愛の籠ー羽根を失った小鳥ー

月森 蓮見

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第一章

平凡な暮らし

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それは、とても些細な事から始まった。





「…緋鞠ひまり!どうしたの?」




高校の帰りにポストを開いてフリーズしていた私の肩をお母さんがトントンと叩く。

ハッとして手に持ったそれを鞄の中に隠し、首を横に振って「ううん」と返事をした。

そう、とお母さんが呟き、家の中へと入っていく。



「…ただいまーーっ、」

「ちょっと、緋鞠!?手洗いうがいしなさい!」

「ごめんっ、ちょっと無理!」

「…もう、」




私もそれに続くように栗田くりたという表札がある一軒家の中に足を踏み入れ、階段を登った先にある部屋に飛び込んだ。

階段下からお母さんの声が聞こえたけれど、正直気にしていられなかった。

校則を何一つ破らずに着こなしている制服が皺になっていたとしても気にせず、私は恐る恐る鞄の中にあったものを取り出す。





「……やっぱり、私宛だ、」




それは一通の手紙だった。

表と裏を交互に再確認し、部屋の中でポツリと呟いた。これが今日、下のポストに入っていたのだ。

普通の手紙なら、ここまで驚くことはないのだけれど…。

内容が、そうとは言えず。

何度も手紙を確認するけれど、住所や相手の名前が一切綴られていない。

きっと相手は郵便に出したわけではないのだろう。

自ら私の家の所に出向いて来たとしか考えられない。



栗田 緋鞠様、と綺麗な字で書かれた自分の名前にゾクリとする。

栗田 緋鞠。それが私の名前で、まだ17歳の高校生である。

至って普通の都立高校に通っていて、真面目な生徒として過ごしている私に、差し出し人不明の手紙が届くなんて考えられない。

ストーカーか、何かだろうか、と。嫌な方向に考えてしまう。




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