婚約破棄?ナニソレ美味しいの?あ、美味しかったです

夏乃みのり

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30話

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国が落ち着きを取り戻し、カイルが隣国ヴァインラントへ帰国する日が、近づいてきた。
彼の部隊の駐留期間も、もうすぐ終わるのだ。

その数日前の夜、カイルは、私をライトアップされた夜のローズガーデンに誘い出した。

「綺麗だな。君が作った庭は、夜も美しい」

「ありがとう。あなたに見せたかったの」

二人で、甘いバラの香りに包まれながら、静かに庭を散策する。
やがて、庭の中央にあるガゼボで、カイルは立ち止まった。

「ミリアーナ。戦いの前の約束を、覚えているか?」

彼の真剣な声に、私の心臓が、トクン、と跳ねた。
もちろん、覚えている。忘れるはずがない。

彼は、懐から一通の封書を取り出し、私に差し出した。それは、ヴァインラント国王の紋章が入った、豪華なものだった。

「我が国の王からの、親書だ。君に、と」

私が封を開けると、中には、達筆な文字でこう書かれていた。
『救国の英雄、ミリアーナ・リール嬢へ。貴女と、我が国が誇る騎士団長カイル・フォン・シュヴァルツとの結婚を、ヴァインラント王国は心より祝福する。ぜひ、我が国を第二の故郷とし、国賓としてお迎えしたい』

「これは……」

私が驚いて顔を上げると、カイルは、私の前で静かに片膝をついた。
そして、小さなベルベットの箱を開け、美しい指輪を差し出した。
月の光を受けて、指輪のダイヤモンドが、星のようにきらめいている。

「ミリアーナ・リール。俺の生涯の全てを、君に捧げたい。俺の心も、剣も、この命も、全ては君のものだ。どうか、俺と、結婚してほしい」

彼の、まっすぐな瞳。彼の、誠実な言葉。
私は、これまでの彼との日々を、思い返していた。
謁見の間での出会い。カフェでの再会。刺客から守ってくれた夜。そして、戦いの前に交わした誓い。
いつだって彼は、私の隣にいて、私を信じ、支えてくれた。

悠々自適な生活を求めていたはずの私が、いつの間にか、彼がいない人生など考えられなくなっていた。

「……ええ、喜んで」

私は、最高の笑顔で頷いた。
涙が、頬を伝う。でも、それは悲しみの涙ではなかった。

「あなたの隣こそが、わたくしの本当の『悠々自適な場所』のようですわ」

私の答えに、カイルは安堵したように微笑むと、指輪をそっと私の左手の薬指にはめてくれた。
そして、立ち上がると、優しく私を抱きしめた。
夜のローズガーデンで、二つの影は、固く、そして永遠に結ばれたのだった。
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