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第1章
バイト先
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私の肩を抱く成美の手は暖かく柔らかかった。私はクスッと笑い
「陽奈がバイトの度行っているよね」
「だって心配なんだもん!」
「いっそ同じ時間にバイトしたら?」
「それナイスアイディアだよ!…あっ!でもパパ説得出来るかな」
「溺愛されているもんね」
「まぁ…嬉しい話だけどね」
私は今朝陽奈と話した内容を思い出す。『あんたとは違う意味で心配している』と陽奈は言った。そして成美は今陽奈が心配と言った。互いが互いに心配し合う仲に私が居ても良いのだろうか。私と2人とでは流れる時間が違う。いずれ遠くない将来私は2人を失う。それは仕方ない事なのにそれを怖がっている私が居る。
「シズク?」
「え?何?」
「怖い顔してどうしたの?」
成美の言うことは正しかった。いつの間にか陽奈のバイト先に着いていてガラスに写る私は確かに怖い顔になっていた。
「なんでもない。って言ったら?」
「嘘。って答えるだけだよ」
やっぱり嘘や隠し事が通じないや。
「2人と居られる時間を大切にしたいな。って思っただけ」
だから私は素直に思った事を話す。
カランコロンと音を立てながらカフェに入る。
「いらっ……げっ!」
「げっ!って何よげっ!って」
既に学校の制服からバイトの制服に着替え終えバイト中の陽奈が接客してくれる。学校の制服と違ってフリルが沢山付いている。陽奈の可愛さをアピールするにはもってこいだと思う。
「ああ。神埼さんにシズクさん。いらっしゃい」
「マスターこんばんは!」
白髪交じりで少し太っている男の人に成美が話しかける。マスター。その意味通りこのカフェの店長。名前は知らない。マスターはマスターだから。
「あんた達ねぇ…私がバイトの度来るのいい加減に止めない?」
「えー。良いじゃない別に」
「全く…コーヒー2つで良い?」
「お願いしまーす」
おちゃらけた態度で返事をし
「ねぇマスター。バイト募集していない?」
そう走ってマスターの許へ行く。うん。やっぱり成美はそうじゃなくっちゃね。
「募集はしているけど露木さんとは別の曜日や時間になるよ」
「えー!それじゃあ意味なーい!」
大げさに倒れ込む成美は私の知っている成美だ。でも当たり前だが私の知らない成美や陽奈もいるだろう。もしそれが『悪の記憶のカケラ』だったら…。わたしはどうするのだろうか。2人の魂は純粋で綺麗だ。昔の私なら触る事すら出来ないくらい。だから私は不安になる。純粋なモノ程穢れ易いと言う事を知っているから。私はどう動くのが正しいのだろうか。
「シーズークー!」
私の口角を無理矢理上げてくる。
「な、何?」
「また怖い顔している」
「あっ!ゴ、ゴメン」
「また考え事?」
「2人ともっと一緒に居たいだけだよ」
成美は何度も頷く。
「確かにシズクと違って私達は死ぬのが早いよね」
「そうだね」
私が瞬きしているくらい一瞬に。
「私もね最近どうやったら長い時間一緒に居られるのだろう。って考えていてね。でね!画期的な方法を思いついたの!」
「何?」
「私達がシズクと同じ存在になれば良いんだって!」
そう無邪気な笑顔で言った。そう笑う成美には一切の害は無くただ純粋に私と長く居たいという気持ち。いつもそうやって私の悩みに対して私では思いつかない言葉を投げてくる。よく会話はキャッチボールに例えられる。成美の場合ストレートを投げて来たと思ったらそれがカーブだったりこっちが受ける準備が出来ていない時に投げて来たりする。それが人間として正しいかなんて私には分からない。分からないがはっきり1つ言える事がある。それが成美という存在。だから私には美しくカッコ良く見える。だから今の私に出来るのは
「出来るの~?成美に?」
こうやって笑いながらからかうのがベストだろう。
「成美さんはやれば出来る子なのです!」
エヘンと言いながら胸を張る。
「じゃあそうなったら私が全部教えてあ・げ・る」
「先輩!手つきがいやらしいです!」
「ふっふっふ。まずは身体に…いたっ!」
何かで頭を叩かれる。叩かれた方を見ると既に着替え終えた陽奈がお盆を持って立っていた。どうやら私の頭を叩いたのはそのお盆だろう。
「あんた達コーヒー1杯で何時間居座るつもり?」
時計を見ると陽奈のバイトの終わり時間である午後8時を超えていた。
「お疲れ様陽奈」
「よーし!帰ろう!マスターまたね!」
「全く…マスターお先に失礼します」
「気を付けて帰るんだよ」
「はーい!」
元気良く真っ先に返事した成美はそのままの勢いで出入り口の扉を開け
「どうぞお嬢様」
そう言いながら頭を下げる。
「何それ?」
「うーん。執事かな」
「せめて性別合わせてメイドでしょ…」
「お帰りなさいませ。ご主人様。みたいな」
「どっちにしろあんたには向いていないからね」
「ええっ!」
そんな会話をしながら2人と別れ家路に着いた。
