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第1章
帰宅
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「ただいま」
家に帰りリビングの扉を開ける。
「おかえり」
「あれ?大地だけ?サクマは?」
部屋には大地の姿だけあった。
「さぁ?今日は見ていないな」
「ふーん」
気配も感じないし多分ルクスのお偉いさんにでも呼ばれているのだろう。そんなことよりも
「今日はカレーだね」
「正解」
部屋中にカレーの匂いが漂う。私の好きなご飯ベスト3に入る料理だ。ちなみに1番はハンバーグ。
「学校はどうだった?」
「ふっふっふっ!見て見て!」
鞄から下駄箱に入っていたラブレターを取り出し大地に見せつける。
「何それ?果たし状?」
「ラブレターだよ!」
「転入初日で?」
「そっ。モテモテでしょ?」
「見る目ない男しかいないんだな」
「何か言った?」
「いや、何でもない」
睨まれた事に気が付いたのか大地は目線を外し、鍋に目線を移した。
「ヤキモチ焼いた?」
「誰が焼くかよ……」
全く。素直じゃないんだから。
「大地も一緒に学校通えたら良いのにね」
「遠慮しとく。良い思い出が無い気がするし」
私は大地の全てを知っている訳ではない。ただ大地がまだ人間で学生をしていた頃なら少しだけ知っている。私が見た限りだと大地の「良い思い出がない」と言ったのは合っている。『一匹狼』その単語がばっちり当て嵌る程大地は常に1人だったし荒れていた。近付くモノ全てが敵。そんな態度だった。実際私も睨まれたし話も聞いてくれなかった。まぁ、家庭環境が悪かったのもあるだろうけれども。
大地と初めて会った時私は彼に『ゲーム』を仕掛けた。文字通り命を賭けたゲーム。それに大地は負け私の手によって殺された。
大地の魂が完全に復活すると記憶も戻すとサクマは言った。それは大地にとって良い事なのだろうか。私には判断出来ない。ただ…あの頃の大地を見るのは辛い。
「少しだけ優しい世界になりますように……か」
「何だそれ?」
「何でもないよ。それよりカレー出来た?」
「出来たよ。どうする?先食べるか?」
「ううん。サクマを待つよ」
どうせなら3人揃って食べたいし。
「了解。んじゃ先風呂入ったら?」
「一緒に?」
「断る」
「えー。たまには一緒が良い」
「俺は1人でのんびりゆっくり入るタイプだ」
「ケチ」
「はいはい。さっさと入って来い」
「あっ分かった!恥ずかしいんだね!」
「……偶に思うが少しくらい羞恥心を持て」
「はーい」
脱ぎ掛けていた服を直され脱衣所で脱ぐ羽目になった。
サクマがリビングに現れカレーにありつけたのはそれから2時間後の事だった。
コンコンとノックし返事を待たず部屋に入る。
「せめて返事を待ってから入って来て欲しいのですが」
「ん?何か見られたら困る物でもあるの?」
部屋の主、サクマに話しかけながらベッドに座る。そういやサクマって寝るのかな。寝たとこ見たことないや。
「学校はどうでしたか?」
「楽しいよ。成美と陽奈もいるし」
ずっと2人の話を聞いていて楽しそうだと思ったけど実際通ってみると疲れる事も多かった。それでも久しぶりに知らない人と話しをしたり学校内での2人を見られたりしたのは楽しかった。
「それで今日は何処に行っていたの?」
「互いにあまり干渉しないのでは?」
「同居人が1日居なかった。それも私が学校に行くタイミングを見計らって。気になるじゃない?」
「偶然ですよ」
「この世に偶然なんてない。あるのは必然だけ。って言っていたの誰だっけ?」
笑顔で話す私を見て苦笑いを見せながら
「ルクスに呼ばれただけですよ」
サクマはそう言った。
「大丈夫なの?」
「ええ」
嘘だ。本来なら誰の記憶にも残らないはずの存在である大地に生きるという選択を与え、本来なら敵対するだけの関係である私に新しい選択を与えた。ルクスが良い様に思っているはずがない。それなのにサクマは大丈夫と答えた。
「ねぇサクマ」
「何でしょうか?」
「サクマにはどんな未来が視えているの?」
私には視えない未来。遠いのか近いのかも分からない。それが確定しているのか未確定なのかさえ。
「仮に確定している未来が視えているとします。その事を貴女に話すと思いますか?」
「話さないでしょうね」
「そういう事ですよ」
ホント…。肝心な所は隠すのだから。だからかも知れないけどサクマを見ていると不安に思う事がある。私の全てを見透かされている様に感じるのにサクマという存在を何1つ掴めない。
「まぁいいや。明日も学校だから寝るね」
「はい。おやすみなさい」
「私だって少しくらいサクマの仕事手伝えるから…困った事があったら教えてよね…おやすみ」
