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満天の星空の下で、二人の心が確かに結ばれた、あの夜から。
サーシャとリアムの時間は、まるで夢のように、穏やかで、満ち足りたものだった。
もはや、二人の間に、言葉はあまり必要なかった。
ただ、隣にいて、同じ景色を見て、同じ空気を吸う。
それだけで、互いの心が、温かい愛情で満たされていくのが分かった。
サーシャは、すっかり、この辺境の地の生活に馴染んでいた。
朝、リアムと共に馬を走らせ、風を切って草原を駆け抜ける爽快さ。
城の厨房で、領地の豊かな恵みを使って、新しい料理を考案する楽しさ。
そして、領民たちと交わす、飾り気のない、温かい言葉の数々。
子供たちは、王都から来た美しい彼女にすっかり懐き、「サーシャ様」と呼んで、その後を小鳥のようについて回った。
サーシャが、時折、彼らのために王都風の甘い焼き菓子を作ってやると、それはもう、村中がお祭り騒ぎになるほどだった。
領民たちは、そんな彼女の姿を、微笑ましげに、そして、敬意を込めて見守っていた。
誰もが、彼女が、この土地の「未来の伯爵夫人様」になることを、ごく自然なこととして、受け入れていたのだ。
そんな、穏やかな日々が続いていた、ある晴れた日のこと。
リアムが、「サーシャ、見せたい場所がある」と言って、彼女をピクニックへと誘った。
その時の彼の顔が、普段よりも、ほんの少しだけ緊張しているように見えたのを、サーシャは見逃さなかった。
何か、特別なことがあるのかもしれない。
そんな予感に、サーシャの胸は、朝からずっと、甘くときめいていた。
二人は、それぞれ馬に乗り、城を出発した。
リアムに導かれるまま、小鳥のさえずりが響く、美しい白樺の森を抜けていく。
木漏れ日が、きらきらと輝き、まるで、二人の未来を祝福しているかのようだった。
やがて、森を抜けた先に、息をのむほど美しい光景が広がった。
「まあ…!」
そこにあったのは、周囲の山々を、その水面に鏡のように映し出す、どこまでも青く、澄み切った湖だった。
そして、その湖畔には、まるで、空の青を分けてもらったかのように、可憐な青紫色の花々が、絨毯のように、咲き乱れている。
「雪割草…」
それは、リアムが、以前、サーシャに贈ってくれた、あの花だった。
彼女が、何気なく「好きだ」と話したことを、彼が覚えていてくれて、この場所を選んでくれたのだ。
その、不器用で、まっすぐな愛情に、サーシャの胸は、熱くなった。
湖畔の大きな木の木陰には、すでに、白いクロスが広げられ、その上には、美味しそうなサンドイッチや、色とりどりの果物、そして、この土地自慢のチーズが、綺麗に並べられていた。
「すごい…リアム、あなたがこれを?」
「ああ。料理長に、少しだけ手伝ってもらったがな」
少し照れくさそうに頭を掻くリアムの姿が、サーシャには、たまらなく愛おしく思えた。
穏やかな風に吹かれながら、二人だけの、贅沢な食事が始まる。
すべてが、心の底から美味しかった。
それはきっと、最高の食材と、最高の景色、そして、何よりも、愛する人が隣にいるという、最高のスパイスがあったからだろう。
食事が終わり、二人が、ただ黙って、きらきらと輝く湖面を眺めていた、その時だった。
リアムが、おもむろに立ち上がると、サーシャの前に、静かに、片膝をついた。
「サーシャ…」
その、あまりにも真剣な眼差しと、厳粛な雰囲気に、サーシャは、ごくり、と息をのんだ。
リアムは、懐から、小さな、素朴な木の箱を取り出した。
そして、その蓋を、ゆっくりと開く。
中にあったのは、王都の宝石商が作るような、きらびやかなダイヤモンドの指輪ではなかった。
アシュフォードの森でしか採れないという、硬く、木目の美しい黒檀の木を、丁寧に磨き上げて作られたリング。