余談になるけれどもこの日を境にラブレターとか告白される時に体験人数を言われる様になってしまった。やっぱり断り方に問題があったのだろう。
「陽奈がバイトの度行っているよね」
「だって心配なんだもん!」
「いっそ同じ時間にバイトしたら?」
「それナイスアイディアだよ!…あっ!でもパパ説得出来るかな」
「溺愛されているもんね」
「まぁ…嬉しい話だけどね」
私は今朝陽奈と話した内容を思い出す。『あんたとは違う意味で心配している』と陽奈は言った。そして成美は今陽奈が心配と言った。互いが互いに心配し合う仲に私が居ても良いのだろうか。私と2人とでは流れる時間が違う。いずれ遠くない将来私は2人を失う。それは仕方ない事なのにそれを怖がっている私が居る。
「シズク?」
「え?何?」
「怖い顔してどうしたの?」
成美の言うことは正しかった。いつの間にか陽奈のバイト先に着いていてガラスに写る私は確かに怖い顔になっていた。
「なんでもない。って言ったら?」
「嘘。って答えるだけだよ」
やっぱり嘘や隠し事が通じないや。
「2人と居られる時間を大切にしたいな。って思っただけ」
だから私は素直に思った事を話す。
カランコロンと音を立てながらカフェに入る。
「いらっ……げっ!」
「げっ!って何よげっ!って」
既に学校の制服からバイトの制服に着替え終えバイト中の陽奈が接客してくれる。学校の制服と違ってフリルが沢山付いている。陽奈の可愛さをアピールするにはもってこいだと思う。
「ああ。神埼さんにシズクさん。いらっしゃい」
「マスターこんばんは!」
白髪交じりで少し太っている男の人に成美が話しかける。マスター。その意味通りこのカフェの店長。名前は知らない。マスターはマスターだから。
「あんた達ねぇ…私がバイトの度来るのいい加減に止めない?」
「えー。良いじゃない別に」
「全く…コーヒー2つで良い?」
「お願いしまーす」
おちゃらけた態度で返事をし
「ねぇマスター。バイト募集していない?」
そう走ってマスターの許へ行く。うん。やっぱり成美はそうじゃなくっちゃね。
「募集はしているけど露木さんとは別の曜日や時間になるよ」
「えー!それじゃあ意味なーい!」
大げさに倒れ込む成美は私の知っている成美だ。でも当たり前だが私の知らない成美や陽奈もいるだろう。もしそれが『悪の記憶のカケラ』だったら…。わたしはどうするのだろうか。2人の魂は純粋で綺麗だ。昔の私なら触る事すら出来ないくらい。だから私は不安になる。純粋なモノ程穢れ易いと言う事を知っているから。私はどう動くのが正しいのだろうか。
「シーズークー!」
私の口角を無理矢理上げてくる。
「な、何?」
「また怖い顔している」
「あっ!ゴ、ゴメン」
「また考え事?」
「2人ともっと一緒に居たいだけだよ」
成美は何度も頷く。
「確かにシズクと違って私達は死ぬのが早いよね」
「そうだね」
私が瞬きしているくらい一瞬に。
「私もね最近どうやったら長い時間一緒に居られるのだろう。って考えていてね。でね!画期的な方法を思いついたの!」
「何?」
「私達がシズクと同じ存在になれば良いんだって!」
そう無邪気な笑顔で言った。そう笑う成美には一切の害は無くただ純粋に私と長く居たいという気持ち。いつもそうやって私の悩みに対して私では思いつかない言葉を投げてくる。よく会話はキャッチボールに例えられる。成美の場合ストレートを投げて来たと思ったらそれがカーブだったりこっちが受ける準備が出来ていない時に投げて来たりする。それが人間として正しいかなんて私には分からない。分からないがはっきり1つ言える事がある。それが成美という存在。だから私には美しくカッコ良く見える。だから今の私に出来るのは
「出来るの~?成美に?」
こうやって笑いながらからかうのがベストだろう。
「成美さんはやれば出来る子なのです!」
エヘンと言いながら胸を張る。
「じゃあそうなったら私が全部教えてあ・げ・る」
「先輩!手つきがいやらしいです!」
「ふっふっふ。まずは身体に…いたっ!」
何かで頭を叩かれる。叩かれた方を見ると既に着替え終えた陽奈がお盆を持って立っていた。どうやら私の頭を叩いたのはそのお盆だろう。
「あんた達コーヒー1杯で何時間居座るつもり?」
時計を見ると陽奈のバイトの終わり時間である午後8時を超えていた。
「お疲れ様陽奈」
「よーし!帰ろう!マスターまたね!」
「全く…マスターお先に失礼します」
「気を付けて帰るんだよ」
「はーい!」
元気良く真っ先に返事した成美はそのままの勢いで出入り口の扉を開け
「どうぞお嬢様」
そう言いながら頭を下げる。
「何それ?」
「うーん。執事かな」
「せめて性別合わせてメイドでしょ…」
「お帰りなさいませ。ご主人様。みたいな」
「どっちにしろあんたには向いていないからね」
「ええっ!」
そんな会話をしながら2人と別れ家路に着いた。
余談になるけれどもこの日を境にラブレターとか告白される時に体験人数を言われる様になってしまった。やっぱり断り方に問題があったのだろう。
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