魂を紡ぐもの

第4章

桜井加奈のもとへ

「な…なんであんたがいるの！」
「いたら悪い？」
　ニコリと笑う。
「なんで…死んだんじゃ」
「え？私死んだの？」
「階段から突き落としたのに…」
「へぇ、そうなんだ。でも残念ね。生きているわ。現実では」
　どうやらこの世界での私は桜井加奈に殺されたみたいだ。
「大地を取り返そうとしたって無駄だから。大地あんたの事最悪な人間って言っていた！私は最高だって！」
　人間じゃないんだけど。
　この世界の私は大地と何かしらの関係を持っていて桜井加奈によって殺されたようだ。にしても色々忘れすぎな気がする。大地の説明不足かも知れないけど。
「ここはね夢と現実の狭間。貴女はその世界にいるの」
「何よそれ。そんなの信じると思う？」
「これは？」
　１枚の紙を見せる。
「なんであんたが持っているの⁉」
「捨てていたから」
　その紙は住所と連絡先が書かれた紙。最初に渡した案内状だ。
「返してよ！」
「良いよ…ただ良く考えてね」
「何を？」
「さぁ」
　わざとじらし怒りを誘う。別に先ほどの苛立ちをぶつけているわけではない。最大限怒りの感情を出させないと来た意味がない。
「ちゃんと答えなさいよ！」
「この紙に触れると現実の世界の事を思い出す。それは貴女にとって良いのか悪いのか…よく考えなさい」
「何よそれ！どうせ大地のが欲しいだけでしょ！あんた何も貰えなかったんでしょ！」
「確かに何も貰ってないわね」
　嘘ではない。実際プレゼントは貰った事はない。
「だから嫉妬してそんな事したのね」
「いや違うけど」
「はやく返して！」
「だから」
　よく考えてから触りなと忠告する間も無く手に持っていた案内状を奪われた。
　刹那辺りに光が溢れる。
　あぁ。知らないっと。

　手紙を奪った瞬間光に包まれた。そして全てを思い出した。そうだ。ここは夢の中で実際の私は眠っている。
「記憶を戻したってことは終わったの？」
「まだ。あと１週間残っている」
「じゃあなんで」
「確認」
「確認？」
　何を確認する必要があるのだろうか。
「貴女がどうやって殺したのか」
「だ、誰を」
「説明いる？」
　動揺を隠せない。
「殺してなんか…」
「私を殺したのに」
「ちがっ」
　そうだ。あれは事故。
「まぁ良いわ。それじゃあね」
「ちょっと待ってよ！」
「なに？」
「帰らせてよ！」
「それはまだ出来ないわ。まだ貴女は罪を確認出来ていない」
「罪？」
「それは貴女が理解する事。私からは何も言えない」
「そんな…」
「でもそうねただ１週間過ごしてもらうだけじゃつまらないでしょ？『ゲーム』でもしましょうか」
「ゲーム？」
「そう簡単な『ゲーム』。内容は１週間生きて罪を見つけたら貴女の勝ち」
「見つけられなかったら？」
「その時は貴女の負け。死んでもらう」
　クスクスと笑うシズク。
「誰がそんなゲーム受けると思ってんの？拒否するわ」
　クスクスと笑う声は次第に大きくなり
「ねぇ桜井加奈。貴女ってバカ？」
　そう喧嘩を売ってきた。
「誰がバカよ！バカなのはあんたでしょ！誰がそんなゲームをするか！」
「貴女の現実での身体はどこにあるかしら？」
「……っ！」
「気付いた？」
　私が現実で眠っている場所は大地が居る病院だ。そこに居るのは大地だけでなくこの女も居る。
「貴女を殺そうと思えば何時でも殺せるのよ」
　私は私自身が人質になっている事に気付いてしまった。
「『ゲーム』するわよね？」
　気付いてしまったからこそこの『ゲーム』を受ける選択しか出来ないって事に。
「上等よ。受けて立つわ」
　１週間生きて罪に気付けば良いだけの事だ。死ぬ事はまずないだろう。罪だってある程度目星が付いている。
「そうそう。貴女が勝った時１つだけ願い叶えてあげる」
「願い？」
「そう。なんでも良いわ。不老不死にだって出来る」
　私の願い。
「あんたが２度と私の前に現れない事！」
　頭に過った言葉をそのまま口にする。もう少しじっくり考えても良かったかも知れないが多分今の私の中で１番の願いはこれだろう。
「面白い願いね。良いわそれで。契約成立」
　クスクスと笑い
「それじゃあね。頑張って生きて」
　シズクが消えた。