魂を紡ぐもの

にゃら

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第1章

隠し事

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 昼休み。大地が作ってくれたお弁当を楽しみに待っていた私なのだが…。
「はぁ…。ちょっと行って来るね」
「私達も一緒に行こうか?」
「大丈夫。先食べていて」
「それはシズクに悪いから途中まで一緒に行くよ」
 それならと思い2人に付いて来てもらう。
 場所は中庭。理由は昨日のラブレター。
 念の為と思い手紙は全て読んだ。読んだら4人が今日の昼休み中庭に来て欲しいと書いてあった。
「あんたそういう所律儀よね」
 陽奈の言うことはごもっともだと思う。どうせ誰とも付き合うつもりもないのだからわざわざ行かなくても良いと思う。思うのだけれども…。
「相手に悪いからね」
 もしかしたら私の獲物になる人間がいるかもしれない。もしくは同業者が紛れ込んでいる可能性だって捨てきれない。
「じゃ、私達ここで待っているね」
 そう言って中庭が見える自販機へ2人は向かった。さて私も行きますか。
 中庭には男4人が綺麗に横並びで待っていた。
「ごめんなさい。遅くなって」
 少しだけ小走りに変え笑顔を見せながら近付く。
「だ、大丈夫です!」
「い、今、来た所」
 うーん。改めてじっと視るが私の獲物にはならないなぁ。それよりも全く名前を思い出せない。多分ラブレターに書いてあったと思うのだけどなぁ。あぁ、面倒くさいから左から1、2、3、4で良いや。
「そ、それで」
「手紙の返事なのですが…」
 1と3が話しかけてくる。2と4は緊張しているのかさっきから何も話さない。多分だけどこういう事に慣れてないのだろう。顔強張っているし。
「嬉しかったよ。ありがとう」
「そ、それじゃあ!」
「でもごめんなさい」
 頭をペコリと下げる。自分でしておいて何だがここまでする必要あるかな。お腹空いたから早くお弁当食べたい。
「それじゃ私はこれで」
「待って!」
「どうしても駄目ですか?」
 私は精一杯の笑顔で
「童貞に興味ないから」
 そうはっきり告げた。うん。この断り方で良いだろう。さて2人が待っている自販機まで向かいますか。
「どうだった?」
 2人に合流した私に成美が話しかけてくる。
「全然駄目。童貞しかいなかった」
「あんたまさかそんな風に断ってないでしょうね?」
「え?駄目だった?」
「可哀そう!」
 そんな会話をしながら教室に戻った。
「お昼ご飯だよ~」
 大地が作ってくれたお弁当。蓋を取り、中を覗く。
「へぇ」
「美味しそう!」
 2段重ねになっているお弁当の2番目にはおにぎりが2個。1段目には色鮮やかな野菜炒めとこれまた色鮮やかなサラダが入っていた。入っていたのだが…。
「お、お肉が無い!」
 絶対わざとだ。私の野菜嫌いを知っていてこのお弁当を作ったのだ。
「お肉食べたいよ~」
「私のハンバーグ。少しあげようか?」
「ホント!?」
「冷凍のだけどね。その代わり少し野菜炒め貰うね」
 陽奈が神様に見えてきた。実際に会った事ないからいるのか知らないけど。今の私には陽奈が神様だ。
「私も交換する!」
 そうやって交換されたお弁当にハンバーグと春巻が追加されより豪華な物になった。ちなみに野菜炒めは
「凄っ。お弁当なのに野菜が新鮮」
「美味しい!」
 と好評だった。大地が作るご飯が美味しいのはどうやら私の勘違いではなさそうだ。
 お昼ご飯を食べ終えまだお昼休みの時間があるのを確認し
「ねぇ成美」
「ん?何?」
 成美に話しかける。多分今日聞くタイミングがあるとしたらここだろうと思い話を続ける。
「陽奈が知っていて私の知らない成美の秘密って何?」
 こういう時私は直球で聞く事しか知らない。変に遠回しに聞くと話が脱線してしまうから。って言うのもあるけれども。
「え?えっと…そういえばお弁当シズクが作ったの?」
「違うよ。大地の手作り」
「大地?あぁ!シズクの所に来た山海くんか!」
「そうだよ。でっ?秘密って何?」
「つ、次の授業何だっけ?」
「体育っていう授業だよ」
「楽しみだね」
「そうだね。でっ?秘密って何?」
 そんなに話し難い事なのだろうか。だったらこれ以上聞かない方が良いのかも知れない。誰だって秘密くらいある。もちろん私にだって。
「はぁ……シズクは直球過ぎ。成美も諦めな。シズクだったら話しても大丈夫だって」
 珍しく私を擁護してくれる。
「それは分かっているけど…。改めて話すのが少し恥ずかしくって」
「私から話そうか?」
「ううん。大丈夫」
 息を大きく吸い吐き出す。
「何回か私の家来た事あるよね。その時私のパパとママに会ったと思うけど何か思わなかった?」
 成美のお父さんとお母さんか。確かに会った事あるけれども。
「特に何も思わなかったよ。強いて言うなら優しそうって感じかな」
 しっかり視た訳ではないけれども私の獲物にはまずならないだろうと思えるぐらい綺麗な人間だった。
「シズクから見たらそうかもね。でもね人間から見たらあまりにも年が離れ過ぎているんだよ。祖父母と孫ぐらい」
 確かに人間は年を気にする生き物だ。私なんてもう何歳か覚えていないのに。そういえば成美のお母さんに初めて会った時年の話したっけ。
「まぁ、何でそれだけ年が離れているかってなるんだよ。答えは簡単だけどね」
 再び息を大きく吸い
「私が養子だから」
 そうはっきりと言った。
「養子?」
「うん。本当のパパやママじゃないの。小学生の時教えられてね。私はそれでもパパやママが大好きだった。それは今でも変わらない。でもね…周りは違ったの。参観日や面談とか来てくれたのだけどそれでバカにされてね。まぁ私の性格も昔からこんなのだったからそれもふまえて虐められていたんだ」
「その虐めた子を殺せば良いんだね。任せて」
「そ、それは間に合って…いる…かな?」
「そう。残念」
「あははっ。大丈夫だよ。今は何も思っていないし。逆に自慢出来るパパとママだから」
「そっか」
 さっきから私頷いているだけだな。これで良いのだろうか。
「それに小学生の時は陽奈が助けてくれたし」
「…!ちょっと!それ言わない約束!」
「あれれ?そんな約束したっけ?」
「全く…」
 何て答えるのが正解なのだろうかと迷っていると昼休みの終わりを告げるチャイムがタイミング良く鳴り響いた。まだまだ勉強不足だな私も。
「あ、次体育だっけ?」
「着替えに行こうか」
 確か体操服っていうのに着替えるんだっけ。
「はいはい。更衣室で着替えようね」
 服を脱ぎかけていた私に陽奈から注意が入る。そっか。ここで着替えたら駄目なのか。
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