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北の領地での生活は、私の理想そのものだった。
朝は鳥のさえずりで目を覚まし、日中は完成したばかりの工房で新作お菓子の開発に没頭する。
時折、領地の視察という名目で、美しい景色の中を散策し、最高の昼寝スポットを探す。
夜は、満点の星空を眺めながら、ハーブティーをいただく。
(ああ、なんて平和なのでしょう。王都のあの喧騒と、息の詰まるような毎日が、まるで嘘のようですわ)
工房のテラスで、焼きたてのスコーンを頬張りながら、私は心からの満足感に浸っていた。
この穏やかで、甘い香りに満ちた日々が、永遠に続けばいい。
そう、本気で願っていた。
しかし、私のそんなささやかな願いは、一通の手紙によって、いとも容易く打ち砕かれることになる。
「リーリア様、王都のご実家より、至急の信書が届いております」
執事のセバスが、銀盆に乗せて差し出したのは、クライネルト公爵家の紋章が入った、分厚い封筒だった。
中には、父からの手紙と、もう一通、さらに厳重な封蝋が施された、王家の紋章入りの招待状が入っていた。
「……建国記念式典、へのご出席を賜りたく……?」
招待状に記された文字を読んだ瞬間、私の思考は停止した。
(しきてん……? あの、一週間にもわたって、連日連夜、パーティーやら観閲式やらが続く、国で一番面倒くさい、あの行事ですって……?)
背筋に、ぞくりと悪寒が走る。
父からの手紙には、こう書かれていた。
『気は進まぬだろうが、これは五大公爵家としての義務だ。王太子との一件は、すでに過去のこと。お前が気にする必要は何もない。クライネルト家の娘として、堂々と胸を張って参加してきなさい』
(お父様……! そのお言葉が、一番のプレッシャーですわ……!)
私はその場に崩れ落ちそうになるのを、必死で堪えた。
行きたくない。
心底、行きたくない。
あの王都へ戻って、ジークフリード殿下やエミリアさんと顔を合わせるのも、好奇と憐憫の入り混じった貴族たちの視線に晒されるのも、考えただけで蕁麻疹が出そうだ。
しかし、これは「義務」だ。
私の我儘で、クライネルト公爵家の名に泥を塗るわけにはいかない。
「はぁ……」
今日一番の、深くて重たい溜息が、私の口からこぼれた。
そんな私の憂鬱な気分など露知らず。
一人の朴念仁な騎士が、妙にそわそわとした足取りで、工房へとやってきた。
アシュトン団長だ。
(あら、珍しい。いつもは工房の隅で、石像のように固まっているのに)
彼はこちらに気づくと、一度、ごくりと喉を鳴らし、そして、ぎこちなく口角を引き上げた。
……笑顔の、つもりなのだろうか。
「リ、リーリア様! こ、こんにちは! きょ、今日は、実に良い天気ですな!」
カチコチに固まった、棒読みの挨拶。
普段の彼からは考えられないその挙動に、私は少しだけ眉をひそめた。
しかし、今の私に、彼の奇行に付き合っている余裕はない。
「……ええ、そうですわね」
気の抜けた返事をすると、私は再び深いため息をついた。
私の浮かない様子に、アシュトン団長はようやく気づいたらしい。
彼の表情から、ぎこちない笑顔が消え、いつもの真剣なものへと戻る。
「……何か、悩み事でもおありですか? もし、私でお力になれることであれば、お聞きしますが」
その真摯な眼差しに、私はつい、ぽろりと愚痴をこぼしてしまった。
「……王都から、招待状が届きましたの。建国記念式典ですって。行きたくもないのに、家の立場上、行かなければならないなんて……。本当に、憂鬱ですわ」
私の言葉を聞いた瞬間、アシュトン団長の顔つきが、さらに険しいものへと変わった。
(王都へ……!? ということは、あの場所には王太子もいる。リーリア様が、また心無い言葉を浴びせられるやもしれん。それだけは、断じてあってはならない……! 俺が、俺がお守りしなければ!)
彼の心の中で、そんな熱い決意が固められたのを、もちろん私は知らない。
彼は、すっと姿勢を正すと、私に向かって、はっきりとした口調で告げた。
「リーリア様」
「……はい」
「ご安心ください。その王都行き、このアシュトン・バレタインが、貴女様の護衛として、責任を持って同行させていただきます」
「まあ……」
「王都では、いかなる者からも、貴女様を必ずやお守りいたします。我が騎士の誇りにかけて、ここに誓います!」
いつもの堅物な口調。
だが、その声には、不思議なほどの力がこもっていた。
そして、私をまっすぐに見つめる彼の瞳は、燃えるような強い意志を宿していた。
大袈裟な人。
そう思いながらも、彼のその言葉は、私の沈んだ心に、温かい光を灯してくれた気がした。
憂鬱でしかなかった王都行き。
でも、この不器用で、真面目すぎる騎士が隣にいてくれるのなら。
ほんの少しだけ、乗り切れるかもしれない。
「……ふふっ」
思わず、小さな笑みがこぼれた。
「頼りにしておりますわ、バレタイン団長」
私がそう言って微笑むと、アシュトン団長は「はっ!」と息を呑んだかと思うと、みるみるうちに顔を真っ赤に染め上げ、カチン、と音を立てて固まってしまった。
やはり、少し変な人。
でも、決して、嫌ではない。
憂鬱な王都行きに、アシュトン・バレタインという、予想外の同行者が加わった。
この旅が、一体どうなることやら。
私は、ほんの少しだけ上向いた心で、手元のスコーンをもう一口、かじったのだった。
朝は鳥のさえずりで目を覚まし、日中は完成したばかりの工房で新作お菓子の開発に没頭する。
時折、領地の視察という名目で、美しい景色の中を散策し、最高の昼寝スポットを探す。
夜は、満点の星空を眺めながら、ハーブティーをいただく。
(ああ、なんて平和なのでしょう。王都のあの喧騒と、息の詰まるような毎日が、まるで嘘のようですわ)
工房のテラスで、焼きたてのスコーンを頬張りながら、私は心からの満足感に浸っていた。
この穏やかで、甘い香りに満ちた日々が、永遠に続けばいい。
そう、本気で願っていた。
しかし、私のそんなささやかな願いは、一通の手紙によって、いとも容易く打ち砕かれることになる。
「リーリア様、王都のご実家より、至急の信書が届いております」
執事のセバスが、銀盆に乗せて差し出したのは、クライネルト公爵家の紋章が入った、分厚い封筒だった。
中には、父からの手紙と、もう一通、さらに厳重な封蝋が施された、王家の紋章入りの招待状が入っていた。
「……建国記念式典、へのご出席を賜りたく……?」
招待状に記された文字を読んだ瞬間、私の思考は停止した。
(しきてん……? あの、一週間にもわたって、連日連夜、パーティーやら観閲式やらが続く、国で一番面倒くさい、あの行事ですって……?)