返事を待たず部屋から出る。多分今の私にサクマは頼らないだろう。それでも…それでもいつか頼られる存在になりたい。心からそう思える。
家に帰りリビングの扉を開ける。
「おかえり」
「あれ?大地だけ?サクマは?」
部屋には大地の姿だけあった。
「さぁ?今日は見ていないな」
「ふーん」
気配も感じないし多分ルクスのお偉いさんにでも呼ばれているのだろう。そんなことよりも
「今日はカレーだね」
「正解」
部屋中にカレーの匂いが漂う。私の好きなご飯ベスト3に入る料理だ。ちなみに1番はハンバーグ。
「学校はどうだった?」
「ふっふっふっ!見て見て!」
鞄から下駄箱に入っていたラブレターを取り出し大地に見せつける。
「何それ?果たし状?」
「ラブレターだよ!」
「転入初日で?」
「そっ。モテモテでしょ?」
「見る目ない男しかいないんだな」
「何か言った?」
「いや、何でもない」
睨まれた事に気が付いたのか大地は目線を外し、鍋に目線を移した。
「ヤキモチ焼いた?」
「誰が焼くかよ……」
全く。素直じゃないんだから。
「大地も一緒に学校通えたら良いのにね」
「遠慮しとく。良い思い出が無い気がするし」
私は大地の全てを知っている訳ではない。ただ大地がまだ人間で学生をしていた頃なら少しだけ知っている。私が見た限りだと大地の「良い思い出がない」と言ったのは合っている。『一匹狼』その単語がばっちり当て嵌る程大地は常に1人だったし荒れていた。近付くモノ全てが敵。そんな態度だった。実際私も睨まれたし話も聞いてくれなかった。まぁ、家庭環境が悪かったのもあるだろうけれども。
大地と初めて会った時私は彼に『ゲーム』を仕掛けた。文字通り命を賭けたゲーム。それに大地は負け私の手によって殺された。
大地の魂が完全に復活すると記憶も戻すとサクマは言った。それは大地にとって良い事なのだろうか。私には判断出来ない。ただ…あの頃の大地を見るのは辛い。
「少しだけ優しい世界になりますように……か」
「何だそれ?」
「何でもないよ。それよりカレー出来た?」
「出来たよ。どうする?先食べるか?」
「ううん。サクマを待つよ」
どうせなら3人揃って食べたいし。
「了解。んじゃ先風呂入ったら?」
「一緒に?」
「断る」
「えー。たまには一緒が良い」
「俺は1人でのんびりゆっくり入るタイプだ」
「ケチ」
「はいはい。さっさと入って来い」
「あっ分かった!恥ずかしいんだね!」
「……偶に思うが少しくらい羞恥心を持て」
「はーい」
脱ぎ掛けていた服を直され脱衣所で脱ぐ羽目になった。
サクマがリビングに現れカレーにありつけたのはそれから2時間後の事だった。
コンコンとノックし返事を待たず部屋に入る。
「せめて返事を待ってから入って来て欲しいのですが」
「ん?何か見られたら困る物でもあるの?」
部屋の主、サクマに話しかけながらベッドに座る。そういやサクマって寝るのかな。寝たとこ見たことないや。
「学校はどうでしたか?」
「楽しいよ。成美と陽奈もいるし」
ずっと2人の話を聞いていて楽しそうだと思ったけど実際通ってみると疲れる事も多かった。それでも久しぶりに知らない人と話しをしたり学校内での2人を見られたりしたのは楽しかった。
「それで今日は何処に行っていたの?」
「互いにあまり干渉しないのでは?」
「同居人が1日居なかった。それも私が学校に行くタイミングを見計らって。気になるじゃない?」
「偶然ですよ」
「この世に偶然なんてない。あるのは必然だけ。って言っていたの誰だっけ?」
笑顔で話す私を見て苦笑いを見せながら
「ルクスに呼ばれただけですよ」
サクマはそう言った。
「大丈夫なの?」
「ええ」
嘘だ。本来なら誰の記憶にも残らないはずの存在である大地に生きるという選択を与え、本来なら敵対するだけの関係である私に新しい選択を与えた。ルクスが良い様に思っているはずがない。それなのにサクマは大丈夫と答えた。
「ねぇサクマ」
「何でしょうか?」
「サクマにはどんな未来が視えているの?」
私には視えない未来。遠いのか近いのかも分からない。それが確定しているのか未確定なのかさえ。
「仮に確定している未来が視えているとします。その事を貴女に話すと思いますか?」
「話さないでしょうね」
「そういう事ですよ」
ホント…。肝心な所は隠すのだから。だからかも知れないけどサクマを見ていると不安に思う事がある。私の全てを見透かされている様に感じるのにサクマという存在を何1つ掴めない。
「まぁいいや。明日も学校だから寝るね」
「はい。おやすみなさい」
「私だって少しくらいサクマの仕事手伝えるから…困った事があったら教えてよね…おやすみ」
返事を待たず部屋から出る。多分今の私にサクマは頼らないだろう。それでも…それでもいつか頼られる存在になりたい。心からそう思える。
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