そして、その中央には、この湖でしか採れないという、夜空の星を閉じ込めたかのような、深く、美しい青色の小石が、一つ、はめ込まれていた。
「王都の宝石のような、高価で、華やかなものではない」
リアムは、その指輪を手に取り、静かに、しかし、力強い声で言った。
「だが、これは、このアシュフォードの土地そのものだ。この森の木と、この湖の石でできている。そして、これは、俺の心の、すべてだ」
彼は、その青い瞳で、サーシャをまっすぐに見つめた。
「サーシャ・フォン・シュヴァルツ。俺の妻に、なってほしい」
「…!」
「この、アシュフォードの土地と、ここに生きる、俺の大切な民たちと、そして、誰よりも、お前を。この俺の、生涯のすべてをかけて、守り抜くと、この湖と、空と、この大地に誓う」
その言葉を聞いた瞬間、サーシャの瞳から、大粒の涙が、とめどなく、ぽろぽろと溢れ出した。
嬉しくて、幸せで、愛おしくて。
胸の中の、すべての感情が、温かい涙となって、流れ落ちていく。
彼女は、涙で濡れた顔のまま、しかし、今までで一番、美しい笑顔で、深く、深く、頷いた。
「はい…! はい、喜んで…!」
その声は、涙で少しだけ、震えていた。
「あなたの妻に、してくださいまし、リアム…!」
その返事を聞いたリアムの顔が、安堵と、そして、子供のような、無邪気な喜びに、くしゃりと崩れた。
彼は、その美しい指輪を、そっと、サーシャの左手の薬指にはめてやる。
指輪は、まるで、ずっと前から、そこにあったかのように、彼女の白く、か細い指に、ぴったりと収まった。
リアムは、ゆっくりと立ち上がると、涙に濡れるサーシャを、その広い胸に、力強く、そして、優しく、抱きしめた。
湖を渡る風が、咲き乱れる花々の香りを運び、まるで、二人を祝福しているかのようだった。
この、美しい辺境の地で。
二人の未来は、今、確かに、固く、結ばれたのだった。
サーシャとリアムの時間は、まるで夢のように、穏やかで、満ち足りたものだった。
もはや、二人の間に、言葉はあまり必要なかった。
ただ、隣にいて、同じ景色を見て、同じ空気を吸う。
それだけで、互いの心が、温かい愛情で満たされていくのが分かった。
サーシャは、すっかり、この辺境の地の生活に馴染んでいた。
朝、リアムと共に馬を走らせ、風を切って草原を駆け抜ける爽快さ。
城の厨房で、領地の豊かな恵みを使って、新しい料理を考案する楽しさ。
そして、領民たちと交わす、飾り気のない、温かい言葉の数々。
子供たちは、王都から来た美しい彼女にすっかり懐き、「サーシャ様」と呼んで、その後を小鳥のようについて回った。
サーシャが、時折、彼らのために王都風の甘い焼き菓子を作ってやると、それはもう、村中がお祭り騒ぎになるほどだった。
領民たちは、そんな彼女の姿を、微笑ましげに、そして、敬意を込めて見守っていた。
誰もが、彼女が、この土地の「未来の伯爵夫人様」になることを、ごく自然なこととして、受け入れていたのだ。
そんな、穏やかな日々が続いていた、ある晴れた日のこと。
リアムが、「サーシャ、見せたい場所がある」と言って、彼女をピクニックへと誘った。
その時の彼の顔が、普段よりも、ほんの少しだけ緊張しているように見えたのを、サーシャは見逃さなかった。
何か、特別なことがあるのかもしれない。
そんな予感に、サーシャの胸は、朝からずっと、甘くときめいていた。
二人は、それぞれ馬に乗り、城を出発した。
リアムに導かれるまま、小鳥のさえずりが響く、美しい白樺の森を抜けていく。
木漏れ日が、きらきらと輝き、まるで、二人の未来を祝福しているかのようだった。
やがて、森を抜けた先に、息をのむほど美しい光景が広がった。
「まあ…!」
そこにあったのは、周囲の山々を、その水面に鏡のように映し出す、どこまでも青く、澄み切った湖だった。
