6 / 19
第一章
アリスの憂鬱
しおりを挟む最近、ここらで若い女ばかりを狙っている輩がいるーー。
父親からその噂を聞いていた事を今更になって思い出すなんて。都合のいい脳内はいつだってそう。
覚えていれば河原でうじ虫をやってなかったというのに、ああ、人生というものはこうも上手くいかないものなのね。
目を覚ました場所は不幸にも牢屋のように格子がある小部屋で地面も冷たく、暗くて辺りは何も見えない。
思い出すのは意識を失う前に聞こえた、あのテノールの声。
ーーお前は、誰だ?
確かに、そう言っていた。
若い女を狙う者達がわざわざ名前を聞く事なんて有るのだろうか?
ふと、疑問に思った事に首を傾げる。
ああ、でも身元不明の女だったら尚更都合がいいのかもしれない。
そう考え、暗い牢屋の中で膝を抱えて座り、はぁ、と溜め息をつく。
「出稼ぎに行くって言ったのに…」
どうやらこの牢屋に一人で入れられているようで、誰の気配も感じない。
すぐに働く場所を探していたら、こんな風にはならなかったのかなぁ、なんて今更後悔じみた事を心に浮かべて。
また、憂鬱と絶望を繰り返していた。
両親は絶対に出稼ぎに行っているものだと思っているから、心配もしていないだろうし。
助けを呼ぶ手段が何も無い事に、目の前が真っ白になる。
「誰でもいいから、助けて…、」
格子を片手で掴み、項垂れながら呟くと、何処かから足音が聞こえてきた。
コツリ、コツリーー…と。
「…っ!」
響いて来る足音に身体を起こし、僅かな希望を抱いていると、奥から姿を現したのは見覚えのある大きな影だった。
私に、誰だと聞いたあの男。
多分、見間違えではないはずだ。
あの時は暗くて分からなかったけれど、暗いからこそ同じ接格好だと今は分かる。
何をしに来たのだろうか、と顔を上げて男を見ていれば、「ウッ」と呻き声のようなものが聞こえてきて。
「酷い匂いだ…。お前、風呂には入っているのか…?」
あのテノールの声が分かりきった事を口から放って来た。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
今日でお別れします
なかな悠桃
恋愛
高校二年の碧は黒髪のショートボブ、眼鏡の地味な女の子。特別目立つこともなく学校生活を送っていたが、阿部貴斗との出会いによって環境がガラリと変わっていく。そして碧はある事を貴斗に隠していて...
※誤字、脱字等など見落とし部分、読み難い点申し訳ございません。気づき次第修正させていただきます。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる