感情を求めて

はるま

文字の大きさ
8 / 9
一つ目の感情

俺だけに見えるもの

しおりを挟む
静寂の中、アニメででるようなお腹の音が鳴った。さっきからアニメアニメで例えてるのは俺がアニメヲタクだからだ。生まれながらのアニメヲタクだったのかもしれない。ラブコメも戦闘系もみてた。感情が無いのに体もヲタクだからかアニメだけは何時でも見たいと本能的に感じる。
「てか腹減ったな、何か食べたくなってきた。腹が減っては戦ができぬ」って言っても戦わないがね。
俺の手はナースコールに伸びていた。
危ない危ない。なんでもかんでも押してはいけない。今のは手が悪い。叱るなら手を叱ってくれ。
と独り言を心の中で言っていた。
病室のドアが開いた。
「陽真ちゃん!お菓子とか果物とか持ってきちゃいました!」
と、心は青緑だ。緑の方が少し多い。笑っているようで少し悲しい表情の水無豆がまたお見舞い来てくれた。当然だが弥生はいない。「あれ?入院中は食べていいんでしたっけ?聞いてきます!です!」
走って行ってしまった。五分後くらいに戻ってきて息切れしていた。
「疲れましたぁ。私体力皆無なのにエレベーター目の前で行っちゃって三階の陽真ちゃんの部屋まで走ってきたんですよ」
水無豆は可愛らしい手提げバッグからカットされた林檎と店に売っている綺麗な綺麗なチョコレートを持ってきた。林檎をフォークで刺し僕の口の前に持ってきた。
「陽真ちゃん、アーンです!」
林檎は冷たく、甘かった。
「どうです?美味しいですか?」
「あぁ、甘いよ。どこで貰ったの?」
「え、えーっと……そ、そう!買ったんだよ!」
う、うーん。明らかに嘘をついている。星美さんは昔から嘘がとても下手で、嘘ついたり気分が上昇してると丁寧語を使わなくなる。これは
「本当?」
「う、うん!本当だよ!」
「まあ、でもありがとう。林檎美味しかったよ」
そう言うと水無豆はにっこりした顔をして笑った。心のもやは緑だった。
「あ、チョコもあげます!美味しいですか?」
小さなチョコは口に入れた途端すぐとけた。
「めっちゃ美味しいよ。高かったでしょ?」
水無豆はますますにっこりしていた。
「え!お店のに見える!?」
「え?お店で買ったんじゃないの?」
「作ったんです!上手に出来たんですよ!」
不意に学校のことを聞きたくなった。高校にはいる前は学校に行くのを楽しみにしてたのを覚えてるが今は行っても行かなくてもいいって感じ。
一応聞いてみるか。
「あ、あのさ学校って今どんな感じ?俺まさかぼっちなるんじゃない?まぁいいけどね」
「心配しないでください!先生がクラスみんなに話してたです。みんな来て欲しいって言ってましたよ!」
「じゃ火曜日から行ってみようかな」
「おおー、やったです!マイルでみんなにグループで言っときますね」
とても慣れた指使いで打っている。
「みんななんか言ってる?」
「女子はイケメン?とかばっかで男子はどんなやつ?とか言ってるよ!」
なんかすみません。イケメンでも面白くもなんともなくて。
マイルとはメールや電話ができるアプリだ。
俺はスマホが壊れてるから多分だけどデータは消えてしまったと思う。
「スマホ壊れちゃったから明日買いに行かないとな。一緒に着いてくれる?」
「いいよ!いこいこー!」
「あぁ、それと弥生はなんか言ってた?」
「あーっと、なんも!なんも話してない!」
「さっきから嘘ついでるでしょ」
「な、なんでわかったんです?」
「そりゃ分かるよ、昔から水無豆の事見てるもん」
すると水無豆の顔がだんだんと赤くなっていた。心は緑なのに顔は真っ赤だ。
「え、えっとぉ……。弥生ちゃんも一緒に来てます」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

処理中です...