そして、その湖畔には、まるで、空の青を分けてもらったかのように、可憐な青紫色の花々が、絨毯のように、咲き乱れている。
「雪割草…」
それは、リアムが、以前、サーシャに贈ってくれた、あの花だった。
彼女が、何気なく「好きだ」と話したことを、彼が覚えていてくれて、この場所を選んでくれたのだ。
その、不器用で、まっすぐな愛情に、サーシャの胸は、熱くなった。
湖畔の大きな木の木陰には、すでに、白いクロスが広げられ、その上には、美味しそうなサンドイッチや、色とりどりの果物、そして、この土地自慢のチーズが、綺麗に並べられていた。
「すごい…リアム、あなたがこれを?」
「ああ。料理長に、少しだけ手伝ってもらったがな」
少し照れくさそうに頭を掻くリアムの姿が、サーシャには、たまらなく愛おしく思えた。
穏やかな風に吹かれながら、二人だけの、贅沢な食事が始まる。
すべてが、心の底から美味しかった。
それはきっと、最高の食材と、最高の景色、そして、何よりも、愛する人が隣にいるという、最高のスパイスがあったからだろう。
食事が終わり、二人が、ただ黙って、きらきらと輝く湖面を眺めていた、その時だった。
リアムが、おもむろに立ち上がると、サーシャの前に、静かに、片膝をついた。
「サーシャ…」
その、あまりにも真剣な眼差しと、厳粛な雰囲気に、サーシャは、ごくり、と息をのんだ。
リアムは、懐から、小さな、素朴な木の箱を取り出した。
そして、その蓋を、ゆっくりと開く。
中にあったのは、王都の宝石商が作るような、きらびやかなダイヤモンドの指輪ではなかった。
アシュフォードの森でしか採れないという、硬く、木目の美しい黒檀の木を、丁寧に磨き上げて作られたリング。
そして、その中央には、この湖でしか採れないという、夜空の星を閉じ込めたかのような、深く、美しい青色の小石が、一つ、はめ込まれていた。
「王都の宝石のような、高価で、華やかなものではない」
リアムは、その指輪を手に取り、静かに、しかし、力強い声で言った。
「だが、これは、このアシュフォードの土地そのものだ。この森の木と、この湖の石でできている。そして、これは、俺の心の、すべてだ」
彼は、その青い瞳で、サーシャをまっすぐに見つめた。
「サーシャ・フォン・シュヴァルツ。俺の妻に、なってほしい」
「…!」
「この、アシュフォードの土地と、ここに生きる、俺の大切な民たちと、そして、誰よりも、お前を。この俺の、生涯のすべてをかけて、守り抜くと、この湖と、空と、この大地に誓う」
その言葉を聞いた瞬間、サーシャの瞳から、大粒の涙が、とめどなく、ぽろぽろと溢れ出した。
嬉しくて、幸せで、愛おしくて。
胸の中の、すべての感情が、温かい涙となって、流れ落ちていく。
彼女は、涙で濡れた顔のまま、しかし、今までで一番、美しい笑顔で、深く、深く、頷いた。
「はい…! はい、喜んで…!」
その声は、涙で少しだけ、震えていた。
「あなたの妻に、してくださいまし、リアム…!」
その返事を聞いたリアムの顔が、安堵と、そして、子供のような、無邪気な喜びに、くしゃりと崩れた。
彼は、その美しい指輪を、そっと、サーシャの左手の薬指にはめてやる。
指輪は、まるで、ずっと前から、そこにあったかのように、彼女の白く、か細い指に、ぴったりと収まった。
リアムは、ゆっくりと立ち上がると、涙に濡れるサーシャを、その広い胸に、力強く、そして、優しく、抱きしめた。
湖を渡る風が、咲き乱れる花々の香りを運び、まるで、二人を祝福しているかのようだった。
この、美しい辺境の地で。
二人の未来は、今、確かに、固く、結ばれたのだった。
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