婚約破棄?ナニソレ美味しいの?あ、美味しかったです

夏乃みのり

文字の大きさ
7 / 32

7話

しおりを挟む
「ここよ、グレイソン。ここが私たちの新しい城よ!」

王都の郊外。小高い丘の上に立つ、一軒の邸宅の前に、私とグレイソン、そしてピエールは立っていた。
慰謝料で私が購入した、今後の活動拠点だ。

以前はどこぞの貴族の別荘だったらしいが、今は持ち主もおらず、長い間打ち捨てられていたようだ。壁には蔦が絡まり、庭は雑草が生い茂っている。

「……お嬢様。城、と申しますか、これはどちらかというと廃墟なのでは……」

ピエールが、呆れたように呟いた。

「失礼ね、ピエール。これはダイヤモンドの原石よ。これから磨けば、どこよりも美しく輝くわ」

私は胸を張って言い返した。
確かに見た目は古びている。でも、立地は最高だ。日当たりは良いし、丘の上だから眺めも抜群。何より、広大な庭がついているのが気に入った。

「早速始めるわよ! リフォーム計画、第一段階!」

私が合図をすると、グレイソンが手配しておいた建築家や庭師たちが、一斉に集まってきた。
私は彼らの前に、自分で描いた設計図を広げる。

「まず、この母屋。一階部分は全面改装して、カフェスペースにするわ。壁は取り払って、大きな窓をはめ込んで。光がさんさんと降り注ぐ、開放的な空間にするの」

「そして厨房! ピエール、あなたのための最高の舞台よ。最新式のオーブンに、広々とした調理台。必要なものは何でも言いなさい。すべて揃えさせるわ」

「お、俺の……厨房……」

ピエールは設計図に描かれた最新式の厨房の絵を見て、ゴクリと喉を鳴らした。

「庭は、この雑草をすべて刈り取って、色とりどりのバラが咲き誇るローズガーデンにするわ。カフェの名前は『La Vie en Rose』。バラ色の人生、よ」

私の計画を生き生きと語る姿に、最初は半信半疑だった職人たちも、次第に目を輝かせ始めた。
彼らは、ただ金で雇われただけの労働者ではない。新しいものを生み出すことに情熱を燃やす、プロフェッショナル集団だ。私の夢は、彼らの創造力にも火をつけたのだ。

「承知いたしました、お嬢様! 最高の城を、お作りいたします!」

建築家の棟梁が、力強く請け負ってくれた。

それから数週間、邸宅は毎日がお祭りのような騒がしさだった。
トンカチの音、職人たちの威勢のいい声、そして時々響く私の指示。
日に日に、廃墟同然だった邸宅が、美しく生まれ変わっていく。

壁は白く塗り直され、大きな窓ガラスがはめ込まれた。雑草だらけだった庭は、見事なバラ園へと姿を変えつつある。

「ふふ、いい感じになってきたわね」

丘の上から、生まれ変わりつつある自分の城を眺めながら、私は満足げに微笑んだ。
アルフ殿下もセシリー嬢も、今頃王宮で焦っている頃かしら。
あなたたちが私から奪おうとした幸せは、こんなものじゃない。私がこれから自分で作り出す幸せは、もっとずっと大きくて、輝かしいものなのだから。

私のバラ色の人生は、この城から始まる。
そう思うと、胸が高鳴って仕方がなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。

桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。 「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」 「はい、喜んで!」  ……えっ? 喜んじゃうの? ※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。 ※1ページの文字数は少な目です。 ☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」  セルビオとミュリアの出会いの物語。 ※10/1から連載し、10/7に完結します。 ※1日おきの更新です。 ※1ページの文字数は少な目です。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年12月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!

ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。 なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。

婚約破棄されたけど、どうして王子が泣きながら戻ってくるんですか?

ほーみ
恋愛
「――よって、リリアーヌ・アルフェン嬢との婚約は、ここに破棄とする!」  華やかな夜会の真っ最中。  王子の口から堂々と告げられたその言葉に、場は静まり返った。 「……あ、そうなんですね」  私はにこやかにワイングラスを口元に運ぶ。周囲の貴族たちがどよめく中、口をぽかんと開けたままの王子に、私は笑顔でさらに一言添えた。 「で? 次のご予定は?」 「……は?」

悪役令嬢の断罪――え、いま婚約破棄と?聞こえませんでしたわ!

ちゃっぴー
恋愛
公爵令嬢アクア・ラズライトは、卒業パーティーの最中に婚約者であるジュリアス殿下から「悪役令嬢」として断罪を突きつけられる。普通なら泣き崩れるか激昂する場面――しかし、超合理的で節約家なアクアは違った。

婚約破棄された千年転生令嬢は、名も居場所も縛られずに生きると決めました ――助けを乞うなら条件付きですわあ

ふわふわ
恋愛
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放。 ――はいはい、またその流れですわね。 貴族令嬢シェリア・ド・ラファルジュは、ある日突然、王太子から一方的に婚約を破棄され、平民出身の“聖女”リリカを選ばれる。 しかし彼女は嘆かない。なぜならシェリアは、千年分の転生の記憶を持つ存在だったから。 魔法、剣技、治癒術。 過去の人生で極めた力をすべて備えた彼女にとって、追放は「面倒事から解放されただけ」の出来事だった。 隣国ガルディア王国で“名も名乗らぬ旅人”として静かに暮らし始めたシェリア。 誰にも縛られず、期待も背負わず、助けるかどうかは自分で選ぶ―― そんな自由な日々を送っていた彼女のもとへ、やがて崩壊寸前となった祖国から「助けてほしい」という声が届く。 けれど、彼女はもう無償では救わない。 「私はもう、あの国の国民ではありません」 「条件を飲むなら向かいましょう。国民に罪はありませんから」 謝罪、対価、そして国を変える覚悟。 すべてを差し出した時、初めてシェリアは手を差し伸べる。 これは、 聖女でも英雄でもなく、 “選ぶ側”として生きることを決めた令嬢の物語。 婚約破棄ざまぁのその先で、 彼女は今日も、自分の居場所を選び続ける。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...