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第一章
アリスの憂鬱
しおりを挟む「何だか、気味が悪い…」
うじ虫になる時間も過ぎて、辺りが夜に染まった頃。異様に静かな周りが不気味に感じ、一度家族の所に戻ろうかと、立ち上がった時だった。
後ろで誰かの気配がして、ハッと振り返る。
おかしい、こんなのおかしい。
何故ならこの気配を感じる前、辺りで足音一つしなかったのだ。
それなのに何故、今私の後ろに人が立っているのかが不思議でしょうがない。
否、不気味と言った方が良いだろうか。
暗くてよく顔が見えない相手を捉えようと目を凝らす。
この暗い中、辛うじて分かるのは相手が高身長だという事だ。
つまり、なかなかタッパのある男である事は間違いない。
「…誰、ですか。」
この沈黙を破るのもかなりの勇気が必要で、胸に手を当て理性を保ちながら、私の後ろに立っていた男に声を掛ける。
「…」
「…あの、私に何か用ですか、」
ゆらりと動いた影。それを逃さずに目を見張り、伸ばされた腕を回避する。俊敏な動きを出来た自分の身体に感謝をする。
今、完全に捕まる所だった。
タラリと首の後ろに汗が流れ、焦りが募る。
男の方も何も答えない割に、身体の動きはあるようで。
このみすぼらしい姿の女に何の用で手を伸ばそうとしたのかを聞きたいというのに、声も出さないとは…。
「お前は、誰だ?」
「え?」
「お前こそ、誰なんだ。」
そう思った直後、私に向かってテノールの声が発せられたのだった。
相手も私を不思議に思うような発言に首を傾げると、ゆらりとまた影が蠢く。
その様子にゾッとして。また伸ばされた手を回避しようとした刹那。
「うっ…ぐ、」
「…連れて行け」
「かしこまりました、」
あっという間に背後を取られ、二人がかりで羽交い締めにされた後、首の後ろをトンと叩かれた。
これにより意識を失った私の運命を、桃月アリスの憂鬱として綴らせてもらう。
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