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第4章
身代わりなんかしたくない!
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ユリアの爆弾発言を、馬車の中で聞いた後。
「お父様、お母様!ただいま帰りました!」
「ユリア、ルシア、おかえりなさい」
「元気そうで何よりだ」
本当に、言うのかしら?
でも、言うとしたら夕食の時よね。流石に今ここでなんて--
「お父様とお母様にお話ししたいことがあります」
「……」
この子…今言う気!?
「なんだ?急に」
「あの、私が王太子様と踊ったのはご存知ですよ、ね?」
「ああ、そのことか!喜んでいいぞ、ユリア!お前は--」
「そのことなんですけどっ!私、王太子様と婚約したくないです」
「「……えっ、えええ?!」」
両親の声が見事にハモる。
うん、そういう反応になるよねぇ…
「な、ぜだユリア?!王太子様のどこが嫌なんだ!」
「嫌とかじゃないんです。ただ…」
「ただ?!」
「その…好きな人が、できてしまったんです」
頰を赤らめながらそう言い放ったユリアに、お父様はこれでもかと目を見開いた。
お母様なんか卒倒寸前で、顔が異常に白い。
「いや、私もユリアの幸せのためならなんでもするが…流石にこれは……」
「だめ、ですか…?」
「「……」」
うるうるの瞳に上目遣い、さらには可愛くおねだりをされては、もう折れるしかない。
これを受ける相手がお父様で良かったと思う。ほんと心底そう思うよ。
「わかった。だが、王家主催のお茶会は断れないぞ。どうすれば--」
深刻に考え込んでいたお父様は、ふと私を見て、ハッとした顔になった。そして、いいことを思いついたとばかりにニコニコしだす。
これは…よくない感じがする。とてつもなく、嫌な感じがする!!
「ルシア」
「は、い…なんでしょうか?」
「お前がユリアの代わりに茶会に行ってこい」
「……!?」
「お前たちは容姿がそっくりだから、護衛の者にも気づかれまい。王太子様には、妹が体を崩したとでも言っておいてくれ」
「し、しかし!」
嫌だ!それだけは嫌だ!どうか考え直してくださいー!!
なんて心の叫びも、届いていただろうに、軽く無視されてしまい。
「あらっ、それはいい考えね!」
「お姉様、ありがとうございます!」
話はトントン拍子に進んでしまったのだった。
❄︎ ❄︎ ❄︎ ❄︎ ❄︎
身代わりになれ事件から、一週間が経った。
最上級のクッションの座り心地と、心地の良い揺れ。
窓の外の景色は前方から後方へ流れていく。
…眠い。
「ああ、憂鬱」
馬車の中で、私はひたすら眠気と戦っていた。
一週間の間、私は焦りや緊張で、全然眠れなかったのだ。
おかげで今の私の眠さはマックスだ。
馬車の両側面には窓が付いていて、中まで丸見えである。カーテンを閉めてもいいが、それでは中で何が起こっているのか分かりにくくなる分、変な噂を立てられやすい。
身の潔白を証明するためにも、カーテンを開けておいたほうがいい。
だから、寝たら即アウト。
それに、今王宮に向かっているのだから、尚更だめだ。
そんなことを考えながら眠気に耐えていると、いつのまにか馬車が止まっていた。
何かあったんだろうか?と思い、御者の人に声をかけようとした、その時--
「んむっ!!」
「大人しくしろ」
急に馬車の扉が開き、一人の男が入ってきた。
そして、その男は私の口を後ろから布で塞ぎ、声を出させないようにする。
「うっ、うう!」
「余計なことしなきゃ、お前に危害は加えない」
そう言いながら、私の手を、口に布を当てたまま縛っていく。
器用な奴なんだなぁ、となぜか感心してしまった。
「捕まえたぜ!見つかる前に行くぞ!」
「んっ!?」
外に仲間がいるのか。
見つかる前にってことは、誘拐…?
「んんんふぅ(何が目的なの)?」
「あ?そんなの決まってるだろ」
なんとか言葉は通じたらしい。すごい。
「あの王太子をおびき出すためだよ!」
じゃあ、私は人質か。
「さっき仲間のやつが王太子に伝えに言ってるよ。きっと泡吹くだろうぜ!」
仲間は、四、五、六…八人か。さっき言ってた人も含めて九人。
外にいた護衛は、軒並み地に伏していた。
たぶん、私を解放して欲しければ、王太子一人で来い、っていう手紙を送ったんだろう。
私は男たちに連れ去られ、気づけば人通りの少ない路地に来てしまっていた。
ああもう、ほんと~っにやだ!
