ここまでお膳立てしてあげたのに、どうして恋に落ちないの!?

*菜乃

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第4章

嘘だと言って!

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文化祭から一週間が経ち、祝日の今日。

「珍しいわね。本邸に帰って来いなんて言われるなんて」
「そうですね…」

今、私たちは馬車の車内で揺られていて、向かいにはユリアが座っていた。
さっきから物憂げな表情で窓の外を眺めている。

「何かあったの?ユリア」

と、聞いてはみたものの、だいたい予想はつく。

「その、王太子様とダンスを踊ったんです…」

うん、それはまあ予想できた。問題は、なんでそんなに浮かない顔をしているのか。

「よかったじゃない。なんでそれで落ち込んでるの?」
「よくなんかないですっ!」

…び、びっくりしたぁ……
突然声を荒げたユリアを見ていると、我に帰ったのか、ごめんなさいと言って深く息を吸った。

「その…あのダンスは未来の王太子妃を選ぶためのものだったとお聞きして」
「……どなたから?」

その情報は、側近のソルと王様と王女様、そして当事者のルークしか知らないはず。
ドキ胸でも、ルークとお茶会してる時に聞かされていた。だから、まだユリアは知らないはず。
ソルが話した…?いや、ソルはそんな人じゃない。

「えっ?ええっと…その、ぐ、偶然聞いてしまったんです」
「ふぅん?」

なぜか、激しくうろたえている。
いかにも、そこまで考えてませんでしたー!って感じがしなくもないけど。

「それで?」
「…わ、私好きな方がいるんです!だから、私王太子様のお嫁さんになりたくありません!!」
「………は?」

開いた口が塞がらないとは、今の私のことを言うんだろうか……?ちょっと放心してた。
でも、婚約したくない?
イケメンで地位もあって勉強も運動もできるパーフェクトヒューマンと?結婚したくない?超優良物件なのに??

「もう一回言って、ユリア。なんだか私、幻聴が聞こえているようだわ」
「幻聴なんかじゃ…!」

そうだ、幻聴に違いない。

「…わかりました。よく聞いていてくださいね」
「ええ…」

「お姉様。私、ルーク様と婚約はいたしませんわ」

げ、幻聴じゃなかったーーー!!!
今この子婚約しないって言った?コンヤクシナイッテ??

うそーーーー!!
誰か嘘って言って!これは夢、誰か私を起こして!!!

「お姉様?」
「ひゃい?」

ほっぺたをつねって、夢かどうか確かめてみる。
痛い…ああ、これは現実だわ!

「…お姉様。夢ではありませんよ」
「……」

だめだ…もう、諦めるしかないの??
イベント起こすために色々今まで頑張ってきたのに!当のユリアが王太子様と婚約したくないだって?!
どうすんのよ!

「お、落ち着いてください、お姉様。何をそんなに慌てていらっしゃるの?」
「ユリア……お願いですから、もう一度考え直してみて、ください……」

舌が回らなくなってきた…

「したくありません」
「そんな即答しなくても……」
「したくないです」

ユリアって、こんなに頑固だったっけ?恋は人を変えるのね…

「では、その相手はどなたなの?」
「…その、この国最強の騎士、フォレスト様ですッ…!」

まあまあ、そんなに赤くなっちゃって…
しかも、フォレストかぁ…私のメンタルを粉々に粉砕する気かな?
でも…あー……もう、しょうがないか……

「そんなに嫌なの?」
「はい」
「王家主催のお茶会があるのは知ってるわよね」
「はい」
「せめてお茶会だけでも行ってきては…?」
「行きたくないです」

そんなぁ…
もう、手の打ちようがないじゃない。
ドキ胸の登場人物であるフォレストじゃあ、間違いなく結ばれる。
その運命を、たかがにわか悪役令嬢にどうこうなんてできないじゃない…

「…わかったわ……」
「お姉様!それでは、婚約しなくても…!」
「ただし、条件があるわ」
「は、はい…」

正直、ユリアには簡単なことなんだろうけど。

「お母様とお父様を納得させなさい。ダンスをルーク様とユリアが踊ったことは、もうご存知のはずです。そして、それは婚約を意味するとも。それを知った上で、婚約はしないと。しっかり話すんですよ」
「はい!」

あんなに憂鬱そうにしていたのに、その言葉を聞いた瞬間目が輝きだした。
すごく嬉しそうなユリアを見て、なんだかいいことをした気分になった。

まあ、本音を言っちゃえば、お母様とお父様を説得するのが、ただ単にめんどくさいからなんだけど。

「頑張りますね!お姉様っ!」
「ええ」

是非とも頑張ってください。
私は、ユリアが幸せになれるんならと、承諾したんですから。

結局のところ、実の妹が、ヒロインが、可愛くてしょうがないのだ。
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