背筋に、ぞくりと悪寒が走る。
父からの手紙には、こう書かれていた。
『気は進まぬだろうが、これは五大公爵家としての義務だ。王太子との一件は、すでに過去のこと。お前が気にする必要は何もない。クライネルト家の娘として、堂々と胸を張って参加してきなさい』
(お父様……! そのお言葉が、一番のプレッシャーですわ……!)
私はその場に崩れ落ちそうになるのを、必死で堪えた。
行きたくない。
心底、行きたくない。
あの王都へ戻って、ジークフリード殿下やエミリアさんと顔を合わせるのも、好奇と憐憫の入り混じった貴族たちの視線に晒されるのも、考えただけで蕁麻疹が出そうだ。
しかし、これは「義務」だ。
私の我儘で、クライネルト公爵家の名に泥を塗るわけにはいかない。
「はぁ……」
今日一番の、深くて重たい溜息が、私の口からこぼれた。
そんな私の憂鬱な気分など露知らず。
一人の朴念仁な騎士が、妙にそわそわとした足取りで、工房へとやってきた。
アシュトン団長だ。
(あら、珍しい。いつもは工房の隅で、石像のように固まっているのに)
彼はこちらに気づくと、一度、ごくりと喉を鳴らし、そして、ぎこちなく口角を引き上げた。
……笑顔の、つもりなのだろうか。
「リ、リーリア様! こ、こんにちは! きょ、今日は、実に良い天気ですな!」
カチコチに固まった、棒読みの挨拶。
普段の彼からは考えられないその挙動に、私は少しだけ眉をひそめた。
しかし、今の私に、彼の奇行に付き合っている余裕はない。
「……ええ、そうですわね」
気の抜けた返事をすると、私は再び深いため息をついた。
私の浮かない様子に、アシュトン団長はようやく気づいたらしい。
彼の表情から、ぎこちない笑顔が消え、いつもの真剣なものへと戻る。
「……何か、悩み事でもおありですか? もし、私でお力になれることであれば、お聞きしますが」
その真摯な眼差しに、私はつい、ぽろりと愚痴をこぼしてしまった。
「……王都から、招待状が届きましたの。建国記念式典ですって。行きたくもないのに、家の立場上、行かなければならないなんて……。本当に、憂鬱ですわ」
私の言葉を聞いた瞬間、アシュトン団長の顔つきが、さらに険しいものへと変わった。
(王都へ……!? ということは、あの場所には王太子もいる。リーリア様が、また心無い言葉を浴びせられるやもしれん。それだけは、断じてあってはならない……! 俺が、俺がお守りしなければ!)
彼の心の中で、そんな熱い決意が固められたのを、もちろん私は知らない。
彼は、すっと姿勢を正すと、私に向かって、はっきりとした口調で告げた。
「リーリア様」
「……はい」
「ご安心ください。その王都行き、このアシュトン・バレタインが、貴女様の護衛として、責任を持って同行させていただきます」
「まあ……」
「王都では、いかなる者からも、貴女様を必ずやお守りいたします。我が騎士の誇りにかけて、ここに誓います!」
いつもの堅物な口調。
だが、その声には、不思議なほどの力がこもっていた。
そして、私をまっすぐに見つめる彼の瞳は、燃えるような強い意志を宿していた。
大袈裟な人。
そう思いながらも、彼のその言葉は、私の沈んだ心に、温かい光を灯してくれた気がした。
憂鬱でしかなかった王都行き。
でも、この不器用で、真面目すぎる騎士が隣にいてくれるのなら。
ほんの少しだけ、乗り切れるかもしれない。
「……ふふっ」
思わず、小さな笑みがこぼれた。
「頼りにしておりますわ、バレタイン団長」
私がそう言って微笑むと、アシュトン団長は「はっ!」と息を呑んだかと思うと、みるみるうちに顔を真っ赤に染め上げ、カチン、と音を立てて固まってしまった。
やはり、少し変な人。
でも、決して、嫌ではない。
憂鬱な王都行きに、アシュトン・バレタインという、予想外の同行者が加わった。
この旅が、一体どうなることやら。
私は、ほんの少しだけ上向いた心で、手元のスコーンをもう一口、かじったのだった。
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