「お父様、お母様!ただいま帰りました!」
「ユリア、ルシア、おかえりなさい」
「元気そうで何よりだ」
本当に、言うのかしら?
でも、言うとしたら夕食の時よね。流石に今ここでなんて--
「お父様とお母様にお話ししたいことがあります」
「……」
この子…今言う気!?
「なんだ?急に」
「あの、私が王太子様と踊ったのはご存知ですよ、ね?」
「ああ、そのことか!喜んでいいぞ、ユリア!お前は--」
「そのことなんですけどっ!私、王太子様と婚約したくないです」
「「……えっ、えええ?!」」
両親の声が見事にハモる。
うん、そういう反応になるよねぇ…
「な、ぜだユリア?!王太子様のどこが嫌なんだ!」
「嫌とかじゃないんです。ただ…」
「ただ?!」
「その…好きな人が、できてしまったんです」
頰を赤らめながらそう言い放ったユリアに、お父様はこれでもかと目を見開いた。
お母様なんか卒倒寸前で、顔が異常に白い。
「いや、私もユリアの幸せのためならなんでもするが…流石にこれは……」
「だめ、ですか…?」
「「……」」
うるうるの瞳に上目遣い、さらには可愛くおねだりをされては、もう折れるしかない。
これを受ける相手がお父様で良かったと思う。ほんと心底そう思うよ。
「わかった。だが、王家主催のお茶会は断れないぞ。どうすれば--」
深刻に考え込んでいたお父様は、ふと私を見て、ハッとした顔になった。そして、いいことを思いついたとばかりにニコニコしだす。
これは…よくない感じがする。とてつもなく、嫌な感じがする!!
「ルシア」
「は、い…なんでしょうか?」
「お前がユリアの代わりに茶会に行ってこい」
「……!?」
「お前たちは容姿がそっくりだから、護衛の者にも気づかれまい。王太子様には、妹が体を崩したとでも言っておいてくれ」
「し、しかし!」
嫌だ!それだけは嫌だ!どうか考え直してくださいー!!
なんて心の叫びも、届いていただろうに、軽く無視されてしまい。
「あらっ、それはいい考えね!」
「お姉様、ありがとうございます!」
話はトントン拍子に進んでしまったのだった。
❄︎ ❄︎ ❄︎ ❄︎ ❄︎
身代わりになれ事件から、一週間が経った。
最上級のクッションの座り心地と、心地の良い揺れ。
窓の外の景色は前方から後方へ流れていく。
…眠い。
「ああ、憂鬱」
馬車の中で、私はひたすら眠気と戦っていた。
一週間の間、私は焦りや緊張で、全然眠れなかったのだ。
おかげで今の私の眠さはマックスだ。
馬車の両側面には窓が付いていて、中まで丸見えである。カーテンを閉めてもいいが、それでは中で何が起こっているのか分かりにくくなる分、変な噂を立てられやすい。
身の潔白を証明するためにも、カーテンを開けておいたほうがいい。
だから、寝たら即アウト。
それに、今王宮に向かっているのだから、尚更だめだ。
そんなことを考えながら眠気に耐えていると、いつのまにか馬車が止まっていた。
何かあったんだろうか?と思い、御者の人に声をかけようとした、その時--
「んむっ!!」
「大人しくしろ」
急に馬車の扉が開き、一人の男が入ってきた。
そして、その男は私の口を後ろから布で塞ぎ、声を出させないようにする。
「うっ、うう!」
「余計なことしなきゃ、お前に危害は加えない」
そう言いながら、私の手を、口に布を当てたまま縛っていく。
器用な奴なんだなぁ、となぜか感心してしまった。
「捕まえたぜ!見つかる前に行くぞ!」
「んっ!?」
外に仲間がいるのか。
見つかる前にってことは、誘拐…?
「んんんふぅ(何が目的なの)?」
「あ?そんなの決まってるだろ」
なんとか言葉は通じたらしい。すごい。
「あの王太子をおびき出すためだよ!」
じゃあ、私は人質か。
「さっき仲間のやつが王太子に伝えに言ってるよ。きっと泡吹くだろうぜ!」
仲間は、四、五、六…八人か。さっき言ってた人も含めて九人。
外にいた護衛は、軒並み地に伏していた。
たぶん、私を解放して欲しければ、王太子一人で来い、っていう手紙を送ったんだろう。
私は男たちに連れ去られ、気づけば人通りの少ない路地に来てしまっていた。
ああもう、ほんと~っにやだ!
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