救済の剣を求め、我が手は今日も空を仰ぐ。

月森 蓮見

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第一章

アリスの憂鬱

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大層身なりが綺麗なこの男は、みすぼらしい私を見たらと思うのだろう。

こういう人は、生まれて今まで貧乏から遠ざかってきたのだから、これが当たり前の反応なのだ。

別にこの男の反応に対して、何も感じない。

何度も言うけれど、これが当たり前の反応なのだからーー…。





「随分とみすぼらしい女だな」

「…、」

「お前、あの場所が何処だか知って入ったのか?」

「…あの場所って、河原の事ですか。」






男の言い方に引っかかるものがあり、食い気味に聞き返すと、「は?」と拍子抜けたような声を出された。

その返事に、私も「は?」と返したいくらいだ。

だってあの河原は、普通の河原でしょう?

普通に誰もが眺めていい河原のはずでしょう?





「あれは河原なんてものではない。古くより伝わる神聖な水が流れる聖地だ。」





コホン、と咳払いをされた後に聞いた言葉は本当に意味が不明で、私には理解が出来なかった。

この人、何言ってんの…?

神聖?

聖地?

何処からどう見ても普通の河原だったのに、あれを崇拝してるの?

訳分からない。

思わず心の中でそう呟き、首を傾げると。

格子の間から何かが向かってきて、咄嗟の判断でそれを避けた。





「あの場所に無断で立ち入る者は極刑と決まっている。」

「…きょっけい?」

「いわゆる死刑だ。」

「あの河原に立ち入っただけで?死刑?随分重くないですか?」





それは、細長い剣だった。

首の横を通り抜けていった刃に目を見張り、極刑だの死刑だの口にしている男に無遠慮に言葉を返していく。

だって、有り得ないじゃない。

そんなの、おかしい。

神聖だか何だか知らないけれど、あの場所に立ち入っただけで死刑だなんて、酷過ぎるではないか。

そんなルールあるなら全民に伝えるべきでしょうに……。





「そういう決まりだ。お前は今ここで殺す」

「ふざけないでください。」

「これがふざけているように見えるか?」





低い声に顔を上げれば、暗闇の中に光る藍色の瞳と目が合った。

暗闇に目が慣れてきた所為か、その男の顔立ちも分かるようになる。





「…第一王子……レン…」

「死ぬ前に人を呼び捨てするとは、不躾な女だな…、」






その顔は何処だっただろうか。お父さんが布団替わりに使っていたチラシに載っていたものだったような気がする。

国王の第一後継者が決まったという内容で。

そこに載っていた顔と一致する彼の端正な顔立ちに、腰を抜かす。





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