隠居生活より、私の起こす波乱万丈の人生の目撃者になる方が、よほど刺激的だと思わない?」
私の言葉に、グレイソンはしばらく黙り込んでいた。だが、やがて彼の口元に、かすかな笑みが浮かんだ。
「……やれやれ。先代様もそうでしたが、リール家の人間は、実に人使いが荒い」
彼は深いため息をつくと、私に向かって深く、完璧な角度でお辞儀をした。
「承知いたしました、ミリアーナお嬢様。このグレイソン、本日より、貴女様の『剣』となり、『盾』となりましょう」
こうして私は、最強の協力者を手に入れたのだった。
私は自室で、今後の計画を練るための会議を開いていた。メンバーは、私一人だけれど。
「さて、まずは人材確保ね」
目の前のテーブルに広げた白紙のノートに、私はそう書き込んだ。
金貨170万枚という大金は、何もしなくても私を一生遊んで暮らさせてくれるだろう。でも、それだけではつまらない。どうせなら、この資金を元手にもっと面白いことをしたい。
そのためには、私の計画を完璧に理解し、サポートしてくれる有能な右腕が必要不可欠だ。
私の脳裏に、一人の人物が浮かんだ。
「グレイソン……」
それは、先代リール公爵、つまり私の祖父に仕えていた執事の名前だ。
彼は、執事として完璧なだけでなく、交渉術、情報収集、危機管理能力、果ては護身術に至るまで、あらゆるスキルに秀でた伝説の人物だったと聞く。
しかし、祖父が亡くなった後、まだ若かったにもかかわらず、あっさりと執事業を引退してしまった。父上が何度か復帰を打診したらしいが、すべて断られたという。
「でも、今の私なら、彼を口説き落とせるかもしれないわ」
そうと決まれば即行動。これが私の信条だ。
私は父上からグレイソンの隠居先の住所を聞き出すと、早速、一台の馬車を仕立ててその場所へと向かった。
王都から馬車で半日ほど揺られた先にある、のどかな田舎町。グレイソンの家は、その町の外れにひっそりと佇む小さなコテージだった。
ドアをノックすると、中から現れたのは、銀髪を綺麗に整え、品の良い平服を着こなした壮年の男性だった。歳は四十代半ばといったところだろうか。穏やかながらも、その瞳には鋭い知性の光が宿っている。彼が、グレイソン。
「……ミリアーナお嬢様。このような辺鄙な場所まで、一体どのようなご用件でございましょうか」
彼は少し驚いた顔をしたが、すぐに落ち着きを取り戻し、丁寧にお辞儀をした。
「単刀直入に言うわ、グレイソン。私の執事になってちょうだい」
「……お断りいたします」
私の言葉が終わるか終わらないかのうちに、彼は即答した。
「まあ、つれない返事。理由を聞かせてもらえるかしら?」
「私はもう隠居の身。執事として再び誰かにお仕えするつもりはございません。穏やかな余生を過ごしたいのです」
「穏やかな余生ですって? 退屈な毎日、と言い換えた方がよろしくなくて?」
私は彼の家の周りを見渡す。手入れの行き届いた菜園、綺麗に積まれた薪。規則正しく、平和な毎日がそこにはあった。
「退屈で結構。私はこの静かな生活を気に入っておりますので」
「嘘をおっしゃい。あなたのその目は、退屈で死にそうだ、と語っているわ」
私の指摘に、グレイソンの眉がぴくりと動いた。
「あなたは、ただ仕えるだけの人ではない。知略と策略を巡らせ、主を勝利に導くことにこそ喜びを見出すタイプの人間よ。そんなあなたが、畑仕事だけで満足できるはずがない」
「…………」
「私はこれから、王都で一番面白いことを始めるつもりよ。元婚約者への痛快な復讐、新しいビジネスの立ち上げ、そして社交界のパワーバランスを塗り替えるような、壮大な計画をね」
私は一歩、彼に近づく。
「あなたほどの男が、そんな心躍るゲームに参加したくないなんて言わせないわ。退屈な隠居生活より、私の起こす波乱万丈の人生の目撃者になる方が、よほど刺激的だと思わない?」
私の言葉に、グレイソンはしばらく黙り込んでいた。だが、やがて彼の口元に、かすかな笑みが浮かんだ。
「……やれやれ。先代様もそうでしたが、リール家の人間は、実に人使いが荒い」
彼は深いため息をつくと、私に向かって深く、完璧な角度でお辞儀をした。
「承知いたしました、ミリアーナお嬢様。このグレイソン、本日より、貴女様の『剣』となり、『盾』となりましょう」
こうして私は、最強の協力者を手に入れたのだった。
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