いつだって見られている

なごみ

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母の葬儀

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翌日の告別式は午前11時に執り行われた。


アレンジされた葬儀用の花が仏間に飾られ、果物かごも孫一同の名目で供えられると、少しだけ葬儀らしい雰囲気が醸し出された。


葬儀が始まる1時間前に、福岡から兄夫妻が駆けつけた。兄夫婦と会うのは3年ぶりだ。


兄はわたしより2歳年上で今年50才になる。


嫁の由美子は兄よりもひとつ年上で、3年前と比べるとかなり老け込んで見えた。


住職のお経も無事に終わり、最後のお別れとなる。


皆で葬儀屋が用意した菊の花を母の眠る棺の中に納めた。


火葬場に向かう家族の車を手配して、兄とわたしが棺と一緒に葬儀屋の霊柩車に乗り込んだ。



火葬場に到着し、棺が無事に炉の中に納められたのを見て、すべてが終わったと安堵した。


はじめて母を亡くした思いに胸が痛んだ。


これまでずっと苦労して介護をして来たというのに、なぜこんな終わり方をしなければいけなかったのだろう。


自分だけがこんな惨めな役割を強いられ、なんの苦労もしなかった者が、良心の咎めもなく平然と暮らしていけるのだ。


誰に知られてなくても自分だけは知っている。


わたしは殺人犯だということを。


自分はどこにでもいる平凡な普通の主婦だった。


なのにこんな大それた罪を犯してしまったのだ。


このおぞましい記憶と共に生涯を過ごしていかなければならないのだ。


母が最後に叫んだ声が耳から離れない。


" 人殺しー!! “


こんな不幸は記憶は他にないだろう。


遺族の控え室では皆が支給された弁当を食べていたが、そんな気分にもなれず、ひとりロビーの椅子に腰をおろして泣いていた。


高校生の頃、クリスチャンの友人に誘われて、教会に通っていたことがあった。


そこの牧師がこんな説教をしていたのを思い出す。


天では命の書というものが記されていて、人はその仕業によって裁かれるのだと。


忘れ去られていた全ての記憶は回復され、人は自身の記憶によって裁かれるのだと。


わたしに罪があるなら、わたしをこんな目に合わせた家族にも同じだけの罪があるはずだ。


どんな言い訳からも慰めを得ることは出来なかった。


この記憶がある限り、この人生に幸せが訪れることなどもうない。


もう二度と心から笑えることもないであろう。




火葬場に来てすでに3時間もたっただろうか?


焼きあがったとの連絡が入り、指示された場所に向かう。


大腿骨などの大きな骨以外、原型を留めているものは見られなかった。


頭の部分は顎のあたりだけがそのままの形を留めていた。


渡された割り箸を使い、少ない遺族で骨を拾った。


箸で骨を拾いながら妹の宏美がすすり泣いていた。


母は年をとってから生まれたこの妹だけは可愛がって育てた。


宏美はこの両親からはもったいないほど容姿に恵まれて生まれた。


わたしの不器量は母譲りだというのに、なにかと妹と比較され、バカにされた。


そのせいかいつも自信がなく、他人の言いなりになり、いいように利用されてきた人生だったように思う。


だけど今日からはもう自由なのだ。


してしまったことは悔やんでもしかたがない。


今さら、警察へ行って真実を話すことなどありえないのだ。したたかに生きるよりほかないではないか。


開き直ったわたしは、母の骨を拾いながら、そんなことを考えていた。


それにしても、宏美の裏切りは許せない。


母の預金残高は一体どのくらいあるのだろう。


箸では拾えない細かな骨を、係の人がチリトリのようなもので最後に集め骨壷に納めた。


完璧と言ってもいいほどの完全犯罪が終わった。













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